2024年の調剤報酬改定はいつもと違う? 2つの理由|タカヒラの薬局動向 PICK UP(1)
2024年の調剤報酬改定まであと約1年。でも実はすでに、来年の調剤報酬改定に向けての議論が関係省庁ではじまっています。その議論の背景を紐解くと、来年以降の薬局経営のヒントを「先取り」することができる……! |
解説する人:タカヒラ
医療経営士。数社でMR、マーケティング、トレーナーなどを経験し、現在はKAKEHASHIでマーケティングを担当。猫と娘と関係省庁が出す資料(PDF)を夜な夜な読み込むのが好き。薬局経営者の方々の意思決定のお手伝いができるよう、日々精進しています。
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24年度の調剤報酬改定はいつもと違う?「2つの理由」
医療経営士のタカヒラです。よろしくお願いします。
今回は「24年度の調剤報酬改定」がいつものそれとは一味違う理由を紐解いていきます。
理由1:今回の改定がトリプル(診療・介護・障害福祉)だから
過去の調剤報酬改定の傾向を見ていると、改定が重なるタイミングには大きな変化が起こる傾向が見受けられます。実際には……
2006年 在宅療養支援診療所創設
2012年 サ高住創設と介護職の喀痰吸引や経管栄養
2018年 介護医療院創設
などがありました。
理由2:「同時報酬改定に向けた意見交換会」が厚生労働省の保険局/老健局により、すでに立ち上がっている
この動きは例年の調剤報酬改定の議論よりも早く、今回は2023年3月から5月で大枠の方向性が検討されるため、そこから今後の改定の内容を予測することができます。これらの情報を今から捉えておく必要があるのは、来年4月のための経営判断、予算配分や人員計画などにも役立つヒントが眠っていると考えているからです。
出典:厚生労働省|令和6年度診療報酬改定に向けた検討の進め方について 総8-参考
「同時報酬改定の意見交換会(全3回)」では何が議論されている?
さて、「同時報酬改定の意見交換会」ではどんなことが語られているのでしょうか。500ページを超えるスライドや議事録から、ギュッとポイントだけをお伝えして参ります。
「同時報酬改定の意見交換会」は厚生労働省の老健局と保険局が運営しており、錚々たる面々での議論が行われています。参考までに出席者を添付しますね。薬局界隈からは日本薬剤師会副会長の森昌平氏が出席しています。
・池端 幸彦 日本慢性期医療協会副会長 |
次に、この意見交換会で扱われるテーマを紹介します。
「同時報酬改定の意見交換会」で語られている9テーマ
- 地域包括ケア システムのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携
- リハビリテーション・口腔・栄養
- 要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療
- 高齢者施設・障害者施設等における医療
- 認知症
- 人生の最終段階における医療・介護
- 訪問看護
- 薬剤管理
- その他
これらのテーマが、3回に分けてじっくりと議論されます。そして、議論された内容は各報酬改定の審議会へと反映されていく予定です。
1回目の「同時報酬改定の意見交換会」で語られた膨大なテーマから3つのトピックスを抽出!
第1回(3月15日開催)の内容のサマリーを紹介します。初回の議論から数百枚の資料が展開されている気合の入れようです。ここで扱われた内容は大きく3つのテーマに分かれます。各テーマに紐づく「報酬改定に影響を与えそうなポイント」を3つずつピックアップします。
テーマ1「医療・介護・障害サービスの連携」
- 医療/介護DXについて、全国医療情報プラットフォーム整備を見据え、項目と様式の統一化
- サービス連携について、高齢化した障害者、精神疾患、身体疾患障害者、医療的ケア児への医療、介護、障害福祉の提供体制
- 主治医と介護支援専門員の連携について、主治医がより生活の視点を、介護支援専門員が医療の視点を含めたケアマネジメント
テーマ2「リハビリテーション・口腔・栄養」
- リハビリテーションでは、医療保険と介護保険による円滑な移行を促進すること
- 口腔について、医療機関、介護施設、在宅において、歯科医療機関の連携のもと、医療と介護において口腔の管理がされること
- 栄養管理について、医療機関、介護施設、在宅で円滑に情報共有と管理栄養士の連携がなされていること
テーマ3「要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療」
- 誤嚥性肺炎などを地域包括ケア病棟や介護保険施設で受け入れ促進する
- 適切な入退院支援を提供するための情報提供や連携のあり方について
- 医療介護の人材確保
この3つのテーマにはそれぞれの色がありますが、全体を通して下記3つのポイントが浮かび上がってきます。
- 同時改定の対象職種間の情報連携
- 医療側から介護へ、介護側から医療への相互理解
- 医療から介護への円滑な移行
この3つには「医療と介護の連携」という共通項が見えてきます。そして、その間に円滑に入ることができるのは、薬局薬剤師である……。そんな議論の輪郭も浮かんでくるようです。
これからの地域包括ケアと薬剤師のあり方はどうなる?国は多職種連携を推進か
出典:厚生労働省|第93回社会保障審議会医療部会(オンライン会議)| 資料1-1 かかりつけ医機能について
さて、この図は資料のなかにある「地域包括ケア」のイメージ図です。「これまで」と「これから」の変化に注目すると、国は「より多職種の連携を強化したい」と考えていると分かります。
図の左側は、メディカルソーシャルワーカーさんを介して、各施設の地域連携室のスタッフさん達が情報連携をしている現状を表現しており、右側は「オンライン資格確認」「電子処方箋」「医療情報プラットフォーム」などを介して、オンラインでの情報連携が可能となることも想定されています。
そのため、多職種の連携はさらに深くなることが考えられます。そして、医療と介護の仲立ちを行い、どちらともコンタクトをもてるのは薬局薬剤師、という構図になってくると考えております。
この観点からみて、各職種とどのような連携をとっていけるのか、どのように情報連携をしていくのか、今から意識して取り組むことが、来年の改定を先取りした準備になると考えております。
実際に、4月5日に実施された介護情報利活用ワーキンググループにおいて、「医療・介護間で連携する情報の範囲について」の議論が交わされました。
出典:厚生労働省|健康・医療・介護情報利活用検討会 介護情報利活用ワーキンググループ(第5回) 資料4 医療・介護間で連携する情報の範囲について
今回のまとめ&次回予告
今回は早くも動き出した調剤報酬改定の議論について紹介させていただきました。きっと何かが起こるトリプル改定。次回の記事では2回目の「同時報酬改定の意見交換会」における議論から、ポイントを解説します。
調剤報酬改定2024まるわかりガイド
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