2022年 調剤報酬改定でおこる「薬局経営3つのパラダイムシフト」(解説:狭間研至先生)
2022年4月の調剤報酬改定が迫ってきました。今回は社会保障審議会などに提出された資料から、調剤報酬改定の方向性をポイントに絞って予想します。 資料を読み解くと、コロナ禍を経て、より薬剤師の専門性が問われる内容となっていると感じています。2015年から叫ばれていた『患者のための薬局ビジョン』がついに実現するような予感があり、調剤報酬制度はひとつの転換期を迎えているといえるでしょう。それに合わせて、わたしたち薬局経営者の視点もシフトしていく必要があります。 ※本記事は2021年12月7日(火)のプレミアムセミナー4で狭間研至氏が解説した内容を再編集したものです |
解説:狭間研至先生
PHB Design株式会社 代表取締役社長/一般社団法人 日本在宅薬学会 理事長 1969年、薬局の長男として生まれるも、医師になり内視鏡外科、移植外科にも携わるも、薬局や薬剤師が変われば地域医療が変わる!と、実家のハザマ薬局を継承しファルメディコ株式会社と改組。「調剤薬局」のあり方に、医師、薬局経営者として限界を感じ、在宅療養支援に特化した薬局へと変えていった。そこでの様々な取組や工夫を、日本在宅薬学会とPHBdesign社を設立し、多くの薬剤師、薬局経営者に伝える事で、薬局を変え、地域医療を変えたいと活動している。オンラインサロン『狭間研至の薬局経営3.0倶楽部』を運営中。 |
目次[非表示]
- 1.解説:狭間研至先生
- 2.2022年 調剤報酬改定の「4つの方向性」を予想
- 2.1.【1】新型コロナウイルス感染症などに対応できる「地域医療連携」の実現へ【重点課題】
- 2.2.【2】医療従事者の働き方改革の推進【重点課題】
- 2.3.【3】患者さんにとって身近・安心・安全な医療の実現へ【対物から対人へ】
- 2.4.【4】(国民皆保険制度の)安定性・持続可能性の向上へ
- 3.調剤報酬制度「 3つのパラダイムシフト」とは?
- 3.1.(1)定額制から出来高制へ
- 3.2.(2)対物中心から対人中心へ
- 3.3.(3)立地よりも機能(サービス)へ
- 4.参考資料
- 5.(Musubiより)患者さんに寄り添う薬局づくりのヒント
2022年 調剤報酬改定の「4つの方向性」を予想
【1】新型コロナウイルス感染症などに対応できる「地域医療連携」の実現へ【重点課題】
具体的方向性の例
- かかりつけ医 、かかりつけ歯科医 、かかりつけ薬剤師の機能の評価
- 質の高い在宅医療・訪問看護のための確保
- 地域包括ケアシステムの推進のための取組 など
狭間先生の解説 1つ目の重点課題です。コロナ禍を経て、地域医療連携の推進が強化される方針が読み取れます。「かかりつけ薬剤師」「地域包括ケアシステム」などの言葉が盛り込まれていますね。地域医療連携は、基本的には薬物治療連携が中心となることもあり、外来と在宅の連携などが新型コロナウイルス感染症等の対策となる、という考え方です。 |
【2】医療従事者の働き方改革の推進【重点課題】
具体的方向性の例
- 医療従事者が高い専門性を発揮できる勤務環境の改善に向けての取組の評価
- 業務の効率化に資するICTの利活用の推進 など
狭間先生の解説 2つ目の重点課題です。この項目における「働き方改革」とは医師や薬剤師、看護師の専門性がより発揮される環境をつくるための取り組み、つまりタスクシフトの推進です。また、薬剤師が専門性を発揮 するためには「薬を渡したあと」への関わり方が重要となります。加えて、業務効率化におけるICTの利活用も明記されています。オンライン資格確認やオンライン服薬指導の推進が該当するでしょう。 |
【3】患者さんにとって身近・安心・安全な医療の実現へ【対物から対人へ】
具体的方向性の例
- 医薬品の安定供給の確保
- 薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた適切な評価
- 薬局・薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進
- 病棟薬剤師業務の評価 など
狭間先生の解説 この項目で語られているのは、患者さんへ安定かつ安全な医療を届けるために薬剤師がすべき方向性です。昨今の薬品不足問題はもちろん対応すべきですが、注目したいのは「薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた適切な評価」という表現から、地域の薬剤師と病院薬剤師の連携を推進している点です。また、患者さんへの安全な医療提供のためにも「対物から対人へ」という方針も明記されています。 |
【4】(国民皆保険制度の)安定性・持続可能性の向上へ
具体的方向性の例
- 医師・病棟薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進
- 効率性等に応じた薬局の評価の推進 など
狭間先生の解説 この項目で語られている大きなテーマは「国民皆保険制度の維持・メンテナンスへの取組」と私は読み取りましたが、その具体的な項目として「医師・病棟薬剤師と薬局薬剤師の協同の取組による医薬品の適性使用等の推進」が明記されています。医薬協働によるポリファーマシー対策といえるでしょう。 |
調剤報酬制度「 3つのパラダイムシフト」とは?
(1)定額制から出来高制へ
これまでの薬局は、調剤報酬に基づいた加算の設計をしたうえで、応需する処方せんの枚数で売上が決定していました。いうなれば「定額制」です。ここ数年の国の方針や、将来予想される調剤報酬のマイナス改定を踏まえると、今後は「出来高制」へシフトすると予想します。薬剤師が行う対人業務の質と量が売上を決める世界へ。薬局経営者はこれまでとは経営指標(モニタリング項目)を変えていく必要があります。
(2)対物中心から対人中心へ
これまでも語られてきたようにICT化や機械化を通じて効率化することで、薬剤師が専門性を発揮できる環境をつくること、つまり対人業務へのシフトを推進する動きは加速するでしょう。医師や病院薬剤師と連携し地域包括ケアを実現するためにも、薬剤師の役割が「渡すまでから、のんだ後まで」に変わっていくことは必須といえます。
(3)立地よりも機能(サービス)へ
これまでの資料では、国民皆保険制度を維持するというテーマのなかで、効率的な立地による過剰利益を防ぐという意図が見えてきます。敷地内薬局や門前薬局の調剤基本料・加算がマイナスになることが予想されます。そのうえで地域連携薬局といった、これからの地域医療を担う薬局の機能評価が進むと予想されます。まさに立地よりも機能(サービス)へ、「どこにあるか」ではなく「何ができるか?」の流れが加速すると予想しています。
参考資料
※1 令和3年11月2日 第82回 社会保障審議会医療部会 資料より参照・一部抜粋
※2 令和3年12月10日 第504回 中央社会保険医療協議会 資料より参照・一部抜粋
(Musubiより)患者さんに寄り添う薬局づくりのヒント
調剤報酬の改定に本質的に備えるためには、対人業務などの薬剤師の専門性を発揮していくことが必要です。『Musubi』のホームページにて今後の薬局経営をさらにつよくするための最新情報を公開中。「患者さんに寄り添う薬局づくり」として、再来率の向上のためのポイントをご覧ください。