短冊直前!年末年始に押さえたい調剤報酬改定のトピックス5点を総ざらい|タカヒラの薬局動向PICK UP(12)
来年度はいよいよ調剤報酬改定の年を迎えます。関係省庁の各審議会からはさまざまなデータと論点が提示され、方向性と具体的な内容が明らかになりつつあります。具体的にどんな改定になるかを知るのも重要ですが、そこに至る背景まで理解すると、もう一歩先まで見通せる可能性があります。 ということで、KAKEHASHIでは、どこよりもはやく2024年の調剤報酬改定について、1年かけてじっくりと、タイムリーな情報をわかりやすくお届けしています。 |
解説する人:タカヒラ
医療経営士。MRで複数社を経験し、現在はKAKEHASHIでマーケティングを担当。猫と娘と関係省庁が出す資料(PDF)を夜な夜な読み込むのが好き。薬局経営者の方々の意思決定のお手伝いができるよう、日々精進しています。 |
年の瀬も近づき、報酬改定の議論もいよいよ具体的な内容に踏み込んできました。特にこの11月から12月にかけては、医療関係者の方々が注目する内容も少なくありませんでした。そこで今回は個別改定項目、いわゆる「短冊」前にあたるこの年末年始に押さえたいポイントをまとめました。
目次
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- 1.【サマリー】注目したいトピックスは5つ
- 1.1.令和6年度診療報酬改定の基本方針
- 1.1.1.改定の基本的視点
- 2.調剤報酬改定直前、注目したいトピックス5選
- 2.1.調剤基本料の見直し
- 2.2.地域支援体制加算の見直し
- 2.3.リフィル処方箋の活用促進
- 2.4.在宅では「評価」が注目
- 2.5.後発品加算は「金額ベース」への変更の影響に注目
- 3.調剤報酬改定に向けた今後のスケジュール
【サマリー】注目したいトピックスは5つ
これまでの議論を総括すると、注目したいトピックスは下記5つです。
■調剤基本料の見直し
■地域支援体制加算の見直し
■リフィル処方箋の活用促進
■在宅では「評価」が注目
■後発品加算は「金額ベース」への変更の影響に注目
令和6年度診療報酬改定の基本方針
12月11日、改定の方向性の全体像をつかめる「令和6年度診療報酬改定の基本方針」が明らかになりました。
診療報酬改定の基本方針とは「報酬改定の表紙」部分を構成する要素です。この各項目の下に、詳細な改定内容がまとめられます。つまり、この基本方針を踏まえると、点数配分についてのさまざまな議論へのつながりが見えてくると言えます。
ここでは、改定の基本的視点と具体的方向性をまとめます。
改定の基本的視点
(1)現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進【重点課題】
(2)ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
(3)安心・安全で質の高い医療の推進
(4)効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
出典:厚生労働省HP 令和6年度診療報酬改定の基本方針 概要(令和5年12月11日)https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001177224.pdf
まず注目したいのが、毎回改定でも記載されている【重点課題】として、どんな内容がピックアップされているか、です。
今回の【重点課題】では、(1)「現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進」が取り上げられました。これは、人件費の上昇への対応、そして2024年度からスタートする医師の働き方改革を念頭に置いたものと推察されます。
(2)「ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DX を含めた医療機能の分化・強化、連携の推進」については、
- 遠隔医療の推進
- 医療DXの推進
- かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価
がポイントです。
「遠隔医療の推進」については、従来の構想の中心であったへき地だけではなく、都市部における推進も議論されており(※1)、具体的にどこまでの内容となるのか、注目です。
「医療DXの推進」についてはマイナ保険証や電子処方箋、それらの仕組みを活用した「医療機関間や医療機関と薬局・訪問看護ステーション等との連携、医科歯科連携、医療と介護の連携、医療と障害福祉サービスの連携、その他の地域の保健・福祉・教育・行政等の関係機関との連携」という、あらゆる連携強化を進める方針が明記されています。
「かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価」が入っていることから、ポスト2025年を見据え、地域における横のつながりで患者さんを支えていく体制構築が急務であることがうかがえます。
(3)「安心・安全で質の高い医療の推進」では「食材料費、光熱費をはじめとする物価高騰を踏まえた対応」が具体的方向性の例として挙げられています。医療従事者の皆様の中には「ようやく」と感じる方々もおられるかもしれませんが、どの程度の対策が講じられるのか、その内容が注目されます。
さらに(2)に引き続き、かかりつけ薬剤師の評価に関して取り上げられ、「服薬状況等の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導の推進」が明記されている点も注目です。
(4)「効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」では具体的な方向性の例として取り上げられているうち、2点がポイントです。
