電子薬歴とは? 業務効率化ツールから薬局経営のパートナーへ進化する理由。
かつては業務効率化ツールだった電子薬歴もその役割が多様化してきています。2015年10月に厚生労働省により「患者のための薬局ビジョン」が示されました。薬剤師の業務は「対物」から「対人」へ、患者中心の業務においてその職能を発揮することを期待されています。一方で、薬局業務の基幹ともいえる薬歴には、近年の環境の変化により、さまざまな機能を備えた「あたらしい電子薬歴」が登場しています。時代の変化を見据え、薬剤師の業務に余裕と価値を届ける、これからの電子薬歴についてご紹介します。 |
目次[非表示]
- 1.電子薬歴とは(おさらい)
- 1.1.電子薬歴の普及率は約7割
- 1.2.医療データの電子化における、3つの注意点
- 2.電子薬歴導入すると、薬局経営者にこんなメリット
- 2.1.業務効率化によって、患者フォローの充実化
- 2.2.薬剤師技能のサポート
- 3.「これからの電子薬歴」に求められること
- 3.1.「患者フォロー」の実現をサポート
- 3.2.オンライン業務への対応をサポート
- 3.3.在宅業務への対応も
- 3.4.レセコン一体型とクラウド型
- 3.5.そもそもクラウド型とは
- 4.電子薬歴は、薬局経営のサポートツールへ
電子薬歴とは(おさらい)
電子薬歴は、薬剤服用歴(薬歴の正式名称)の管理を電子化することであり、一般的に調剤薬局での使用を想定されたシステムを指します。現在、電子薬歴システムは、「レセコン一体型」「クラウド型」などいくつかの種類に分かれています。
電子薬歴の普及率は約7割
厚生労働省による平成30年度「かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書」によると、薬歴管理の電子化を行っている薬局は、全体の73.9%を占めています。
医療データの電子化における、3つの注意点
法的に保存義務がある医療データの電子保存には、「真正性」「見読性」「保存性」3つの要件を確保することが求められており、「電子保存の3原則」と呼ばれています。それぞれの概要については、厚生労働省による「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」より引用します。
真正性
正当な人が記録し確認された情報に関し、第三者から見て作成の責任の所在が明確であり、かつ故意または過失による、虚偽入力、書き換え、 消去、及び混同が防止されていること。なお、混同とは、患者を取り違えた記録がなされたり、記録された情報間での関連性を誤ることを指します。
見読性
電子媒体に保存された内容を、権限保有者からの要求に基づき必要に応じて肉眼で見読可能な状態にできること。 ただし、見読性とは本来「診療に用いるのに支障が無いこと」と「監査等に差し支えないようにすること」であり、この両方を満たすことが、 ガイドラインで求められる実質的な見読性の確保につながります。
保存性
記録された情報が法令等で定められた期間に渡って真正性を保ち、見読可能にできる状態で保存されることを意味します。
電子薬歴導入すると、薬局経営者にこんなメリット
電子薬歴を導入することで薬局業務の効率化や負担軽減、技能のサポートを提供することができます。ここでは、具体的な内容の一部をご紹介します。
業務効率化によって、患者フォローの充実化
電子薬歴の導入は、窓口での受付から薬歴記載までのあらゆる場面での業務効率化が期待できます。業務の効率化によって生み出された時間で、患者さんへの対応にかける時間を充実させることが可能となります。
薬剤師技能のサポート
前述の厚生労働省の調査結果では、電子薬歴システムのメリットの上位には「患者の服薬結果を確認しやすいこと」「体重、血糖値などのデータを経時的に把握しやすいこと」が挙がっています。電子薬歴を使うことで患者情報をすばやく正確に把握できるようになることは、電子薬歴を使う多くの薬剤師がメリットとして実感していることでしょう。
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「これからの電子薬歴」に求められること
薬剤師の業務が対物から対人へと移行し、地域包括システムにおける薬剤師の役割には変化が求められる昨今、これからの電子薬歴は、薬局再編に対応した機能を持ち合わせたものへの需要の高まりが考えられます。ここでは、機能のアップデート頻度が高いとされるクラウド型の電子薬歴が備えている機能の一部についてご紹介します。
「患者フォロー」の実現をサポート
患者フォローを充実させるための機能が色々と備わっています。例えば、患者さんと一緒にタブレットPCを見ながら「見せる服薬指導」を行う機能があります。相対する患者さんと画面を通して情報を共有することで、信頼関係の構築にも役立ちます。信頼関係の構築により患者さんのアドヒアランスや満足度の向上が期待できます。また、タッチパネルにより薬歴記載作業の効率化が期待できます。短縮により新たに生まれた時間で、患者フォローを充実させることができます。
