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国の動向と物流の変化は、薬局経営をいかに変えるか。【ラストワンマイル講演レポート】


薬局DXやデータヘルス改革への対応、それを受けた規制緩和とともに、薬局の業界変化とサービスの多様化が起こっています。


この先、薬局経営はどのように変わっていくのか」を皆さまと考えるため、株式会社カケハシはデータヘルス改革をリードする行政や、ラストワンマイルサービスに取り組む事業者の現在の動きを知るセミナーを開催しました。本レポートは当日の内容を再構成してお伝えします。


※登壇者の肩書などは開催日の2022年9月9日現在の情報となります。本セミナーは、政府、東京都からの実施ガイドラインに従って運営されました。

こんな方におススメ


・国が進める薬局DXが、薬局経営にどんな変化をもたらすかを把握したい方

・ラストワンマイルサービスの実例を知りたい方


目次[非表示]

  1. 1.こんな方におススメ
  2. 2.電子処方箋サービス推進室長が語る、薬局DXの最新動向
  3. 3.なぜ国はDXに取り組んでいるのか
  4. 4.中医協の答申を受け、薬局向け補助や診療報酬が見直しに
  5. 5.電子処方箋のモデル事業は10月末から山形県、福島県、千葉県、広島県で
  6. 6.電子処方箋が運用開始されると、薬局経営上、どんなメリットがあるのか
  7. 7.ラストワンマイルと規制緩和~薬剤師のテレワーク、宅配ロッカー、ドローン
  8. 8.薬と安心を運ぶラストワンマイルサービス

当日の様子はオンデマンド動画でも期間限定配信中です。ぜひご覧ください。

  【期間限定オンデマンド配信】ラストワンマイルDAY ~ 知る・ふれる・つながる未来 ~ 【配信期間:1月31日(火)23:59まで】薬局業界初、処方薬の受け渡し・配送等のラストワンマイルをテーマにして開催したスペシャルイベントを期間限定でご覧いただけます。電子処方箋をリードする行政、処方薬配送のプロフェッショナル、ラストワンマイルサービスにいち早く取り組まれた薬局経営者の方々をお招きし、今後の薬局経営のヒントが満載のセミナーと、お薬ロッカー・ドローン・自動配送ロボ・即日配送などのラストワンマイルサービスについてご紹介しております。 Musubi|電子薬歴は業務効率化だけではない時代。Musubiは薬局DXをトータルサポート

電子処方箋サービス推進室長が語る、薬局DXの最新動向

セミナーではまず、「薬局DXに向けた行政の最新動向」をテーマに、厚生労働省電子処方箋サービス推進室の室長である伊藤建氏にご登壇いただきました。


<登壇者>
伊藤 建 氏(いとう・たける)
厚生労働省 大臣官房企画官(医薬・生活衛生局併任)電子処方箋サービス推進室長

なぜ国はDXに取り組んでいるのか

伊藤氏:

厚生労働省の伊藤でございます。まずは、そもそも国としてこの医療DX、デジタル化に取り組んでいる背景を紹介します。

既に超高齢社会が訪れている中、中長期的な人口動態推計に目を向けると、高齢者の人口の伸びはある程度落ちついてきます。他方、現役世代、医療の担い手が急減していく予測が立っております。そのため、少ない担い手の中でいかに効率的に医療サービスを提供し続けられる「持続可能な社会保障制度」を維持・構築していくかが、厚生労働省に課された大きなミッションの一つです。また、さまざまな医療・健康データを患者ご自身で把握することによる健康寿命の延伸も、期待されています。

こういった中長期的な社会課題への対応は、国だけで進むものではなく皆様方とともにしっかり取り組んでいきたい、というのが大きな趣旨です。

中医協の答申を受け、薬局向け補助や診療報酬が見直しに

2022年6月の骨太の方針2022で、オンライン資格確認は原則義務化の方針が打ち出されています。これに伴い、保険証の選択制は原則廃止を目指しています。加えまして、2023年1月から運用が始まる電子処方箋は、オンライン資格確認とセットで導入を進めていきたいと思っています。


先般の中医協(中央社会保険医療協議会。厚生労働大臣の諮問機関)で、このオンライン資格確認の義務化に伴う答申がありました。その内容を3点、ご説明します。


講演資料より抜粋して掲載

(1)オンライン資格確認の導入を原則義務化

(2)医療機関・薬局向け補助の拡充

(3)診療報酬上の加算の取扱いの見直し

(1)について、療養担当規則等(省令)が改正、2023年4月に施行されるため、基本的に保険診療をされている場合、原則義務化となります。

(2)に関連した金銭的な支援策として、大型チェーン薬局を除いた比較的小規模な薬局向けに42.9万円を上限に実費補助、と大きく強化されました。


(3)の診療報酬の見直しについては、今回の中医協の議論を経て、マイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」を利用すると、マイナ保険証を利用しない場合よりも患者負担が小さくなるような仕組みに見直しをしています。

