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私はこう書いた「トレーシングレポートの1枚目」。業務効率化のその先へ~MusuViva!でつながり進化する薬剤師

2022年2月に『Musubi』を導入した府中つばき薬局(広島県府中町)では、カケハシのプロダクトユーザー限定のコミュニティ『MusuViva!』のイベント参加をきっかけに、服薬情報提供書(トレーシングレポート)の作成を始めました。トレーシングレポートを書き始めるまでの障壁をどのように一つ一つクリアし、実践を続けているのでしょうか。イベントに参加した林雄志先生に、トレーシングレポートの書き方のコツと併せてお話を伺いました。

薬局について

  • 内科の門前薬局
  • 処方箋枚数は1日約30枚
  • 法人は2店舗を経営。府中つばき薬局は薬剤師3人体制

『MusuViva!』について知りたい方は、ぜひ以下も併せてご覧ください。

  サービス紹介 | 株式会社カケハシ - 日本の医療体験を、しなやかに。 株式会社カケハシが手がけるサービス、Musubi、Pocket Musubi、Musubi Insight、Musubi AI在庫管理、Pharmarket、MusuViva! をご紹介します。 https://www.kakehashi.life/service


目次[非表示]

  1. 1.紙薬歴からのMusubi導入は「これからの薬局経営を見据えて」
  2. 2.「このままではダメだ」。MusuViva!への参加と変化
  3. 3.よくある悩み4選。トレーシングレポートの1枚目までの道
    1. 3.1.(1)突然トレーシングレポートが届いたら、門前の医師はどう思うだろうか?
    2. 3.2.(2)何について、どのように書けばいい?
    3. 3.3.(3)患者さんの同意を取るには何と言えばいい?
    4. 3.4.(4)取り組みを局内で広めたい。自分以外の薬剤師にも書いてもらうには?
  4. 4.地域に密着した薬局として。薬と健康に関して責任を持つ薬剤師として。
  5. 5.トレーシングレポートは「医師の先生へのお手紙」。MusuViva!が生んだ薬剤師たちの縁

紙薬歴からのMusubi導入は「これからの薬局経営を見据えて」

林さん:

私たちの薬局がある広島県府中町は周囲を県庁所在地の広島市に囲まれ、宅地造成が進む、いわゆる「ベッドタウン」と言われる地域です。少し大きい通りから中に入った、昔ながらの住宅街の一角に立地しています。地域にお住まいの方々とのつながりが強く、地元で収穫した野菜を「持ってきたよ」なんて言ってお越しになる方もおられるくらいです。

林さん:

もともとチェーン薬局で勤務をしていた私が、ご縁がありこの法人で働き始めたのは2018年のことです。真っ先に薬局の課題として感じたのはIT環境の整備でした。紙薬歴だったので「探す、打ち込む、納める」と3回の工程があり、本当に注力すべき対人業務以外に多くの時間がかかっていました。

IT環境整備の手段として電子薬歴は必須と思っていた時、自治体の補助金制度が使えると知り、2メーカーを比較し『Musubi』に決めました。これからの薬局経営を見据えて『Musubi』を提案してくれたことにとても納得して。なんと言えばいいのか、「自分もその流れに乗っかろう」と決めました。

紙薬歴からの移行だったので、これまで蓄積してきた情報をデータ化する作業はもちろん大変でした。ただ、導入してみると、それまでの「探す、打ち込む、納める」の作業がなくなり、普段の業務が楽になったという喜びが大きかったことを覚えています。SOAP形式の記載、10項目の確認もスムーズにできることで、薬歴の厚みが増しました。


「このままではダメだ」。MusuViva!への参加と変化

林さん:

『Musubi』の導入で業務効率化ができた後も、薬局経営に関する情報収集の必要性を感じていました。カケハシのオンラインセミナーにはよく参加しており、『MusuViva!』の存在も知っていました。薬局チェーンで管理薬剤師をしていた時は組織が大きく、そこにいれば情報が入ってくる感覚がありました。小規模な薬局へと転職すると、さまざまな情報を自ら収集しにいかなければならないと気付いたためです。

