残薬解消率97.6%!? 糖尿病患者のアフターフォローで薬剤師が知っておきたいポイント|Musubiセミナーレポート
糖尿病患者の残薬解消のためには、丁寧な情報収集と、その情報を共有し多職種連携を行う必要があります。2021年夏に改正薬機法の第2弾が施行され、「地域連携薬局」の認定要件として月30件の情報提供も加わるなかで、薬剤師だからこそできる糖尿病患者さんへの残薬解消のアプローチと、アフターフォローの具体的な方法について解説します。 ※本記事は、2021年3月22日にカケハシ主催で実施されたウェブセミナー『糖尿病から考える地域連携薬局とアフターフォロー』において、東京薬科大学客員教授で、フローラ薬局 兼 恵比寿ファーマシー代表取締役の篠原久仁子先生の講演をもとに、株式会社カケハシが編集した内容になります。 |
この記事のポイント
【1】薬機法改正で義務化された服薬期間中のフォローの取り組みにおいて、糖尿病残薬解消に向けた取り組みは着手しやすい。篠原先生らの研究では、薬剤師介入後の糖尿病の残薬が「97.6%」解消したというデータもある 【2】地域連携薬局の基準である月平均30件の報告の実現には、IT化による効率化をすすめるなどして、対人業務時間の確保が必要 |
講師:篠原久二子 先生のご紹介
東京薬科大学客員教授、フローラ薬局 兼 恵比寿ファーマシー代表取締役。糖尿病薬物療法認定薬剤師として、糖尿病患者の療養支援と漢方・薬膳・ハーブの専門領域の相談販売に強みを持つフローラ薬局を茨城・恵比寿で経営しながら、講演活動も多数。2020年4月よりMusubiを導入し、業務の効率化を行い、対人業務の強化によって売上アップを実現。
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目次[非表示]
薬剤師の介入で、糖尿病の残薬状況は改善する
2021年夏に改正薬機法の第2弾が施行され、「地域連携薬局」の認定要件として月30件の情報提供が求められるようになり、薬局からの情報提供がより重要度を増してきます。
情報提供のなかでも、糖尿病患者さんの残薬改善は、薬剤師の介入によって効果があげやすいと考えています。私が経営する薬局のひとつ「恵比寿ファーマシー」では、日々3件程度の情報提供をすでに行っています。
また、『日本くすりと糖尿病学会』で私が発表した研究ですが、糖尿病薬の残薬状況のうち97.6%が薬剤師の介入後に「改善した」というデータを得ているのです。
今回は、糖尿病薬の残薬解消のために、問題抽出から情報提供のためのアウトプットの作り方までを紹介いたします。
【ケーススタディ:Q1】 57歳男性の糖尿病患者さん(想定)、初来局の場合
57歳 男性が以下の処方箋を持参して、自宅に近いA薬局にはじめて来局しました。 RP) 1)アマリール錠 1mg 1錠 1日1回 朝食前服用 30日分 2)メトグルコ錠(250mg)6錠 1日回 朝食後 1回2錠服用 30日分 3)ジャヌビア錠(50mg)1錠 1日1回 朝食後服用 30日分 Q1:あなたは、どのような情報をどのように収集し、服薬指導と服薬後のフォローアップを行いますか? |
継続的フォローアップのために、薬剤師が確認すべきこと
【1】ハイリスク薬を服用しているかを確認する
【2】薬局での糖尿病薬のハイリスク薬における服薬管理方法を確認する
・患者さんに対する処方内容の確認(薬剤名・用法・用量など)
・患者さんのアドヒアランスの確認(飲み忘れ時、Sick Dayの対応含む)
・副作用モニタリングおよび重篤な副作用発生時の対処法の教育
・効果の確認。可能な場合は、検査値(HbA1cや血糖値)のモニター
・一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認
・注射手技等の確認
【3】「糖尿病患者 継続管理シート」(くすりと糖尿病学会のてびき)にしたがって、基本データを集める
糖尿病患者 継続管理シートのダウンロードはこちらから|日本くすりと糖尿病学会
【4】「退院後薬剤管理サマリー」や「糖尿病連携手帳」など、患者さんの病態・検査値などが記載された情報を持参しているかを確認し、処方された薬剤と照会し、患者さんへの状況の理解を深める
【5】可能な限り情報を集めたうえで、残薬がないかを丁寧にヒアリングをする。残薬があった場合は、なぜ残っているのかを責めずに、ゆっくりと傾聴する
*ポイント |
