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薬局の売上構成要素の基本的な考え方と患者数増について:第一回「処方箋単価と売上向上について」

調剤薬局における売上構成要素の基本的な考え方と患者数増(売上向上)について、全三回に分けてお届けします。

全三回連載記事の第一回です。
・第一回:処方箋単価と売上向上について
・第二回:coming soon...
・第三回:coming soon...


目次[非表示]

  1. 1.なぜ売上の因数分解が必要なのか?
  2. 2.具体的に保険調剤事業の売上を分解する
  3. 3.処方箋単価を分解する
  4. 4.処方箋単価=調剤報酬獲得最適化による売上向上の限界

保険調剤薬局事業の売上を因数分解する

まずは経営上の基本である「売上」を分解していきます。ですが、その前になぜ因数分解が必要なのか考えてみましょう。

なぜ売上の因数分解が必要なのか?

売上を因数分解できると、「問題解決が容易になる」という強力なメリットがあります。

例えば、自社の売上が減少しているという声を多くの薬局の方からお聞きします。その理由は、コロナによって患者さんが医療機関に来なくなったことを原因と答える方が多いです。おそらく間違いではないのですが、来なくなった患者さんたちの中身を把握できているでしょうか。もしかすると、異なる要素があるかもしれません。

要素を分解することで、より具体的な問題把握そして打ち手に直結して物事を進めることができます。そして、分解をした要素を数値化し、常に把握できるようになると大きなメリットが生まれます。

※Musubiの患者関係性分析画面(患者増減構造を見える化し、運営状況をカンタンに把握)

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事業計画・戦略の策定や、店舗ごとの目標設定への活用、ある数値を向上させるための打ち手の効果測定、といったメリットが上げられます。

これらは事業運営において常に付きまとう不確実性に対して、柔軟に対応するための大きなメリットだと言えるでしょう。

一般的な企業運営において、売上を因数分解をした数値はKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の主要な候補として採用されています。

そして、経営陣、マネージャー層、現場層のそれぞれの階層において、日単位、週単位、月単位等の頻度でKPIのモニタリングを実施し、数値が好調であればその要因を把握し全社に展開、不調であればその要因を把握し即座に改善行動に移すなど、逐次活動を評価していくことで不確実性に対処しています。

具体的に保険調剤事業の売上を分解する

調剤薬局 売上  Musubi

医薬品小売業である薬局も一般的な小売業同様に(延べ)客数×単価で表現することができます。

ここで言う延べ客数は処方箋枚数です。単価は処方箋単価ということになります。

ここまでは多くの薬局経営者の方が日々把握されている数値かと思います。

処方箋単価を分解する

更に因数分解を進めていきましょう。次は処方箋単価を分解します。

調剤薬局 処方箋枚数 処方箋単価 薬学管理料

保険調剤事業においては、処方箋単価は調剤報酬分類で整理することができると思います。

大分類としては、薬学管理料、調剤技術料、薬剤料、特定保険医療材料があります。

売上向上において重要なポイントとなるのは、分解した要素が「調剤薬局の努力によって売上向上側にコントロールできるのか?」という観点です。

例えば、薬学管理料は薬剤師の行動や行為で算定可否が決まります。これはコントロール可能な領域です。

他方、薬剤料を考えてみます。薬剤料は医師が記載する処方箋でほぼ決まっています。疑義照会による変更などの要素はありえますが、多くの場合は減薬や規格変更といった対応をすることになります。売上を下げる方向にはコントロールが効いてたとしても、向上側へのコントロールは一般には難しいと考えられます(医学倫理観点でも売上向上のためだけに治療薬を変えるというのは問題があります)。これは基本的に調剤薬局でコントロールできない要素だと考えられます。同様に調剤料も処方に依存して決まってくるので、算定しない自由はあるかもしれませんが、基本的には全てもれなく算定するという前提に立てば、売上向上に向けたコントロール余地はありません。

このように、調剤報酬要素のうちコントロール可能な要素は約半分となりますので、処方箋単価向上の観点においては、「調剤基本料」、「薬学管理料」の各要素における算定状況が重要ということになります。

ここは経営的に注視してモニタリングを実施する要素と言えます。

処方箋単価=調剤報酬獲得最適化による売上向上の限界

ここまでは、多くの調剤薬局の皆様が注力されているので、ある種「釈迦に説法」を説いていたかと思います。そこで、少し視点を変えて調剤報酬を捉えてみたいと思います。

わが国では、少子高齢化、GDPの伸び悩みなどのマクロ要因も相まって、国家財政における社会保障費率の増大が社会問題化しています。社会保障費に含まれる調剤医療費も当然厳しい目を向けられている状況ですので、患者数ひいては調剤機会の増加こそあれども、調剤医療費の総額観点では維持もしくは抑制方向に向かい続けることは間違いないでしょう。調剤機会が増加しても調剤医療費総額が変わらないということは、確実に「単価が下がる」ということになります。我が国の国民皆保険制度においては、二年に一度の報酬改定を通じて、医療費のコントロールが発生していることを踏まえ下記の図をご覧いただきたいと思います。

調剤報酬 改定 現象 薬局売上

この図は、「処方箋枚数や処方薬の品目数が変動しない」という仮定をした場合の、売上額をイメージした図です。

調剤報酬制度を鑑みると当然と言えば当然なのですが、保険調剤事業における処方箋単価の論点には「上限値」が存在します。

即ち、あるタイミングで算定可能な調剤報酬を全て取得できる状態が実現されると、もうそれ以上売上を上げる余地が無くなります。さらに調剤報酬改定の度に単価が下がることを前提とすれば、長期的には処方箋単価論点だけ突き詰めても売り上げは下がり続けるということを意味することになります。

ですので、売上向上の観点においては、調剤報酬のみに囚われることなく、次回ご紹介する「処方箋枚数の因数分解」視点も踏まえて検討していく必要があると思います。

それでは今回はここまでとなります。最後までご覧いただき、ありがとうございました!