電子処方箋のモデル事業は10月末から山形県、福島県、千葉県、広島県で

2023年1月から運用を開始する電子処方箋は、10月末からモデル事業を実施します。(社会保障審議会)医療保険部会におきまして山形県酒田地域、福島県須賀川地域、千葉県旭地域、広島県安佐地域の全国4地域を、電子処方箋を実際に動かし、本番とほぼ同じ形で先行的に実施する地域として選定しました。

この4地域の選定理由につきましては、個別に地域の医療機関や薬局にご相談したところ、電子処方箋の運用に前向きに取り組んでいただけそうでありました。それから、医療機関、薬局、小規模な診療所などもありますし、薬局の中でも大手チェーンとそうでない薬局、それから地域的にも門前だけではなく面的な形でも参加いただけそうだったのがこの4地域でした。

我々としても「やはり、実際動かしてみないと何とも」と思われる方がたくさんおられると考えております。モデル事業のこの4地域の取り組み状況は、できるだけ透明性の高い形で取り組みや課題を随時お示ししていきたいです。

導入時期を迷っておられる方も多いと思いますので、実際に先行取り組みの状況をご覧いただき、ぜひ早期の導入を決断していただけたらと考えております。

電子処方箋が運用開始されると、薬局経営上、どんなメリットがあるのか

電子処方箋の具体的なメリットは、主に4つほどあるかと思います。

・現在のオンライン資格確認に基づく情報よりも新しい状況が確認でき、調剤や服薬指導、フォローアップに活用できる

・重複投薬、併用禁忌の自動チェック

・データの入力負担削減

・調剤済みの処方箋の管理が楽になる(物理的なスペースが不要になる)

電子処方箋の導入補助については来年3月までです。実際に今ベンダーにお問い合わせいただくと3か月待ちのケースもあると聞いておりますので、早目のお問い合わせがいいと考えております。

講演資料より抜粋して掲載

ラストワンマイルと規制緩和~薬剤師のテレワーク、宅配ロッカー、ドローン

ここからは今回のテーマの「ラストワンマイル」に関連した取り組みをご説明します。

まずは恒久化されたオンライン服薬指導に関連し、薬剤師がテレワークのような形で服薬指導ができるよう、省令改正の手続きに入っています。働く場所の制限もこれで外していくということでございます。

宅配ロッカーを活用した薬剤配送については、関連する事務連絡の発出がされています。ドローンの医薬品配送も各地で実証実験が進んでおり、関係省庁と連携をしながらガイドラインの見直しが検討されています。また、検査キットのOTC化については、OCT化したものをネット販売を決定しております。

ここからは、参加者のみなさまからの質問にお答えできればと思います。

参加者からの質問:

「電子処方箋のモデル事業において、オンライン服薬指導からお薬を送付となった場合、公費の上限額管理票はどのように管理すればよいでしょうか?

伊藤氏:

モデル事業での進め方は、まさに議論を進めているところです。オンライン服薬指導の場合のマニュアルなども整理をしております。


データヘルス改革についてより深くつかみたい方には、こちらの資料がおススメです。

  オンライン資格確認・電子処方箋で 薬局はどう変わる? 2023 年からの電子処方箋導入、オンライン資格確認の原則義務化など、国の「データヘルス改革」の現在地と今後を知ることは、薬局経営の舵取りに欠かせなくなっています。そこでPHC 株式会社と株式会社カケハシは、2022 年7 月5 日、厚生労働省大臣官房企画官(医薬・生活衛生局併任)伊藤 建氏をお迎えし、「オンライン資格確認の義務化から始まる、電子処方箋、薬局DX ~ データヘルス改革に薬局はどう対応することができるか ~」と題したセミナーを開催しました。当日は伊藤氏によるデータヘルス改革をめぐる国の動向に関する解説の後、薬剤師の皆様からの質問にもお答えいただきました。 Musubi|電子薬歴は業務効率化だけではない時代。Musubiは薬局DXをトータルサポート

薬と安心を運ぶラストワンマイルサービス

続いて「薬と安心を運ぶラストワンマイルサービス」をテーマに、現在の日本における物流および処方薬配送の課題や解決に向けた現在の取り組みやサービスについて、それぞれのプロフェッショナルが紹介しました。


<登壇者>
須貝 栄一郎氏(すがい・えいいちろう)
セイノーホールディングス株式会社ラストワンマイル推進チーム 新スマート物流推進 プロジェクト担当課長
新谷 謙大氏(しんたに・けんた)
GENie株式会社 事業推進本部・ARUUプロジェクトマネージャー​​​​​​​


