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医療DX時代、医師が薬剤師の服薬期間中フォローに期待していることとは【セミナーレポート】



株式会社カケハシは2022年12月、薬局薬剤師に向けた、医師登壇セミナー「これからの医師と薬剤師のかかわり方」を開催しました。医療DXの潮流の中、医療機関・医療従事者の多職種協働・地域連携が求められる昨今、医師は薬剤師から届く情報をどのように受け止め、生かしたいと考えているのでしょうか。岡山県で臨床整形外科を務めながら起業をしている大川裕輝医師をお招きし、具体的にお話を伺いました。


本レポートでは、当日の内容をダイジェストでお伝えします。

<登壇者>
大川 裕輝 先生(おおかわ・ゆうき)
株式会社CONNECT 代表取締役医師/水島中央病院 整形外科医
2017年に岡山大学医学部を卒業し、医師免許を取得。2019年初期研修を修了後、整形外科医として勤務中。医師として医療現場で働く中で感じた医療の課題を解決すべく、2021年8月に株式会社CONNECTを創業。

中尾 豊(なかお・ゆたか)
株式会社カケハシ 代表取締役社長

目次

目次[非表示]

  1. 1.「持続性のある医療」と「患者さんのため」を医療全体で考えたい
  2. 2.起業家医師は「医療情報のデータ化」に注目
  3. 3.「チーム医療」で医師が感じる「無能感」
  4. 4.医師に聞きたい!求められる処方提案
  5. 5.医師に聞きたい!フォローの価値

「持続性のある医療」と「患者さんのため」を医療全体で考えたい

中尾:
本日は、新しい角度のセミナーを企画しました。
これからの時代における、医師と薬剤師の連携の仕方について一緒に考えていきたいという企画です。

今日、一緒にご登壇いただく大川裕輝先生は、臨床でも活躍されている整形外科医であり、株式会社の代表取締役医師でもあります。

大川氏:
大川裕輝と申します。

まずは自分が整形外科医でありながら起業に至った背景を、簡単にお話しします。

中学生の時にスポーツドクターを志し、2017年3月に岡山大学を卒業し、研修医を終え、2021年の8月に医療現場で感じていた課題を解決すべく株式会社を設立しました。

超高齢社会の日本で患者数、医療費、共に増加する中、「患者さん主体の医療」と言いながらも、希望に沿いきれていない現実があります。医療者の働き方を変えるというのも、今後の医療にとって急務だと感じていて、このような「将来、日本の医療は持続できるのだろうか」という思いが、起業のきっかけでもあります。

その上で、チーム医療、つまり医療全体でどうやったら患者さんのためになるのかを日々考えています。医師は医学のプロですが、薬に関しては二の次になってしまうこともあります。実際、薬剤師の方々からの飲み合わせや配合変化という点などの話を聞かせていただける場面は、大変助かっております。

起業家医師は「医療情報のデータ化」に注目

大川
現在注目しているのは、医療情報のデータ化の流れです。

国家として一つのデータベースを作り、どの医療機関でも同じ患者の情報が見えるように、という流れ、また心拍、脈拍、その他様々なデータが取れるウェアラブルデバイスから取得するリアルワールドデータを医療での活用を模索する流れもあります。

ただし、データ化に対する障壁もあります。患者さん自身が主体的、能動的に情報を提供する環境整備の他、そもそも医療に対する知識が不足し、主体的な行動を促すことが難しい。これが課題だと思っています。

患者さんのドロップアウトも問題で、ここは特に薬を通した患者さんの状況把握がポイントになると思っています。例えば、薬局側から「最近どうですか」「お変わりないですか」という声かけ。その他、受診忘れに対するアプローチ。そういった取り組みで問題が解消できるのではないかと感じています。