オンライン業務への対応をサポート
2020年9月改正薬機法により、オンライン服薬指導が解禁になりました。また、現在は新型コロナウイルス感染拡大による時限措置(0410対応)として、オンライン服薬指導も可能です。今後も、新型コロナウイルス感染再拡大など、「予期せぬ事象によりオンライン服薬指導での対応を求められること」が想定されます。遠隔服薬支援システム機能を備えた電子薬歴では、ビデオ通話で対面と遜色ない服薬指導が可能です。
在宅業務への対応も
地域包括ケアの一環として、在宅業務へ積極的に関与することが期待されています。クラウド型の電子薬歴であれば、セキュリティも担保されており、タブレットPCを訪問先へ持参できます。インターネットへ接続できる環境があれば、薬歴の閲覧や記載、計画書等を完了することができます。移動中の社内など、薬局に戻ることなく作成が可能であるため、担当薬剤師の業務負担は軽減されるでしょう。クラウド型の電子薬歴の活用により、在宅対応における業務の標準化を行うことができます。
薬剤師が求められる業務の変化により、電子薬歴システムを取り巻く環境も、時代の流れに即し、選択肢が増えています。
レセコン一体型とクラウド型
レセコン一体型とは、レセプトコンピュータ(レセコン)に薬歴を電子保存できます。このタイプの電子薬歴は一体型(オンプレミス型)ともよばれます。レセコン一体型のメリットは、処方変更や会計処理がスムーズに行え、薬局の規模によっては費用を抑えて導入できること。デメリットは、薬局内にサーバーを設置するため、スペースの確保と災害によるデータの紛失のリスクがあります。その他、基本的には電子薬歴を薬局外に持ち出し業務を行うことができません。
一方、レセコンと薬歴機能を分離し薬歴の電子データをクラウド上に保存したものがクラウド型と呼ばれる電子薬歴です。薬歴に特化したメーカーによって手がけられており、薬剤師の業務を効率化する機能が充実しています。クラウド型に関する特徴は以下に詳しくご紹介します。
そもそもクラウド型とは
レセコンと薬歴機能とを分離し、薬歴の電子データをクラウド上に保存したものがクラウド型と呼ばれる電子薬歴です。レセコン一体型はデスクトップ型PCであるのに対し、クラウド型はタブレットPCであるため持ち運ぶことが可能です。
薬歴の電子データをクラウド上で管理することでセキュリティが確保でき、安心して電子データを保存できます。クラウド上の情報は店舗間で一元管理できます。また、インターネットへの接続可能環境下であれば、在宅などの薬局外の訪問先でも電子薬歴の使用が可能です。デメリットとしては、相応の費用がかかることが挙げられます。
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電子薬歴は、薬局経営のサポートツールへ
電子薬歴を取り巻く状況は大きく変わってきており、電子薬歴に求められることも、電子薬歴がサポートできることも進化してきました。業務効率化や経営力向上を図るため、新たな機能が追加された電子薬歴の導入をする薬局も増えてきています。しかし、新規に導入する場合は、環境の変化に伴う不安をお持ちになる方もいらっしゃいます。そういった不安を払拭するため、各メーカーでは無料デモによる体験や導入後のサポート体制があります。ご興味をお持ちの場合は、まずは資料請求や個別相談をご利用ください。
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参考資料
(1)患者のための薬局ビジョン ~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~ 平成27年10月23日|厚生労働省
2021年11月12日
(2)「かかりつけ薬剤師・薬局機能調査・検討一式」かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書 別添1 アンケート調査結果 平成31年3月|厚生労働省
2021年11月12日
(3)医療情報システムを安全に管理するために「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」すべての医療機関等の管理者向け読本 平成21年3月|厚生労働省
2021年11月12日
(3)新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて|厚生労働省医政局医事 課 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課
2021年11月12日
(4)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等 の一部を改正する法律の一部の施行について(オンライン服薬指導関係)|厚 生 労 働 省 医 薬 ・ 生 活 衛 生 局 長
2021年11月12日