1点目は「バイオ後続品」の使用促進で、医療費適正化計画の議論も受け、後発品の金額ベースへの転換期を迎えそうです。2点目は「医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進」であり、重複投与、ポリファーマシー、残薬、長期処方、リフィル処方箋といった各論も記載されており、引き続き重要視されるでしょう。
参考:厚生労働省HP 令和6年度診療報酬改定の基本方針(令和5年12月11日) https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001177120.pdf
調剤報酬改定直前、注目したいトピックス5選
ここからは基本方針のポイントを踏まえつつ、薬局薬剤師の方々が気になる各トピックスの中から5つをピックアップし、中医協などの議論を踏まえて解説します。
調剤基本料の見直し
調剤基本料については、調剤基本料の構成、集中率、処方箋受付枚数の分布の変化といったデータの他、様々な切り口での損益率が確認されています。
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
損益率の詳細はここでは取り上げませんが、この議論から読み取れるポイントが2点あります。
(1)医療モールとそれに近い状況の施設に対する考え方が変わる可能性がある
(2)敷地内薬局を有するグループ全体への体制評価の変更という議論が進んでいる
基本料をめぐる議論は、特にこの2点が大きなポイントであると言えそうです。
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
地域支援体制加算の見直し
2022年度(令和4年度)の調剤報酬改定でも見直しがあった地域支援体制加算について、「次はどのような変化があるか」と気になる方々もおられるでしょう。現在、大きく2つの論点が見えてきています。
(1)現在の地域支援体制加算における課題
(2)地域貢献となる項目の見直し
(1)現在の地域支援体制加算における課題
現在の調剤基本料と地域支援体制加算の構造が整理されたイメージは、以下の通りです。
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
実績要件の算定状況をみていくと、地域支援体制加算の1〜4のそれぞれで、各算定状況に違いがあることが確認されています。ここは、財政制度等審議会からの指摘とも重なる部分もあり、何らかの変化が起こる可能性があります。
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
(2)地域貢献となる項目の見直し
ここでは「取扱」「取組」「認定」といったキーワードに着目しましょう。
「禁煙・たばこ販売」、「新型コロナウイルス抗原キットの取扱」、「学校薬剤師の有無」、「緊急避妊薬の取扱」といった内容が「地域への貢献」という角度から議論されており、算定要件への影響を与える可能性があります。
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
また「認定」という観点では、地域支援体制加算と地域連携薬局や健康サポート薬局の状況について、地域支援体制加算を届け出ている薬局では、届け出ていない薬局に比べて、認定・届出状況が高い傾向がある点が確認されています。健康サポート薬局も含めた各要件との比較をし、その整理をしています。
これらの議論を踏まえると、地域支援体制加算と各認定や届出において、整合性や加算要件の見直しが起きる可能性があります。
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
リフィル処方箋の活用促進
リフィル処方箋については3つのポイントを取り上げます。
(1)花粉症対策初期集中対応パッケージ
(2)保険者からの活用促進も視野に
(3)リフィル処方箋の対象となる疾患の具体例について議論
(1)花粉症対策初期集中対応パッケージ
関係閣僚会議が継続的に開かれ、来年の飛散時期を前にまとめられたのが「花粉症対策初期集中対応パッケージ」です。この中でリフィル処方箋の活用などが求められています。調剤報酬改定とはまた異なる動向ではありますが、注目しておきたいところです。
出典:中医協総会 令和5年11月22日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001169810.pdf
(2)保険者からの活用促進も視野に
リフィル処方箋については、保険者からの活用促進も進みそうですが、現時点での内容からは、患者さんの認知向上のための啓発活動が強化される、といったイメージです。
出典:中医協総会 令和5年11月22日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001169810.pdf
(3)リフィル処方箋の対象となる疾患の具体例について議論
リフィル処方箋については、その対象となる疾患の傾向が見えてくる議論が行われています。
- 処方日数31日以上、診療所と病院のそれぞれにおいて、どの年齢層のどの疾患が頻度が高いか
- 診療所においては、疾患としては高血圧性疾患、脂質異常症、糖尿病などが多く、年齢は40歳~90歳が多い
- 病院においては、疾患としては高血圧疾患、糖尿病、消化器系疾患などが多く、年齢は40歳~90歳が多い
今後、これらの疾患について、リフィル処方箋の促進をしやすくするための議論がされるのではないかと予想されます。
出典:中医協総会 令和5年11月22日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001169810.pdf
在宅では「評価」が注目
在宅について重要なポイントを4つ取り上げます。
(1)在宅患者の訪問薬剤管理指導の評価回数
(2)夜間・休日対応時の薬学的管理に対する評価
