2024年度診療報酬改定・基本方針の検討進む~例年との違いをチェック|タカヒラの薬局動向PICK UP(9)
2024年調剤報酬改定に向けた議論が関係省庁で進んでいます。その議論の背景まで深掘りすると、来年以降の薬局経営のヒントを「先取り」することができる……! |
解説する人:タカヒラ
医療経営士。MRで複数社を経験し、現在はKAKEHASHIでマーケティングを担当。猫と娘と関係省庁が出す資料(PDF)を夜な夜な読み込むのが好き。薬局経営者の方々の意思決定のお手伝いができるよう、日々精進しています。 |
2023(令和5)年9月29日 、第168 回社会保障審議会医療保険部会にて、令和6年度診療報酬改定の基本方針が議題に上がり、改定に当たっての基本認識や基本的な視点、具体的な方向性が明示されました。
この部会で議論されている基本方針とは、皆様もご存じの通り「診療報酬改定の表紙」を構成する要素であり、ここを踏まえて点数配分についての議論が進みます。
正式な基本方針が示されるのは2023年12月が見込まれますが、現在の内容からも、例年とは違う特徴が垣間見えます。
そこで今回は、検討中の令和6年度診療報酬改定の基本方針について、例年との違いに着目しながら、解説します。
目次
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診療報酬改定の基本方針とは
診療報酬改定の基本方針では、例年は改定に当たっての基本認識、改定の基本的視点と具体的な方向性が盛り込まれていました。
例えば、前回の調剤報酬改定においては、以下の通りです。
引用元:令和4年3月4日版 令和4年度診療報酬改定の概要 【全体概要版】(※1)
この基本方針をもとに中医協などで議論が進みます。資料の構成から見ても、具体的な点数や、改定の解説というのは、すべてこの基本方針に基づいたものだということがわかります。
現状では「調剤報酬改定自体の具体が明らかになるのは年明け」と思っておられる方もおられるかもしれません。しかし、この9月の時点でもすでに、そのまま次回改定の表紙へとつながっていく、大切な内容をつかむことができるのです。
過去4回の調剤報酬改定時との違いとは
例年との違いとして注目したい点が二つあります。
その1.「近年の社会情勢・医療を取り巻く状況を踏まえた」基本方針が検討されている
まず、例年の基本方針はどのような構成・内容だったのでしょうか。過去4回分の基本方針の記載がまとまったスライドがこちらです。
引用元:令和5年9月29日第168回社会保障審議会医療保険部会 資料(※2)
基本的視点の中の【重点課題】の部分をご覧ください。2022年の前回改定においては、新型コロナウイルスへの対応が重点課題であったことは記憶にも新しいでしょう。その前の2020年は働き方改革の推進、さらにさかのぼった2018年には、地域包括ケアシステム構築が挙げられています。
そして、この9月の「基本方針の検討」では、これまでの基本方針の構成をベースとしつつ「近年の社会情勢・医療を取り巻く状況を踏まえたものとしてはどうか」と述べられている点がポイントです。
「近年の社会情勢・医療を取り巻く状況」を踏まえた方針、というのは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。以下の「考えうる記載」を見ると、そのイメージがつかみやすくなります。
引用元:令和5年9月29日第168回社会保障審議会医療保険部会 資料(※2)
ポイントとしては、
- 物価や賃金上昇の影響を踏まえた対応
- 医療・介護・福祉の同時改定であることを踏まえ、団塊世代がすべて後期高齢者になる「ポスト2025年」を見据えた対応
- 新型コロナウイルス対策の経験を踏まえ、新興感染症等へ対応できる医療提供体制構築
- 医療DXについて、情報の有効活用や医療機関等の連携の推進
- 「骨太の方針2023」に沿った対応
が挙げられます。
調剤報酬改定でも、おそらく上記の社会情勢・医療を取り巻く現状を受けた内容が反映される可能性があります。
その2.現時点では重点課題が明示されていない
またもう1点の違いとしては、もっとも顕著な重点課題が明示されていないことが挙げられます。これは今後追加になる可能性もありますが、現時点ではさまざまな課題が「横並び」の認識なのかもしれません。
今回記載された基本方針の基本認識・基本的視点・具体的方向性とは
ここからは、2024年度(令和6年度)診療報酬改定の基本方針の検討資料を深掘りしましょう。
日々の情報をキャッチアップされている方にとっては、今回の資料を見ても「今まで述べられてきたことがまとまっただけで、新しいことはない」と感じたかもしれません。
と申しますのも、新興感染症への対応は第8次医療計画の指針に則って進むことが明らかであり、医療DXも全国医療情報プラットフォームをにらみつつ進行している内容です。
このように、今春から関係省庁で進んできた議論などが確実に盛り込まれ、進行していることが分かります。ですので、ここまでのキャッチアップされてきた方には、「来年に起こる変化」も見えてきているのではないでしょうか。
さらに踏み込んだ内容は「具体的方向性」で触れられています。
引用元:令和5年9月29日第168回社会保障審議会医療保険部会 資料(※2)
「後発品やバイオ後続品の使用促進」とは、第4期医療費適正化計画(2024~2029年度)に向けた見直しで取り上げられていた、数量ベースから金額ベースへの転換のことと思われます(※3)。
また「遠隔医療の推進」については、2022年の規制改革実施計画を受けた今年5月の通知によって、へき地におけるオンライン診療が実際に始まっていますので、これらを踏まえたものと考えられます(※4)。
生活に配慮した医療の推進や、リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理の連携・推進といった内容は、同時改定意見交換会のテーマでも深掘りされていました。
そして、かかりつけの論点も現在活発に議論されています。かかりつけ医師の議論を核としつつも、さらに踏み込んだ内容が想定されます。
「薬局・薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進」も記載されたことで、ここまでの論点が反映されていることも十分予想されます。これは、次回以降の本連載にて、中医協における調剤(その1)などの議論を踏まえて解説します。
中医協答申や「短冊」に先駆けて「基本方針」を押さえ、次の一手を
診療報酬改定の基本方針を確認してみると、これまで関係省庁にて議論された内容が盛り込まれていることがわかりました。基本方針は、12月の中医協答申、年明けの「短冊」など、2024年度調剤報酬改定における、「土台」や「幹」のようなものと言えるでしょう。
ふたを開けてから「こうなったのか」ではなく「このような議論が進み、こうなるだろう」という流れをつかみながら、次の一手、もしくは次の次の一手まで見越したい。
この連載記事も、そのように考えるみなさまにとって、薬局経営の未来予測に役立てていただけるひとつとなっていたら、筆者としては大変うれしいです。
参考
※1 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001079186.pdf
※2 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35483.html
※3 2023年6月29日 社保審医療保険部会 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001114696.pdf
※4 医政総発0518第1号 令和5年5月18日 へき地等において特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための 診療所の開設について
https://www.mhlw.go.jp/content/001123357.pdf
▼ 第1回の記事はこちら!2024年の調剤報酬改定がいつもと違う「2つの理由」とは?
▼ 第2回の記事はこちら!薬剤管理の一元管理と、真の意図は?
▼ 第3回の記事はこちら!調剤報酬改定の重要キーワード、出揃う
▼ 第4回の記事はこちら!内閣府資料から読み取る「調剤報酬改定 2024」の行方(規制改革推進会議と骨太の方針)
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▼ 第7回の記事はこちら!改定時期後ろ倒しを図解
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