薬局の新規開業時、行政書士に依頼するメリットは?薬事業務専門の行政書士法人に聞いてみた。
薬局の新規開業・開設時には、各役所への書類の提出や申請など、数多くの手続きがあります。そんな慣れない手続きを忙しい経営者に代わって行ってくれるのが行政書士。本記事では、行政書士がどんなサポートしてくれるのか、薬局経営者にとってどんなメリットがあるかを解説します。 |
解説する人:山田 純也さん(サポート行政書士法人 所属)
サポート行政書士法人では、調剤薬局の新規開設許可から、薬局移転、許可取得後の手続全般、医薬品販売に関する許認可の申請まで幅広くサポート。スピード対応をモットーに、トップレベルのノウハウを持つ行政書士が多数在籍。
この記事は、こんな方にオススメです ・ 独立して薬局をつくりたいという方 ・ 薬局の開業・開店のプロセスに興味がある方 ・ 最近の開業・開店のトレンドを知りたい方 |
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行政書士に依頼するメリットは「リソース確保」
ーさっそくですが、行政書士に依頼するメリットを教えてください。
メリットは、薬局の開業・開設時にしか発生しない各種行政手続きを委託いただくことで、忙しい薬局開業時の経営者のリソースが確保できることでしょうか。はじめて薬局を開業・開設する方が驚かれるのは、とにかく打ち合わせが多いことです。医師や医療機関、不動産会社、医薬品の卸関係の会社など……薬局の開業・開設時は決めることも多く、打ち合わせが必然的に多くなります。
-打ち合わせで忙しいなか、各種行政手続きも必要になってくる……?
はい。あるケースでは、保健所、厚生局、指定の窓口に10回以上通う必要があるケースもあります。この行政手続きは、開局時に限ったもの多く、手続きについてご自身で学ばれて対応することもできますが、行政書士を頼っていただくことも選択肢に入れていただくのもアリかな、と思っています。
ー行政書士に頼らず、自力で開局される方もいらっしゃるのですか?
いわゆる「自力派」の方も結構いらっしゃいますね。自力で手続きすることのメリットは、法律には詳しくなることができる点ですね。その知識が今後の薬局経営で役立つこともきっとあると思います。
ー行政書士に依頼しないことで生まれるデメリットはありますか?
デメリットは、開局が遅れる可能性があることでしょうか。行政手続きには独特のルールもあり、慣れていないと申請がスムーズに進まないこともしばしあります。そのとき、もし開局よりも前に、薬局の賃料が発生していたら……無駄な家賃を払ってしまった、と相談に来られるケースもあります。
行政書士に相談すると、こんなリスクヘッジができます
ー実際に経営者からはどんなタイミングで、どんな相談をいただくことが多いですか?
薬局開業・開設のステップとしては、初期フェーズの「土地選び」の段階で相談をいただくことが多いです。行政書士としては「土地(場所)は決まっていて、薬局の設計図がある程度決まった段階」で相談いただけるとサポートしやすいですね。
ーなぜ「設計図が完成した段階で相談されるとベター」なのでしょうか?
行政書士は「この場所にこういう薬局を開設します」という申請書類を作成し、保健所などへ申請をサポートするのですが、設計図がある段階だと「この図面だと申請が通りません」というフィードバックをすることができます。このあたりはとてもルールが細かく複雑なため、我々のような行政書士を頼っていただくことで、薬局経営者のみなさまの負担軽減にもなると思います。もし建物が完成した段階で「申請が通らない設計」が発覚すると、建て直しができないケースもあり、また建て直しができても時間がかかり、開局が遅れることもあります。ぜひ「設計図ができたら行政書士に相談!」と覚えてください。
ー保健所などへの申請以外に、依頼できることあはりますか?
どんなことでも気軽に相談いただければうれしいですが、行政が運営している各種補助金の申請手続きや、相続関係の手続きのサポートなども対応させていただきます。
Musubiでは、薬局開業・承継をサポートしております
くわしくはこちらをご覧ください
自分に合った行政書士事務所の探し方
ーたくさんの行政書士や事務所があると思いますが、探し方のコツはありますか?
行政書士をお探しの際は、ぜひ2つの質問をしてみてください。
(1)薬局開業の経験はどれぐらいありますか? (2)その場合、●●県(薬局経営者が薬局をつくりたい場所)を担当されたことはありますか? |
(1)については、薬局の担当経験がある行政書士を頼るほうがよいと思います。(2)については、都道府県によって届け出の書類やルールが異なるケースが多いため、こちらも経験がある行政書士のほうが、手続きはスムーズになると思います。
ー薬局経営者は、実際にはどうやって行政書士を探しているのですか?
ホームページなどから直接お問い合わせをいただくケースが8割以上でしょうか。担当の税理士さんに行政書士を紹介してもらう、というケースもありますが、多くの方は、はじめて行政書士に相談するという方々です。ぜひ迷ったら気軽にお問い合わせいただければうれしいですね。
ーホームページから問い合わせされる薬局経営者からは、どんな相談を受けることが多いですか?
最近は「訪問調剤をやりたい」という方からのご相談が多いですね。また、かつては門前に薬局を構える方が圧倒的に多かったですが、ここ数年は介護施設の近くに開業・開設するなど、門前薬局ではない勝ち筋を探している薬局経営者も増えている印象があります。また2代目経営者から事業承継の相談や、M&Aについての相談も増えてきました。
行政書士への相談費用はどれぐらい?
ーずばり、行政書士に相談すると、どのぐらいの費用がかかるのでしょうか。
基本的には「ベース金額+出張費(保健所に通うときの交通費など)」がかかる費用になります。相談いただく際は、ぜひ現状の予算感をお伝えいただければ、それに合わせたお見積りを作成します。行政書士のサポートは「経営者自身で行うことも可能」ではありますので、費用感の捉え方はそれぞれのお考えがあるかと思いますが、我々がサポートさせていただくことによって生まれた時間こそが、忙しい開局時の何よりのサポートになればと思っています。
ほんとうにあった「薬局開業・開設の怖い話」
ーこれまで山田さんが担当された薬局開業・開設案件のなかで「もっと早くに相談してもらえれば……」と感じたケースはありますか?
ありますね(笑)。先にも少しお話しましたが、相談をいただいたタイミングですでに建物が完成しているが、申請はまったくの手つかず……というケースがありました。建物が完成していると、申請がむずかしい仕様になっていた場合もリカバリが難しいので、ぜひ図面ができたタイミングで相談いただけるとうれしいです。施設基準は、取得できる調剤報酬の点数にも直結しているため、慎重に確認することをおすすめします!
ー申請後、保健所からの指摘が入りやすい「あるあるポイント」はありますか?
たとえば医薬分業の観点から「医療機関と薬局が近い場所にありすぎてはいけない」という指摘が多くあります。また、「調剤室に患者さんが入っていかないように配慮して設計すべし」というフィードバックもありますね。
まとめ。行政書士が支援できること。
ー最後に、行政書士として新規開業・開設を考えている薬局経営者にメッセージをお願いします。
薬局の新規開業・開設を行う上で、行政への手続きは「最低限やらなければならないこと」だと考えています。でも、だからこそ時間をかけ過ぎるものではないと思います。あたらしい薬局をつくる、と熱意に溢れた経営者の皆さまには、とにかく考えることや意思決定することがたくさんあります。薬局経営のよいスタートダッシュを切るために、我々のような行政書士をぜひ頼っていただければうれしいなと思います。(了)