調剤報酬改定の「具体」がつかめる!調剤について(その1・その2)を徹底解説|タカヒラの薬局動向PICK UP(11)
2024年度の調剤報酬改定に向けて、関係省庁の各審議会では様々なデータと論点が提示され、いよいよその方向性と具体的な内容が明らかになってきています。どんな改定になるのかという点はもちろん重要ですが、その背景を理解することで、もう一歩先まで見通すことができます。 ということで、KAKEHASHIでは、どこよりもはやく24年の調剤報酬改定について、1年かけてじっくりと、タイムリーな情報をわかりやすくお届け続けていきます。 |
解説する人:タカヒラ
医療経営士。MRで複数社を経験し、現在はKAKEHASHIでマーケティングを担当。猫と娘と関係省庁が出す資料(PDF)を夜な夜な読み込むのが好き。薬局経営者の方々の意思決定のお手伝いができるよう、日々精進しています。 |
中医協における次期調剤改定に向けた議論が、どんどん進んでいます。そこで今回は、多くの方が注目している7月の「調剤について(その1)」と11月の「調剤について(その2)」を併せて眺めることで見えてきた、次期調剤改定のポイントをお伝えします。
中医協で配布された資料「調剤について(その1)」はその枚数、なんと123枚。さらに、「調剤について(その2)」は85枚というボリュームでした。
そこから、薬局経営の観点から注目ポイントを5点ピックアップしました。
目次
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過去の検討会やワーキンググループで出た方向性を踏まえて議論されている
大前提として押さえたいのが、「患者のための薬局ビジョン」や、いわゆる「アクションプラン」、そして第8次医療計画等に関する検討会、令和6年度の同時改定に向けた意見交換会などにおいて、薬局薬剤師に関連して議論されてきた方向性が今後もさらに推進されていく、という流れです。
これについては、「今後の薬剤師が目指す姿」(抜粋)という部分の記載から見て取れます。資料内では重要なところを赤文字で、特に重要な箇所が太字で表記されています。太字で記載された箇所をまとめると以下5項目となります。
- 対物中心の業務から、患者・住民との関わりの度合いの高い対人業務へとシフト
- (地域包括ケアシステムに関連し)各地域の実情に応じ、他の職種や医療機関等と連携し、患者に対して一元的・継続的な薬物両方を提供することが重要
- ICTを活用した薬剤師の業務を積極的に考えていくことが必要
- (薬局が公的役割を担っている施設であることを踏まえ)その業務を調剤に限ることはあるべき姿ではなく、医薬品の供給拠点としての役割を果たしていく必要がある
- 小規模薬局それぞれが対応可能な役割を踏まえつつ、薬局間で業務を補完するような連携を考える必要がある
以上3件は※1より抜粋
昨今の変化「処方箋枚数の減少」と「調剤基本料1の減少」
調剤について(その1)(その2)の中では、さまざまなデータが引用されています。その中でも二つのデータから、昨今の変化を確認していきましょう。
一つ目は処方箋に関するデータです。新型コロナ下の枚数減少を受け、単純に過去の数字を参考にする、ということができなくなっています。
最近の各種統計を参考にしてみても、やはり全体数は戻っておらず、患者の受診行動に変化があることが垣間見えます。
※1より抜粋
二つ目は、調剤基本料の構成比に関するデータです。ここで注目すべきは、構成比の推移です。
令和4年度(2022年度)は調剤基本料1の算定割合が前年度から15%減少し、大きな減り幅となりました。この変化がどのように評価され、調剤報酬改定に反映されるかという点は、議論を待ちたいところです。
※1より抜粋
「フォローアップ」と「かかりつけ薬剤師」の議論が特に厚め
「フォローアップ」と「かかりつけ薬剤師」については、対人業務へのシフトが求められる中、調剤報酬改定でどのように反映されるか、気になっている方が多いのではないでしょうか。
調剤について(その1)(その2)でも、定量・定性に基づくデータが取り上げられ、議論がなされています。
フォローアップ(服薬期間中フォロー)
フォローアップについては、調剤について(その1)で「考え方」が以下のような観点でまとめられています。
- 特にフォローアップの必要がある患者の例
- どのような確認をするか(確認事項)
- その後どのよう情報連携するのか(フォローアップを実施後に対応すべきこと)
- どんな疾患を対象とするのか(具体的疾患)
以上2件は※1より抜粋
