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リフィル処方箋がもたらす薬局経営への影響は? 患者さんとの関係性がより重要に



令和4年診療報酬改定において、リフィル処方箋が導入されます。リフィル処方箋とは、症状が安定している患者さんについて、医師の処方により、医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できる(※1)というものです。

本記事では、2022年1月に中央社会保険医療協議会(以下、「中医協」)総会資料として公開された「個別改定項目について(以下、「短冊」)」から、リフィル処方箋の特徴を解説し、薬局経営への影響を考察します。


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目次[非表示]

  1. 1.リフィル処方箋とは
  2. 2.2回目以降の調剤を行うことが可能な期間は?
  3. 3.リフィル処方箋は、患者さんが薬局を選ぶきっかけになる?
  4. 4.改定後、リフィル処方箋は普及するのか
  5. 5.おわりに
  6. 6.その他の重要ポイントも抑えたい方は無料ダウンロード資料をご参照ください。

リフィル処方箋とは

令和4年度診療報酬改定では「地域包括ケアシステムの推進のための取組」の一つとして、リフィル処方箋が導入されます。リフィル処方箋が発行される対象患者は、医師の処方により、一定期間内に処方箋の反復利用が可能である患者とされています。

これには、薬剤師による服薬管理が前提となっており、医師と薬局薬剤師の協働という面があると同時に、慢性疾患患者を地域で見守っていくためのタスク・シェアリングという観点も伺えます。

処方箋の様式についても、リフィル処方箋として運用可能な様式に変更するとされています。中医協より示された処方箋様式の案(図参照)では、反復利用を可とするチェックボックスが付いています。総使用回数の上限は3回までとされ、調剤のたびに、調剤日に加え次回調剤予定日を保険薬局が記録する必要があります。

また、1回当たり投薬期間及び総投薬期間については、医師が、患者さんの病状等を踏まえ、個別に医学的に適切と判断した期間となります。

新たな処方箋様式(案)中央社会保険医療協議会「個別改定項目」より引用

なお、保険医療機関及び保険医療養担当規則において、投薬量に限度が定められている医薬品及び湿布薬については、リフィル処方箋による投薬を行うことはできません。

2回目以降の調剤を行うことが可能な期間は?

1回目の調剤を行うことが可能な期間については、通常の処方箋の場合と同様ですが、2回目以降の調剤は、短冊によると「原則として、前回の調剤日を起点とし、当該調剤に係る投薬期間を経過する日を次回調剤予定日とし、その前後7日以内とする」とされています。

次回調剤予定日と調剤可能日の関係を理解しておく必要があるでしょう。



コラム Part 1 分割調剤とは何が違う?
分割調剤とは、あらかじめ医師が指定した日数、量の範囲内で分割して患者に処方薬を提供する制度を指し、処方箋を反復するリフィルとは似て非なる制度です(※2)。

最大3枚の処方箋が発行される「医師の指示によって実施する分割調剤」では、2回目以降の調剤時に、医師への報告義務が発生します。

一方、リフィル処方箋は、医師の判断により1枚の処方箋にリフィル処方箋を可とするチェックボックス等が付くと考えられます。分割調剤とは異なり、医師への報告は義務ではありませんが、調剤した内容、患者の服薬状況等について必要に応じて処方医へ情報提供を行うこととされています。


分割調剤と比べ、リフィル処方箋は➀処方箋が3枚→1枚で患者さんにとってもわかりやすい②手順が簡易化されているといえるでしょう。

リフィル処方箋は、患者さんが薬局を選ぶきっかけになる?

