國本さん:
管理薬剤師である私にとっては、近年の「対物から対人へ」という流れや、フォローアップの義務化、調剤報酬の改定といった薬局業界の変化は喜ばしいことでした。清水社長は長年、薬局を地域のインフラとして位置づけたい思いがありながら、その難しさを口にしていましたから。「今までなかなか取り組めなかったことが、堂々とできるようになったぞ」と思ったくらいでした。
ただ、やるとなると何から始めたらよいものかという迷いもあって。『Musubi』の導入が決まったのは2020年の末くらいで、ちょうどそんな迷いがあった時期でした。私はICTツールが苦手だったので、はじめは「大丈夫かな」という不安もありましたが、Musubiのスタッフの皆さんとZoomをつないで丁寧に研修をしてくださって。中でも薬剤師資格を持ったMusubiスタッフの方が「楽しんでやっていきましょうね」と励ましてくださったことが本当に印象深かったです。
『Musubi』の分析機能を使うと、色んなことが目に見える形でわかるのです。患者リストという機能では、簡単な操作で「この患者さんが来ていません」と一目で分かって、とても驚きました。これまでは最近来局していない患者さんがいても「あの方最近来てないね」という薬局内の世間話で終わってしまいがちでしたから。
リストで「見える化」されたのだから、薬剤師の私は、もう一度つながりを作るための「武器」にするしかない。長年できなかったことが、この『Musubi』という武器によってできるようになったのだから、この変化を楽しもう。そう思えたのです。
患者リストを活用して電話やSMSで患者さんに連絡をしたところ、たくさんの「ありがとう」の言葉をいただきました。結果として、約50%の再来につながり、コストなどを踏まえると月間で約7万円の粗利に貢献しました。
國本さん:
『Pocket Musubi』のおかげで、家に帰った後の患者さんの変化に気づけたケースがあります。
私が管理薬剤師を務める広島市の薬局は、近隣医療機関に心療内科があります。てんかんの薬を服用した患者さんの皮膚に現れた症状を、アラートが検知してくれ、さらに患者さんも気になったのか、メッセージをくださりました。副作用の可能性があるため、すぐに患者さんをお電話でフォローし、医師にトレーシングレポートで報告もして、その結果、減量となりました。
とても珍しい症状だったので、患者さん自身もアラートがなければ薬が起因しているとは思いもよらなかったのではないのでしょうか。
原田さん:
私は大学を卒業してから病院薬剤師をしておりまして、2年ほど前にこの会社に転職し、現在は廿日市市の店舗の薬局長を務めています。『Pocket Musubi』を使ったやりとりは、次回来局時の服薬指導や残薬調整のご提案など、生かせる場面は多いと感じています。
例えば、糖尿病の薬を処方した患者さんに「食事が取れてない時にこの薬を飲むことはありますか」といった趣旨の質問が、自動で配信されます。来局時の時間ですべてを聞き取れないこともありますし、来局時には食欲があっても、その後の生活状況が変わることもありますよね。アラートをきっかけにして、患者さんの次回来局時の服薬指導の質問を変えることにもつながっています。
また、来局時に残薬についてお尋ねしても特に反応がなかった患者さんも、後日「残薬調整してほしい薬がありますか」という趣旨の質問がLINEで届くと、「残薬を調整したい」とメッセージをいただくケースがあります。薬剤師として、かゆいところに手が届いたような感じもしますね。
國本さん:
服薬期間中のフォローアップのためにつながる方法は、LINE、電話、SMSの中から患者さんに選んでいただきます。利便性や特徴を聞かれたらしっかり答えられるようにしていますが、どの方法だったとしても、「薬剤師とつながっていられる」と患者さんに感じていただけるのであれば、これは患者さんに「安心感を持っていただく」という薬局体験を提供できているんだな、と感じています。
原田さん:
そうですね。ただ、私の勤務する薬局では当初、患者さんへのフォローアップのご紹介に対して少し及び腰だったかなと思います。振り返ってみると、「フォローアップはすでに薬局・薬剤師の義務である」ということを堂々と説明できていない時は、患者さんにもその気持ちが伝わるのか、反応はそこまで良くなかったようで。そこで、國本さんのような他店舗の好事例から勉強すると、一気に患者さんに納得していただけるようになりました。
國本さん:
改めてになりますが、原田さんご自身も新しい環境に飛び込んで、慣れるまで大変だったのではないですか。
原田さん:
確かに、病院薬剤師として勤務していた時との違いはありますね。ただ、「地域の皆さんに深く関わる」ことが転職の理由だったので、その目的に近づく学びができるのは嬉しいです。
病院薬剤師として働いていたときも、難しい症例から学ぶ機会も多く、やりがいも感じていましたが、どうしても入院患者さんと接することが多くて。関係性が構築できても1ヶ月ほどで病院から離れていってしまう、ということがままありました。
一方、地域に密着した調剤薬局であれば、地域で暮らす方々の一生にしっかりとお付き合いできる可能性があります。私がやりたかった「地域医療に携わる」ということが、この法人であれば実現できると考えましたし、フォローアップはまさにその思いに直結する業務です。
國本さん:
今、『Musubi』を活用して患者さんとの関係を深めている状態って、例えるなら、四角い部屋を掃除しているような感じです。
『Musubi』の機能がぐるっとオートマチックで掃除して、私たち薬剤師は、四隅の掃除しきれない部分をしっかりと見て、個々に介入すべきか、フォローしていくかを判断するだけで、きれいな部屋に仕上がる。私たちが手作業ですべての患者さんに対して取り組もうとしてもなかなかできないことなので、なんてすごいシステムだ、とびっくりしています。
『Musubi』は次々と新しい機能が追加されていくのですが、私はその機能を活用して、患者さんを喜ばせられるのがうれしいのです。薬剤師をこんなにワクワクさせてくれる、夢と希望がつまった「宝箱」があったんだ、という感覚ですね。
原田さん:
『Musubi』によって、私たち薬剤師にも、薬局経営の視点が分かりやすくなったように感じています。清水社長がよく話題にする「ホスピタリティー」と、社員の頑張りを表す数値やデータ。これをつないでくれるのが『Musubi』ですね。
社内には店舗を超えた「社内研修チーム」があるのですが、私はその一員として『Musubi』の活用に取り組み、試行錯誤しています。
働く場所として、病院と調剤薬局との違いで大きく感じているのは、経営感覚を持つことの大切さです。率直に言うと、調剤薬局が地域でサービスを提供し続けるためには、とにかく生き残っていかなければならない。そのためには薬学的知見も、接客スキルも、店舗運営ノウハウも法人全体で共有して底上げしていきたいので、教育チームの一員としても頑張りたいです。
清水社長:
「患者さんがこのように変わった」「こんなことが嬉しい」という二人の言葉がとても印象的です。
「この地域の調剤薬局で働く」ことに対して職員が喜びを感じ、薬剤師力を上げていく。その力が、ひいては患者さんや地域のためになる。そんな思いで地元密着の薬局経営を続けていきたいですね。(了)
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