今後、薬局では患者さんの状況をデータから読み取ることで、諸々のリスクを抱える患者さんにピンポイントにアプローチできる可能性があります。ドクターと患者の関係は、どうしても壁1枚隔てている関係となってしまう部分があります。そこに対して薬剤師さんが介入していただくことで、本音を聞き出すことができたり、相談者になってくださったりすると思います。そして、そこで得た情報を医師にいただければ、患者さんに対してよりよい医療体験が提供できるのではないでしょうか。

ドクターは、病院外では患者さんにアプローチできません。薬剤師さんの力を借り、お薬を通じて、情報を把握する。そのように連携すれば、いわば「薬から患者さんを把握できる」ということができると思っています。

「チーム医療」で医師が感じる「無能感」

中尾:
ディスカッションに入る前に質問させていただきたい点が一つあります。「医療全体でどうやったら患者さんのためになるのか」と考えるきっかけは何かあったのですか。

大川
僕自身、「チーム医療」におけるドクターに「無能感」を感じていて。例えば、整形外科ではレントゲンがなければ何もできないし、採血一つにしてもドクターはプロでなく、看護師さんに手伝ってもらう必要があります。

配合変化に関しても、知らないドクターが多いですし、ドクター1人では、患者さんに対して医療が提供できない。そういった無能感から、他職種の方々に医師をサポートしていただくというより、ドクターがチーム内に入っていかないと、医療は続かないだろうと感じています。

医師に聞きたい!求められる処方提案

中尾:
ここからは参加者からの質問などにお答えしていきます。

まず、薬剤師の先生方から処方提案などがあった際の医師の受け止めを、聞かせていただけますか。

大川さん:
正直なところ、薬の仕事は、ドクターの仕事を1個はみ出るところがありまして、薬剤師の先生方から提案いただけるのはとても価値があることと思っております。特に、ドクターの処方に寄り添った提案は、ありがたいですね。

例えば、リリカやサインバルタなど、最初飲み始めた時にちょっとくせが強い薬に関して、ドクターから説明しても患者さんにとっては理解が追いつかず、副作用などが理由でやめてしまうケースもあります

その他、整形外科では、アレンドロン酸、ボンビバなどを5年以上ずっと長期連用されているような人の中で、非定型骨折を起こしてしまう患者さんが、時たまいらっしゃるんですね。そういった時に、整形外科がいつから飲んでるか把握できないことが多くて。

あとは、トラマドールなど吐き気が出やすいような薬剤を処方されている患者さんに対し、ドクターがずっと吐き気止めを併用しているケースもあります。そういう時に薬剤師から「もうやめた方がいいですよ」とか、そういったアクティブな切り替えの提案があったら助かりますね。

医師に聞きたい!フォローの価値

中尾:
服薬期間中フォローが、医師側に対してどのように役立つのかという質問があります。

大川
具体的な例を挙げると、先ほど触れたリリカやサインバルタのようなちょっとくせのある処方に関してフォローしていただくことで、患者さんのドロップアウトを防ぐことができれば、これは一つの大きなメリットと思っています。

また、患者さんがドロップアウトしてしまった理由を把握いただくことも期待しています。理由がわかると、そこに対する改善も提案できるのではないでしょうか。ドロップアウトした理由が、忘れて受診していないのか、それともドクターと合わないから変えたいのか。そこを明確にするだけでも、患者さんの受診に対するモチベーションは大きく変わるでしょう。

例えば薬剤師の先生が「このドクター、ちょっと合わないんだ」ということを聞けたら、別の病院に行く提案もできますよね。病院を変えることで、患者さんの重症化が予防できる可能性につながると思います。

ですから、フォローを通じて、価値がある医療が提供できると思っています。

中尾:
では最後に大川先生から一言お願いします。

大川
医療課題に対して、答えがあるないに関わらず、議論することは有益と感じています。実際にどういった課題があって、どういう考えがあるかを共有することは、いわゆる「ブレーンスストーミング」でもあります。

このような意見交換は今後の医療にとって価値が大きいと思います。オフライン・オンライン問わず、皆さんでどんどん議論できたらと思います。

中尾:
ありがとうございました。(了)


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