短冊では、「薬剤師は、リフィル処方箋の交付を受けた患者に対して、継続的な薬学的管理指導のため、同一の保険薬局で調剤を受けるべきである旨を説明すること」と記されており、リフィル処方箋は同一薬局に持って行くことを前提とした制度設計になっています。

これを守ろうとすると、2回目以降の手間がより少なくなるように、自宅近辺の薬局の1回目からリフィル処方箋を持参する患者が増えるのではないでしょうか。リフィル処方箋は、患者さんが自宅からの近さや指導の手厚さなどにより、かかりつけ薬局を選んでいくという流れを推し進めると考えられます。

「医療機関に通う患者さんを門前で待ち構える」というこれまでの経営スタイルだけでなく、「かかりつけ薬局として通っていただく」という新しい経営スタイルの確立を要求している制度ともいえるでしょう。

ただし、短冊では「薬剤師は、リフィル処方箋の交付を受けた患者に対して、継続的な薬学的管理指導のため、同一の保険薬局で調剤を受けるべきである旨を説明すること」としています。あくまで患者さんに説明することが義務であり、同一薬局で2回目以降の調剤を行うことは義務ではありません。つまり、患者さんに常に選ばれ続ける努力が必要なのです。

立地だけではなく、フォローアップを強化するなどで患者さんとの関係性を高め、他薬局との差別化を行うことが、ますます必要になってくるでしょう。


コラム Part2  2回目の調剤日に患者さんが来なかったら?

「予定される時期に患者が来局しない場合は、電話等により調剤の状況を確認すること。」とされています。


電話以外の手段として、LINEなどのアプリで患者さんとつながっておき、服薬期間中のフォローアップにも活用できるとスムーズでしょう。薬剤師と患者さん双方に負担のかからない仕組みが、リフィル処方箋と付き合う上で大事な観点となりそうです。

改定後、リフィル処方箋は普及するのか

2022年4月から導入されるリフィル処方箋は、長年にわたる議論を経てようやく導入された、国にとってまさに肝入りの制度です。患者さんとしても、症状が安定していれば家の近くの薬局へ行くだけで受診の手間を減らせるという、利便性があります。薬局が患者さんの薬学管理をこまめに行い、残薬や重複投与・多剤併用等の問題を解決する。そんな国の大きな期待を大きく後押しする改定内容といえるでしょう。

これまでは、1処方につき投与期間が30日以上の投薬を行った場合には、所定点数の100分の40に相当する点数により算定することになっており、減算の対象でした。リフィル処方箋においては、この規定は適用除外とする改定が盛り込まれます。これも、リフィル処方箋の普及のための、医師側へのインセンティブとして企図されていると言えるでしょう。なお、1回の投与期間の上限などの詳細は2022年2月中に確定する予定です。

そんなリフィル処方箋は果たしてどれだけ普及するのでしょうか。医師側へのインセンティブが十分なのか、患者さんにっとての使い易さや安心は担保されているのかなど継続的に議論されるべき観点も残っていることでしょう。ただ、日本の保健医療財政の逼迫状況から考えて、待ったなしの状況です。リフィル処方箋への置き換えは、医療費は総額1,556億円(保険負担額で1,089億円)削減できるという試算もあります(※3)。リフィル処方箋を推し進めるための議論や政策は、今後も続いていくでしょう。

おわりに

リフィル処方箋の導入により、患者さんとの継続的な関係づくりがますます重要になってきます。

株式会社カケハシでは、

【1】薬剤師の業務負担を考慮しながら、
【2】患者さんとの関係性を高める取り組みを推進し、
【3】薬剤師の専門性を活かして患者さんの治療継続を支えていく

という3つの要素を同時に実現することが、これからの薬局経営では重要になると考えています。ICT技術とサービスで、将来を見据えた薬局経営のサポートができれば幸いです。

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※1:個別改定項目について. 第513回中央社会保険医療協議会総会資料.
※2:宍戸 真梨:薬局薬剤師に求められる役割の変遷と現在の議論..2019. レファレンス(The Reference)p.43-65
※4:前田, 菅野:リフィル処方制度導入がもたらす経済性の効果予測. 2020. 社会薬学39巻 1号 p.35-39

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