患者さんとの会話例 ~情報を集め、残薬の有無を丁寧に確認する~
薬剤師:「お薬を安全に飲んでいただくために、確認させていただいてよろしいでしょうか?」
患者:「はい」
薬剤師:「糖尿病薬が処方されていますが、今回はどうされましたか?」
患者:「2年前から職場の健診で引っかかっていましたが、そのまま放置していました。しかし、軽い脳梗塞を起こして、入院しました。自宅から車で40分の病院で、入院中はなかなか血糖値が下がらず、退院後は自宅近くにある糖尿病専門医のいる市立病院を紹介されました。受診後、地域連携マップを見て、通院していた市立病院の近くに糖尿病薬物療法認定薬剤師がいると知り、自宅に近いかかりつけとして、A薬局に来ました」
薬剤師:「ありがとうございます。では、お薬の影響や飲み合わせをチェックするために、お薬手帳と糖尿病連携手帳をお持ちでしたら、確認させていただけますか?」
患者:「ええ、手帳は持っています。薬剤管理サマリも手帳に貼っています」
薬剤師:「ありがとうございます」
(ここで残薬を確認するための質問をする)
薬剤師:「手帳を拝見すると、今までもこちらのお薬を服用していますが、災害時の予備以外のお薬の余りなどは、お手元にありますか?」
患者:「実は、今度の新しい医師には伝えていないが、食前のアマリールは28錠、1日3回服用するメトグルコは680錠余っています」
薬剤師:「お薬が余った理由に、心当たりはありますか?(残薬の理由をヒアリングする)」
患者:「アマリールは食前なので、飲み忘れてしまって、食後に飲むこともあります。脳梗塞の後遺症の麻痺もあり、薬が小さくて、つまみにくくて落としてしまうこともあります。メトグルコは、最近下痢気味もあってか、副作用が心配になってしまい、最初の数錠以外は飲めていません。ジャヌビアは、飲み忘れがあまりありません」
【ケーススタディ:Q2】患者さんの情報から、どのように職種に服薬情報提供を行う?
57歳の男性患者さんとインタビューを行った結果、残薬があることと、その理由が明らかとなり、服薬中の行動に問題を発見しました。 さて、薬剤師のあなたは多職種とどのように連携し、服薬情報提供を行いますか? 情報提供アセスメントシートをつかって、検討しましょう。 |
SOAPを意識し、情報共有を行おう
【1】残薬の理由を明確にし、アフターフォローするために情報を整理する
【2】整理した情報を糖尿病患者 継続管理シートに記載し、FAX等で院内薬局に提供する
【3】多職種連携をする際には、SOAP方式を意識し、情報共有を行う
O)メトホルミン約160日、HbA1c7.7介入後→7.1%→7.2%→7.1% A)残薬あり、コンプライアンス不良 P)解決策: CP(1)医療機関に服薬状況報告。医師・看護師と検討。 EP(2)服薬意義指導、副作用継続で軽減、飲み忘れ時の服用OK OP(3)処方日数1日分で調整・継続。腹部症状ー改善、残薬現象。 |
薬剤師による継続的な情報収集の結果
今回の57歳の患者Aのケースでは、薬剤師による継続的な情報収集を来局時に重ねた結果、処方内容がまったく変わらないにもかかららず、残薬量が減少し、HbA1cの数値も改善が見られました。
情報提供を効率化するために、Musubiを活用
患者さんへの継続的なアフターフォローや、丁寧なヒアリングを重ねるためには、業務の効率化による時間捻出や、情報提供のフローを整理する必要があります。フローラ薬局では、2020年4月より補助金制度を利用し、自動釣銭機とMusubi2台を導入しました。
Musubiを活用することで、検査値は「薬歴の情報欄」からコピーしてラクに入力ができ、服薬情報提供書の作成もスムーズに行えます。
※記述内容は著者が作成したサンプルです
また、患者さんにヒアリングすると同時に画面をタッチしながら、指導記録をつくることができます。薬剤師がデータに基づき自信をもって指導することで、アドヒアランスも向上します。また、医師からのタスクシフティングにもつながり、多職種連携の効率も向上します。
まとめ:医療機関との情報連携のきっかけを、薬剤師から
薬剤師が問題を抽出し、医師や看護師に情報提供を行うことで、薬剤師の介入効果は期待できます。Musubiなどを使って業務を効率化すれば、1日1件の報告は可能になると思います。改正薬機法で求められている服薬期間中のフォローにも対応しながら、患者さんのアドヒアランスの向上をめざすことが、今後の薬局、薬剤師に求められるのではないでしょうか。(了)