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5分でつかむ!クオリティ・インディケーター(QI) 薬局の質を見える化し、業務の改善に役立てる新指標


目次

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  1. 1.「薬局の質」とは?
  2. 2.QIの算出方法
  3. 3.QIはどのように活用できる?
  4. 4.令和6年度厚労科研の研究テーマにも「対人業務の評価指標の開発」
  5. 5.QIの今後


対物業務から対人業務へ、薬剤師の仕事も大きな変化が求められています。しかし、「そもそも改善の仕方も、変わった度合いも、はっきりわからない」「業務の内容は確かに変わっているが、やり方はこれで合っているんだろうか?」ともやもやしている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、そんな薬局業務の質評価に役立つ「クオリティ・インディケーター(QI)」についてご紹介します。

この記事を読むためにかかる時間:5分

「薬局の質」とは?

医師が提供するメディカルケア、看護師が提供するナーシングケアがあるように、薬剤師が提供する「ファーマシューティカルケア」という概念があります。

米国薬剤師会の定義によると、ファーマシューティカルケアは、「患者のQOLを改善するという成果が目的であり、そのために責任をもって薬に関するケアを直接患者に提供すること」¹ とされています。

つまり、患者さんのQOL向上に寄与することが薬剤師の業務の本質であり、服薬指導やフォローアップなどを通じてそのような関わり方が実現できてこそ、質の高い業務がなされているとも言えます。

とはいえ、あるケアが患者のQOLの改善につながったかどうか、通常の業務の中で実感するのは難しいことです。

例えば、薬局を利用している糖尿病の患者さんの血糖値が改善したとしても、「この血糖値の改善は薬局薬剤師の介入のおかげだ」とは言い切れません。担当医師から生活習慣に関する指導があったかもしれませんし、患者さんが引越しをして、毎日自宅から駅まで長い時間歩くようになったのかもしれません。

薬剤師のケアを評価するためには、検査値などの結果だけではなく、適切なケアを必要とする患者に実施したかどうかというプロセスの部分に着目して、ケアの質を間接的に評価することが大切です。
この考え方に基づいて算出されるのが、クオリティ・インディケーター(以下、QI)という指標です。

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 ¹ 公益社団法人日本薬学会HPより
https://www.pharm.or.jp/words/word00380.html


QIの算出方法

QIは、医療の質を評価する指標のひとつです。この指標は、特定の患者さんのうち、ガイドラインに沿った処置を施された患者さんの割合をスコア化したものです。

薬局のQI研究ではシドニー大学の藤田健二先生が日本でも有名ですが、オランダやオーストラリアなどでは、すでに薬局でQIが取り入れられ、質の評価がなされています。
国内では、すでにいくつかの病院が自主的にQIの測定を行い、Webサイトなどで公開しています。しかし、薬局での活用は進んでいません。

それには、QIの算出にかかる業務負担が関係しています。
これまで、QIの算出には、処方せんと薬歴を一件ずつ確認し、特定の薬が処方された患者さんの数や、 そのうち薬剤師による適切な服薬指導がなされた患者さんの数を手作業で抽出する……という非常に大変な作業が必要でした。そのため、店舗あたりの人員が限られる薬局においては、QIの導入がなかなか進まなかったのです。

しかしながら、こうした作業は薬歴の電子化によって大きく効率化できる可能性があります。
カケハシでもMusubiを活用したQIの算出に取り組んでおり、論文にて、薬局における服薬指導の評価指標とその算出プロセスを発表しました。²

今後、DXが進む薬局業界においては、薬局の負担を抑えながら、QIスコアと実際の治療効果の相関を計測していくことも容易になるでしょう。

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²  カケハシ、電子薬歴「Musubi」を活用した服薬指導の評価指標と算出プロセスを発表~国内初の研究として学会誌「くすりと糖尿病」に原著掲載~  https://www.kakehashi.life/news-post/20240710

QIはどのように活用できる?

QIスコアについては、以下のような活用方法が考えられます。

  1. 薬局内での活用
    1つの薬局の中でQIスコアを算出すれば、目標値を設定して進捗を管理できるようになります。また、継続的な計測の中で、数値が下がることがあれば、原因を探って解決策を考えることができますし、数値上昇した際の要因も明確にしやすくなります。
  2. 薬局間での活用 複数店舗でQIを算出する場合、自分たちの薬局が全体の中でどの位置にいるのか、相対化して把握することができます。QIスコアを競い合うためではなく、高いQIスコアを出している薬局の事例をほかの店舗で共有すれば、全体の質向上につなげることもできるのです。
  3. 地域間での活用 区や市などの単位でQIを算出した場合、その地域ごとの比較が可能になります。また、地域単位で改善したいQIの項目と目標値を設定して、それに向けた活動を実施することも可能です。

令和6年度厚労科研の研究テーマにも「対人業務の評価指標の開発」

「患者のための薬局ビジョン(*)」を掲げる厚生労働省も、対人業務の質を定量評価するための指標づくりに注力しています。


(*)患者のための薬局ビジョンとは?
患者本位の医薬分業の実現に向けて、かかりつけ薬剤師・薬局の今後の姿を明らかにするとともに、中長期的視野に立って、現在の薬局をかかりつけ薬局に再編する道筋を提示したもの。

令和6年度の厚労科研のテーマ一覧を見てみましょう。「薬剤師の対人業務の評価指標の開発に関する研究」³が掲げられています。

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³     研究代表者 横浜薬科大学 田口真穂先生 

 
引用元:厚生労働省 第135回厚生科学審議会科学技術部会 資料1-2 令和6年度研究事業実施方針(案) の概要​​​​​​

薬剤師の対人業務の重要性が高まる現在において、政策の実行を担う立場としても、定量指標をもって業務の質を見える化する必要性を感じていることが読み取れます。

近い将来、諸外国のようにQIを薬局の質評価に活用する世界が訪れるかもしれません。

QIの今後

国内におけるQIスコア活用はまだ発展途上です。現在のところ、QIの導入が報酬と結びつくようなインセンティブはありませんし、算出が義務化される予定もありません。

しかし、諸外国では薬局で既に運用されている事例も多数あり、国としても対人業務の評価指標の設定に注目しているということには、今後留意しておいた方がよいかもしれません。

また、皆さんが日ごろから取り組んでいる対人業務を定量評価できるようになれば、自分自身の業務を振り返り、相対化し、さらに質を高めていくための羅針盤となりえます。
そうして薬剤師同士で業務の質を高めあっていくことは、その先の患者さんの意識と行動を変えていくでしょう。

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