(3)患者の在宅移行時における薬剤師の関わりと評価
(4)各高齢者施設における薬剤管理
(1)在宅患者の訪問薬剤管理指導の評価回数
ターミナルケアに携わる場合、その回数が増える一方、決められた回数を超えて実施しても指導料等が算定されない状況について議論されています。
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172377.pdf
(2)夜間・休日対応時の薬学的管理に対する評価
時間外対応の加算はあるが、ここにおける薬学管理が評価されていないことが確認され、その必要性が議論されています。
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172377.pdf
(3)患者の在宅移行時における薬剤師の関わりと評価
在宅移行時における多職種連携が重要である一方、現時点では初回の医師との同行などについて評価されていないことが確認され、議論されています。
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172377.pdf
(4)各高齢者施設における薬剤管理
各高齢者施設において、薬剤師の配置が施設基準となっていないところでは、具体的な薬剤管理の現状と課題が提示されています。これらの対応については、配置基準を変更するのではなく、薬剤師の訪問薬剤管理指導算定における課題や、介護保険と医療保険の齟齬を整えるためのものと言えるでしょう。
出典:中医協総会 令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172377.pdf
以上のように4つのポイントを見てきましたが、いずれにおいても薬局薬剤師の在宅への参画をさらに推進したい国の方向性がうかがえます。
後発品加算は「金額ベース」への変更の影響に注目
後発品に関する議論は、供給元である製薬企業側、調剤を行う薬局側のそれぞれに論点があります。ここではいったん供給には着目せず、薬局に関する論点を取り上げます。
まずは、昨今の医薬品の供給の課題に対する対応についてです。
中医協では、前回改定の影響の確認、そして現在の業務負担、対応方法についての調査内容が報告されています。それらの内容から、ひとつの対策として処方医への確認が必要な部分について議論がされました。一般名処方を推進していくことで、ある程度の薬局薬剤師の負担軽減につながる可能性がある検討がなされています。
出典:中医協総会 令和5年11月22日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001169810.pdf
また後発品について、バイオ後続品の議論が進んでいることも注目です。医療費適正化計画では、2029年までに80%置き換えが進んだ成分を60%にすることが確認されています。医療費適正化計画では、後発品の数量ベースから金額ベースに目標を変更することも議論が進んでおり、今後注目されます。
出典:中医協総会 令和5年11月22日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001169810.pdf
実際の置き換え率については、以下の資料に詳しく示されています。これらの薬剤が、それぞれの場面でバイオ後続品へ置き換えが進むであろうことがわかります。
出典:中医協総会 令和5年11月22日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001169810.pdf
これらの動きに関連して、処方元が算定できるバイオ後続品導入初期加算がありますが、以下からも算定回数は伸びていないことがわかります。後発品加算については今後、何らかの動きがみられる可能性があります。
出典:中医協総会 令和5年11月22日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001169810.pdf
また、服薬期間中フォローについては、以下記事で詳しくまとめています。
調剤報酬改定に向けた今後のスケジュール
調剤報酬改定に向けた今後のスケジュールについては、現時点で分かっているのは以下の通りです。
- 薬価改定は従前どおり4月に実施
- 報酬改定自体は6月施行となり、保険請求は7月から
- 一方、中医協の答申は2月上旬で、この内容が判明するタイミングは、例年と大きくは変わらない程度と予想される
次回の改定やその先を見据えた経営判断につながるよう、さまざまな背景を踏まえて現状を把握していくため、本記事をご活用いただけましたら幸いです。(了)
※1 https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_04medical/231120/medical02_agenda.html
▼ 第1回の記事はこちら!2024年の調剤報酬改定がいつもと違う「2つの理由」とは?
▼ 第2回の記事はこちら!薬剤管理の一元管理と、真の意図は?
▼ 第3回の記事はこちら!調剤報酬改定の重要キーワード、出揃う
▼ 第4回の記事はこちら!内閣府資料から読み取る「調剤報酬改定 2024」の行方(規制改革推進会議と骨太の方針)
▼ 第5 回の記事はこちら!BCP(事業継続計画)の4つのポイント
▼ 第6回の記事はこちら!在宅はどうなる?
▼ 第7回の記事はこちら!改定時期後ろ倒しを図解
▼ 第8回の記事はこちら!トリプル改定の方向性は?
▼ 第9回の記事はこちら!検討進む基本方針、例年との違いは?
▼ 第10回の記事はこちら!どうなる?介護報酬改定
▼ 第11回の記事はこちら!まとめてキャッチアップ 「調剤について」
▼『調剤報酬改定2024まるわかりガイド』をご活用ください
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