一方その頃、法人内の別店舗と兼務することになりました。情報収集を生かして、薬局経営を変えていきたいと思いつつ、忙しさを理由に動けない日々が続いていました。

そんな中『MusuViva!』トレーシングレポートチャレンジの企画「薬局改善4週間チャレンジ 服薬情報提供書件数をupしよう」を知りました。「このままでいてはダメだ」という思いを抱いていたこともあり、勢いで「参加」のボタンを押しました。

イベントではユーザーの薬剤師の先生方と共に、4回のワークショップを重ねました。1回目にオンラインで全員集合した時、全国各地の個性的な、仕事に対するぶれない軸を持った薬剤師の面々に驚きました。しかし、そんな先生方でも、自分と近しい悩みを持ってきたと気付けましたし、議論を重ねるうちに「トレーシングレポートになかなか取り組めない」という状態からどのように取り組みを始めたらいいかまで、しっかりとつかめました。

よくある悩み4選。トレーシングレポートの1枚目までの道

林さん:

トレーシングレポートを書き始める上での悩みは、大きく分けると以下の4つでした。


(1)突然トレーシングレポートが届いたら、門前の医師はどう思うだろうか?

(2)何について、どのように書けばいい?

(3)患者さんの同意を取るには何と言えばいい?

(4)取り組みを局内で広めたい。自分以外の薬剤師にもトレーシングレポートを書いてもらうには?

(1)突然トレーシングレポートが届いたら、門前の医師はどう思うだろうか?

元々、処方医の先生との関係性は良好でしたが、それでも「突然、今までなかった書類が届くようになったら受付の方も戸惑うのではないか」「ちゃんと情報が届くのか」と心配になりました。

『MusuViva!』に参加していた他の先生からのアドバイスを参考に、門前の処方医を訪問しました。トレーシングレポートの書式を持参して「このような書式でお送りします」と事前にお伝えしたところ、処方医はご快諾、事務の方にもご理解いただけています。

(2)何について、どのように書けばいい?

要点を最初に書くように心がけています。同時に、長すぎず、短すぎず……という具合に「適切な長さ」であるように気をつけています。これまでは、こんなことで書いてもいいのか、例えば「残薬のことでわざわざトレーシングレポートを書くのだろうか」と思うと、手が止まっていました。しかし、『MusuViva!』で「実際に書いている」という体験談を共有いただき、自信が持てました

(3)患者さんの同意を取るには何と言えばいい?

「普段とは違う声かけをしたら、患者さんはどう感じるだろう」。この点は私も悩みました。患者さんに何か、抵抗感を抱かせてしまったら……という考えも頭をよぎりました。

そこで、服薬指導の流れで「病院の先生にお手紙を書いておきますね」という切り出し方をしてみたところ、患者さんの承諾を得ることができました。MusuViva!のイベントに参加した他の先生のアドバイスの中でも、まさにそのまま使わせていただいた言葉です。

(4)取り組みを局内で広めたい。自分以外の薬剤師にも書いてもらうには?

トレーシングレポートは点数もとれるし、医療機関との連携に必要な業務であることは理解できていても、個々人の薬剤師によっては、それを行う労力や考え方の違いで苦戦することもあります。

「自分自身が書けるようになったので、他の薬剤師にもトレーシングレポートを書いていただきたい」と思った私も、どんな形で伝えるべきかはいったん立ち止まって検討しました。特に私の店舗は小規模で、他の薬剤師の先生と業務時間の空き時間が重なることが少なくて。たまたま同じ時間帯に他の先生と業務に入った時、パソコン上でどのように記載しているか、実際のオペレーションまで含めて伝えてみました

とはいえ、伝えた後も「先生はどのように受け止めただろうか」と心配になったのですが、後日、「トレ―シングレポートを書きたいのだけど、どうやって入力をしたらいいのか」と聞かれたのです。詳しく聞くと「むくみの症状がある患者に対して、むくみの副作用がある薬が増量になっている。この症例について、医師に背景を伺いたい」ということでした。

この症例について報告したところ、医師の考え方が詳しく記載されたお返事をいただくことができました。その内容を踏まえると、実際に書いた薬剤師も私も、処方の判断に非常に納得しました。地域における医療連携の一つの形を感じたエピソードでもあります。