須貝氏:

私からは、ドローン配送サービス『SkyHub』(スカイハブ)のプロジェクトについてご紹介します。本プロジェクトは、ドローンの要素技術を持つエアロネスト社と弊社が共同で取り組んでいます。既存の物流とドローンの物流をシームレスにつなぐことによって、いつでもどこでもモノが届く、新スマート物流の仕組みを構築しています。

私たちがターゲットとしているのは、全国約1700ある自治体のうち、過疎地域に認定されている885自治体です。全国の51%を超え、年々拡大しています。

過疎地域の課題は、高齢化の進行により、商店自体の廃業、免許返納が進む一方、公共交通機関が十分に整備されず買い物を不便に感じている点があります。また十分な医療が受けられない方がたくさんおられます。

物流事業者としても「2024年問題」による労働時間の短縮を余儀なくされており、毎日配達できていたものの、過疎地においては曜日を決めて配達、という状況が想定されています。また、中山間地は自然災害に見舞われやすい地形でもあります。これらの課題を解決しなければ、人口減少でいずれ地域が消滅してしまいます。

つまり、過疎地域においては物が届かない時代がすぐそこまで来ており、過疎地の物流を地域のインフラとして効率的に再構築する必要があると考え、『SkyHub』を展開しています。

『SkyHub』は既存の物流を大きく変えることなく、地域の入口に物流を集約するデポという配送拠点を設け、その地域の配送物を集約し、モノの受取場所となるスタンドを各集落に設置することにより、時間や商品、サイズ、天候などによってドローンや陸送など最適な輸送手段を選択し、効率的に配送していく仕組みです。

配送事業者が各社バラバラに配送していた商品を「デポ」と呼ばれる場所に集約し、集落のスタンドへと配送します。域内で混載して配送するよう配車の組み替えも行うことで、車両を削減し、二酸化炭素の排出削減にも貢献します。

私たちが最初にプロジェクトを立ち上げたのは、山梨県の小菅村です。

小菅村では、デポは9商店の空き家を、スタンドは集落の空き地を利用させていただき、地域の資産を有効活用しています。飛行ルートは、デポを起点に村内にある8つの集落に対して4集落5ルートを開設し、今年度中に全ての集落にスタンドを開設する予定です。

現行、医薬品についてはデポにストックすることができないため、市街地にある薬局から医薬品をお預かりして、まずは陸送で配送しております。将来は僻地や離島に向けての配送や緊急時にドローンを活用することを進めて参りたいと考えております。

各自治体で実装に向けて取り組む中、今年4月から営業部隊を配置し過疎地域の自治体様とコミュニケーションをとりながら、地域の課題解決に取り組んでおります。

医薬品の配送は当プロジェクトのとても重要な項目であり、地域の調剤薬局様との連携を進めていければと考えております。

新谷氏:

本日は処方薬の配送サービス『ARUU』についてお話しする前に、本日のテーマである「ラストワンマイルとは一体何なのか」を確認したいと思います。

お客様にモノ・サービスが到達する物流の最後の接点。これがラストワンマイルです。EC市場の新規参入、コロナ禍における配送サービスの多様化、そして利用者の急激な増加によって、今、このラストワンマイル市場やラストワンマイルサービスが非常に注目されています。

「自宅にいながら商品が受け取れるのであれば、従来の郵便や宅配便もラストワンマイルではないか」と考える方もおられるかもしれません。

ラストワンマイルを考える上で非常に重要になるのが、距離と時間です。商品を送りたい荷主様と、商品を受け取りたい受取人。これが同一エリアの物流サービスであれば、ラストワンマイルとなります。狭小商圏の配送で、原則即日配送ができる。経由拠点がなく、集荷に伺った配達員がそのままの足で受取人の方に商品をお届けする。そういったサービスがラストワンマイルと考えていただければと思います。

ラストワンマイル市場は非常に成長しています。日本国内においては、処方薬の配送におけるラストワンマイルサービスがまだまだ成長過程ですが、フードデリバリー市場はコロナ禍もあり2020年から急激に成長し、ネットスーパーの市場規模も増加しています。

2016年に設立した弊社は、フードデリバリーやネットスーパーの配送を手がけてきた中、2020年に新規事業として処方薬配送サービス『ARUU』を立ち上げました。そして、現在、検体の回収等も含め、全国で医療の物流サービスを展開しています。

『ARUU』をスタートさせた背景は、フードデリバリーやネットスーパーの配送など食品を配送するサービスを展開していたところ、(薬局の)患者様であるお客様の方から「お薬も一緒に運んでほしい」という多くの声をいただき、このサービスを立案しました。オンライン診療の増加や0410を初めとする規制緩和が追い風となり、全国でサービスをスタートできています。