さらに、調剤について(その2)の「調剤後のフォローアップが必要な疾患」という資料の中で、(その1)に記載があった対象疾患から、「糖尿病」「心不全」「認知症」がピックアップされています。これらの疾患は、薬局薬剤師がフォローアップした情報に対して医師のニーズが高い傾向にあり、そのニーズは「薬局薬剤師が考えているよりも高い」ということも見て取れます。
また、資料で赤線で囲われている記載を見ても分かるように、この3つの疾患は医師が算定できる「地域包括診療料」の対象となる疾患でもあります。ここと一致させていく動きは、「かかりつけ医」推進に合わせた動きとも言えるでしょう。
※2より抜粋
かかりつけ薬剤師
「かかりつけ薬剤師の推進」についての議論は、調剤について(その1)に盛り込まれた新たな患者調査からも、アウトカムへの期待が読み取れます。一方、算定数が増えていないことから、もう一段階踏み込んだ対応が求められていると思われます。
※1より抜粋
調剤について(その2)では、さらに踏み込んだ議論がありました。
具体的には、かかりつけ薬剤師指導料の併算定拡大、つまり、これまで併算定できなかったいくつかの加算等を、算定できるようにする動きがでてきました。
※2より抜粋
かかりつけ薬剤師の届出をしている薬局と届出をしていない薬局とを比較すると、「かかりつけ薬剤師の届出をしている薬局のほうが、フォローアップ後の医師への情報提供といった対人業務の実施率が高い」という調査結果も共有されました。
※2より抜粋
これらを踏まえると「かかりつけ薬剤師を算定できている薬局においては、その活動がより高く評価されることになる」とも考えられます。
「かかりつけ薬剤師」と「フォローアップ」はいずれも、対人業務の推進との関わりが強く、これらがどのように評価され、どのように取り組むかについて考えている方々も多いと思います。薬局経営にも影響を与えるポイントとなる可能性もあり、引き続き注目したいところです。
薬歴にかかる時間や残業など「薬剤師の働き方」が早い段階で注目
「対人シフト」を検討する上で、必ず進めなければならないのが「業務効率化」です。その前提として、現状の薬剤師の働き方に関する各種調査が行われています。すでに調剤について(その1)で、以下の視点で各種調査に基づき、薬剤師の働き方に関する議論がなされています。
-
人員・勤務体制
- 薬剤師の1日の業務時間とその内容
- 薬歴記載に要する時間
- 薬歴記載のための残業
以上3件は※1より抜粋
新たな調査結果も加わり議論が進められていることからも、引き続き注視する必要があるテーマと言えるでしょう。
地域支援体制加算、服薬情報等提供料、麻薬の備蓄に注目
調剤について(その2)では、服薬情報等提供書にかかわる業務の現状が、以下の通り確認されました。
- 服薬情報等提供料3の算定件数が少ない
- 提供先の偏りがある(医療機関のみ、患者のみ)
- 地域支援体制加算4を取得する薬局において算定が多い
今後、服薬情報等提供書に関する算定に変化がありそうです。
※2より抜粋
さらに、薬局における医療用麻薬の備蓄状況の調査結果も公表されました。現在の地域支援体制加算の算定要件でも、麻薬小売業者の免許、調剤実績などが挙げられていますが、「麻薬調剤できる体制づくり」でもある複数品目の備蓄は、何らかの形で算定要件に影響を与える可能性がありそうです。
※2より抜粋
注目ポイントを参考に、近づく2024年の調剤報酬改定に向けた備えを
今回は7月と11月の中医協で議論された、調剤について(その1)と(その2)の注目ポイントを5つご紹介しました。
2024年度の調剤報酬改定が近づいています。「算定要件をいかに満たすのか」を検討する前に、今回ご紹介した注目ポイントを参考に「どのような動きがなぜ起こっているのか」を押さえておくことも、大切な備えと言えるでしょう。
本記事が、皆様の薬局経営へお役に立てば幸いです。
参考
※1 中央社会保険医療協議会 総会(第550回)資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00197.html
※2 中央社会保険医療協議会 総会(第562回)資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00221.html
▼ 第1回の記事はこちら!2024年の調剤報酬改定がいつもと違う「2つの理由」とは?
▼ 第2回の記事はこちら!薬剤管理の一元管理と、真の意図は?
▼ 第3回の記事はこちら!調剤報酬改定の重要キーワード、出揃う
▼ 第4回の記事はこちら!内閣府資料から読み取る「調剤報酬改定 2024」の行方(規制改革推進会議と骨太の方針)
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