アドヒアランスと売上が両立できる薬局経営術。顧客管理からはじめよう
コロナ禍以降、大きな変化をみせる薬局経営において、新規患者さんの来局促進や、処方箋枚数の増加を実現することは、以前よりも難しくなってきた側面もあります。調剤報酬改定などで処方箋単価の減少も想定されるなかで、本稿では、患者さんのアドヒアランスを向上させることが売上向上への近道となることを解説します。また、後半では両立の実現にあたって重要な顧客管理のはじめる方法をまとめました。本稿が薬局経営におけるあたらしい視点の発見につながれば幸いです。 本稿は2021年9月に実施されたMusubiプレミアムセミナー「アドヒアランスと売上を両立させる2つの方法」より、内容を再編集しています。累計参加者が3,000人(2022年2月時点)を突破した人気セミナーの最新情報をぜひチェックください。 |
コロナ禍以降、薬局業界の動向は?
コロナ禍が薬局業界に与えた影響は小さいものではありません。ここ数年、8億4,000万台で推移していた処方箋枚数が2020年には7億6,484万枚となり、前年度比で9.3%減少しました。2021年度の処方箋枚数は、厚生労働省からはまだ公表されていませんが、調査機関のインテージリアルワールドによると、推計処方箋枚数は7億3,695枚との報道もあり、なかなか雪解けを見せないコロナ禍において処方箋枚数が以前の水準にもどるには、まだ時間がかかりそうです。
また、コロナ禍以前からの動きとして、大手ドラッグストアチェーンによる調剤併設店の出店が増加しており、コロナ禍に突入して以降も伸長しています。大手チェーンのクスリのアオキHDが「5年後の調剤併設率」の目標値を70%に設定しました。その他のチェーンも小規模店舗のM&A(合併や買収)を強化し、これまで九州地方を中心に展開していたコスモス薬品が関西地方や中国地方に積極的に展開する動きも見られます。さらに、大手チェーンはその資本力を生かして、地域住民の健康サポートに資する取り組みや、AIツールによる業務のスマート化(棚卸しの自動化や会計の効率化)で、対物業務の効率化をめざし、専門性の高い対人業務への切り替えを行うことで、顧客へのサービスの質を高めています。
これからの薬局経営に必要な2つ視点
では、地域の医療を支える薬局が長くつづいていくためにも、どういう方法で売上をつくっていけばよいのでしょうか。さまざまな方法があるなかで、本稿では2つのポイントに絞って解説します。
(1)再来率向上=売上向上の好循環をつくる
処方箋枚数が減少傾向にある昨今において、新規の患者さんが持参する処方箋を増やすことは容易ではありません。一方で、いま来局してくださっている患者さんによい薬局体験を提供することで脱落を防ぎ、再び薬局に訪れてもらう(≒薬局のファンになってもらう)動きを推進することができれば、患者は健康を、薬局は売上を向上させることが可能です。
このような仮説のベースとして「LTV(Life Time Value)」という考え方があります。LTVは、ある顧客(患者さん)が一生のうちに、自社製品やサービスをどれだけ購入、利用してくれるのか、合計でどのくらいの利益をもたらしてくれるのかを示す値で、顧客生涯価値といわれています。ポイントは、顧客の「企業に対する愛着度」がLTVの総和を大きくするために重要となることです。薬局経営に置き換えると「薬局や薬剤師を頼って、繰り返し薬局に訪れてくれる回数」や「OTCの購入などを含む、薬局のサービスを複数回利用すること」などによって値が大きく変化します。そのためには、患者さんとの薬局が関係性を築き、強化していくことが重要です。
ひとりひとりの患者さんにマッチした服薬指導やコミュニケーションを実現するためにも、データとして患者さんの情報を把握し、管理や運用をすること、つまり「顧客管理」が重要となります(薬局における顧客管理ほ方法については、本稿の後半で重点的に解説します)。
特に慢性患者さんが来局しなくなることによる、薬局への売上の影響は大きいものがあるでしょう。たとえば、65歳、定年退職した男性で高血圧の治療を受けており、毎回30日処方で処方箋単価が1万円である場合、1年間で12万円の売上になります。10年間来局されると、120万。20年間来局されると240万……もし65歳の慢性患者さんが脱落した場合、これらの売上を失う、と考えることができます。
(2)薬局体験の向上により、ファンを獲得
LTVの向上には、薬局に繰り返し訪れてもらうこと、数ある薬局のなかで自局を選んでもらうことが大切です。そのためには……
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本稿の後半では、薬局のファンになってもらうことで実現した「保険外売上が月80万円向上した事例」や、アドヒアランスと売上向上のために重要となる「顧客管理」の方法をやさしく解説します。
後半の目次 ・薬局経営における「顧客管理」のトレンド ・患者さんの脱落理由を把握する ・薬局における「顧客管理」の基本的な考え方 ・顧客の動きがわかれば、できることが増える まとめ:顧客管理からはじめよう。Musubiにできること |
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