『ARUU』の使命として掲げているのが「患者様が受けたい医療を受けたい場所で受けられる」。そういったサービスを物流網を使ってサポートしていくことです。薬は健康な生活をしていく上で欠かせないものです。そんな薬があなたのすぐそばすぐ近くにある。そういったサービスであるようにという思いを込め、『ARUU』をスタートしました。

『ARUU』のサービスにもつながりますが、「ラストワンマイル」のサービスに求められるポイントが3点あります。

(1)配送の品質

(2)スピード

(3)戦略に応じたフレキシブルな物流網の構築

品質に関しては、弊社は「ハーティスト」と呼ぶ配送員を教育しております。ハーティストとは、心という意味のheartと、携わるという意味のistを組み合わせた造語です。配達時の接客対応や物流会社としての運転教育指導はもちろん、お薬の配送に関しては、非常にセンシティブなものを運んでいると考えています。

スピードは、原則当日に配達できるモデルを構築しております。当日配達できるように配達範囲は各薬局様の商圏等に合わせて設定しておりますが、ほとんどが市町村単位でご選択いただいております。私たちは、患者様が薬局に来局して帰宅するまでの時間、ニアリーイコールARUUの配達時間になるよう、30分から2時間以内の配送を目指しています。

3つ目のフレキシブルさは、単に配送するだけではなく、ハーティストがお客様をサポートできる体制も整えています。クライアントである薬局に合わせて、居宅だけではなく介護施設への配送も行っています。配送のご要望は本当に多岐多様で、具体的には、お薬ボックスでの配達、お薬カレンダーへの貼り付け後、薬剤師様の指示のもとお薬手帳へのシール貼り、また残薬回収等も対応しています。

また、オンラインの服薬指導のサポートも行っています。ハーティストは原則対面で患者様とお会いしてお届けしますので、受け渡しの際に薬局様とテレビ電話をつないでお薬の説明ができる環境を整える。こういった取り組みを、一部の薬局様でご対応しております。

そのほか、店舗間の在庫移動、サービス認知のポスティング対応、配達先の顧客患者様を訪問して、見守りも兼ねて体調を伺う、といった対応もしています。

契約いただいた薬局は、集荷依頼や配達状況の確認ができるシステムをご利用いただきます。そのため、自社で物流網を構築するのに必要な業務や事故などのリスク対応を、一括してプロフェッショナルに外部委託いただける形になっています。

最後になりますが、「『ARUU』はあくまでもツールだ」と捉えていただければと思います。オンライン服薬指導など、「薬局×何か」と考え、この『ARUU』を活用いただける部分についてディスカッションさせていたければと思います。(了)

「ラストワンマイルサービスの具体例をさらに知りたい」と思った方は、こちらの一冊に情報を集めております。ぜひご覧ください。

  薬局向けラストワンマイルサービス最前線 2023年1月の電子処方箋の運用開始を皮切りに、薬局業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のさらなる加速が期待されている。薬局の在り方や患者と薬剤師の関わり方も変化を求められている。 患者は、症状や自身の状況に応じて、従来通り医療機関を尋ねることもあれば、外出に不便がある時はスマホの画面越しに診察や服薬指導を受けたり、時には電話やチャットで相談したりするなど、医療の受け方の選択肢が増えている。 薬の受け渡しもまた、「薬局で直接渡す」だけではなく、患者にとって受取りやすい場所・タイミングを提供することが求められるようになり、それに応えるべく、お薬ロッカーや配送サービスに加え、ドローンやロボット配送等も実証実験が進むとともに、ガイドラインの制定や規制緩和が進んでいる。 こうした薬局業界の変化とサービスの多様化、患者動向の変化を受け、"処方薬のラストワンマイル"について、医療サービスのさらなる進化を後押しすべくここに情報を集めた。 Musubi|電子薬歴は業務効率化だけではない時代。Musubiは薬局DXをトータルサポート

本イベントの後半、薬局経営者の方々が登壇したディスカッション編は、こちらからご覧ください。

  宅配ロッカー活用やオンライン服薬指導をすすめる薬局経営者が語る、取り組みの実情と未来 2023年の電子処方箋導入やオンライン資格確認の原則義務化など、ICTを有効活用し薬局運営の仕組みを変えることで患者さんとの関係を強くし、来局し続けていただける薬局づくりに取り組んでいる経営者がおられます。 そんな薬局業界をけん引する経営者お二人と、厚生労働省で薬局DXの取り組みを進める電子処方箋サービス推進室長に、「患者との距離を縮める薬局サービスへの挑戦と経営」について実例を交えて語っていただきました。 Musubi|電子薬歴は業務効率化だけではない時代。Musubiは薬局DXをトータルサポート



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