トレーシングレポートのファイル


地域に密着した薬局として。薬と健康に関して責任を持つ薬剤師として。

林さん:

自分だけではなく、他の先生にもトレーシングレポートを書いていただけたことは自信にもつながり、今後の薬局経営についてもさらに深く考えるようになりました。

正直な話、患者さんが利便性に基づいて薬局を選ぶ・選ばない、と言われると、大規模でコマーシャル力がある大企業に流れていく可能性はあります。ただ、地域に密着した薬局として、ここで関わってくださる人たちの健康を守りたい、関わる人の薬と健康に関して責任を持ちたい。だから薬局も変わっていく必要がある、と思っています。


トレーシングレポートは「医師の先生へのお手紙」。MusuViva!が生んだ薬剤師たちの縁

『MusuViva!』の企画「薬局改善4週間チャレンジ 服薬情報提供書件数をupしよう」に参加したおひとりで、ご自身の取り組みを踏まえ林さんにトレーシングレポートの書き方をアドバイスをした、わかば薬局大津店(神奈川県)の管理薬剤師、北代玲子さんにもお話を伺いました。

北代さん:

トレーシングレポートは病院の医師への「お手紙」だと思っています。薬剤師がやっていることを形として残し、医師に伝える。患者さんのために薬剤師ができる手段の一つが、トレーシングレポートを書くことです。具体的には、不急ではあるものの、処方内容について医師の先生に伝えたいことがあった時は、患者さんに「お手紙を書いておきましょうか」とすかさず声をかけています。

元々在宅の業務に携わっていた時、医師の先生に対して、何かしら形に残して伝える重要性を感じてきました。例えば、残薬調整が必要な場面で「口頭で伝えるだけで本当にいいのだろうか」という疑問を抱いていたのです。トレーシングレポートでお伝えしてみると、その内容を踏まえて次回の処方を考えていただけましたし、ひいては業務効率化にもなりました。

今、トレーシングレポートを書く枚数は月5~6枚程度でしょうか。多い時は毎日書いたこともあって、私にとっては定常業務となっています。

患者さんや医師が私たち薬剤師に向ける目線は、トレーシングレポートなどの取り組みを通じて、明らかに変わってきていると感じます。実際、(症例について)トレーシングレポートを書いたことがある患者さんが「最近、病院の先生から薬の副作用がないか、何度も確認されるのよね」といった話をされるケースもあります。

一方、トレーシングレポートを書いたうえで、算定するかどうかは内容にもよりけりなのかとは思います。また、医師の反応は、病院の規模などによってはそれぞれ異なるかもしれません。ただ、薬剤師として医師の先生とコミュニケーションをとることを尻込みしてはいけない。「聞かぬは一生の恥」です。

遠く、広島の薬局に立つ林さんが「イベントをきっかけに、自分の薬局でも取り組みを始めた」とお話していることは、素直にうれしく感じています。『MusuViva!』は学会やセミナーなどの場とはまた異なる環境で悩みを共有し、薬剤師としての職能をみんなで上げていける場だと思います。このような機会を通じ、全国の薬剤師の先生が地域を越えて、みんなで一緒に進化していけたらいいですね。(了)

これまで実施した『MusuViva!』のイベントの様子は、カケハシ公式noteでもご紹介しております。ぜひご覧ください。

  Musubiユーザーの声|カケハシ公式note Musubiユーザーの声

サービスサイトでは『トレーシングレポート(服薬情報提供書) まるわかりBOOK』も無料ダウンロードいただけます。

  トレーシングレポート(服薬情報等提供書) まるわかりBOOK 2020年フォローアップの義務化から、トレーシングレポート(服薬情報提供書)に取り組む薬局も増えてきたかと思いますが、令和4年度の調剤報酬改定を経て、さらにその機運が高まっています。本稿では、トレーシングレポートの重要性が増している理由や書き方のコツ、トレーシングレポートに取り組む薬局の事例等について紹介します。 Musubi|電子薬歴は業務効率化だけではない時代。Musubiは薬局DXをトータルサポート


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