「短冊」が公開!これまでの議論はどうまとまった?5つのポイント解説|医療経営士タカヒラの薬局動向PICK UP(14)
2024年の調剤報酬改定に向けて、いよいよ短冊がでてきました。様々な方が内容を読み、色々なところで議論が始まっています。これまでの中医協での議論がどのように具体化されたのかに着目し、ポイントを紹介していきます。 |
解説する人:タカヒラ
医療経営士。MRで複数社を経験し、現在はKAKEHASHIでマーケティングを担当。猫と娘と関係省庁が出す資料(PDF)を夜な夜な読み込むのが好き。薬局経営者の方々の意思決定のお手伝いができるよう、日々精進しています。 |
1/26に短冊が出てきました。前回改定と同日であることから、やはりこの日がターゲットなのかなあと2年前に想いをはせつつ。今回のブログでは、調剤報酬改定に関するところ、そして病院や診療所のトピックについてまとめていきたいと思います。
まず調剤報酬改定部分については、5点についてみていきます。短冊に何が書かれているかだけでなく、その記載内容の背景議論も踏まえつつみていきたいと思います。
- 調剤基本料
- 地域支援体制加算
- かかりつけ薬剤師
- フォローアップ
- 在宅対応
そして、今回の改定では病院や診療所の先生方にも大きな影響がありそうです。その点についても見ていきたいと思います。
目次[非表示]
(1)調剤基本料について
こちらは過去のブログでもトピックにしておりました、調剤基本料2と特別調剤基本料の2点が注目でした。
今回の短冊では、1月における処方箋枚数が4000枚を越え、処方箋受付回数が多い上位の保険医療機関が7割を越える薬局さんにおいて、基本料2となることが記載されました。
出典:中医協令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
出典:中医協令和6年1月26日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197890.pdf
そして、注目されていた敷地内薬局への対応については、敷地内薬局の点数を上昇させるがグループ一律で点数を下げるような議論がありました。
出典:中医協令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
今回の短冊では、「一律引き下げの記載はない」ので、グループへの対応はないようです。
他方で、特別調剤基本料にAとBという区分を、施設基準の届出をするかしないかで分けることとなりました。届出をしているAでも、敷地内の医療機関へのものは、かかりつけ薬剤師指導料の特定薬剤管理指導加算2、吸入薬指導加算、服用薬剤調整支援料2、外来服薬支援料1並びに調剤後薬剤管理指導料が算定できなくなります。さらに届出をしないBですと、より一層厳しい条件となります。
出典:中医協令和6年1月26日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197890.pdf
(2)地域支援体制加算について
まずここの議論で注目されるのは、「厚生労働省と財務省の一致した指摘内容」です。ここでは地域支援体制加算を取得されている施設において、算定状況のバラつきが確認されました。
出典:中医協令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
さらに要件の追加や、他にも連携薬局や健康サポート薬局との要件整理も議論がありました(こちらは令和5年12月25日の議論からのつづきとなっています)。
出典:中医協令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
では、具体的にはどうなったのでしょうか。 図にまとめてみました。
出典:中医協令和6年1月26日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197890.pdfより カケハシ作図
地域支援体制加算1は、具体的な数値目標が設定されています。また、1や3では必須に「かかりつけ薬剤師の算定回数」が入り、3については「個人在宅」が必須となりました。
地域支援体制加算1や2は、厚生労働省のデータからも算定されているところが多いかと思いますので、十分に対策頂くことが大切と考えられます。
以上のようなテーマの施策の検討・実施状況を確認するとされています。
このことからも、この検討会から重要な示唆が出てくることは想像に難くないと言えます。
(3) かかりつけ薬剤師について
中医協ではその活動が高く評価されていたかかりつけ薬剤師は、今回どうなったでしょうか。
まずは過去の議論を振り返りたいと思います。
以下のデータが示すように、かかりつけ薬剤師指導料の算定をしている薬剤師さんの方が、あらゆる報告が多いことが確認されています。
出典:中医協令和6年1月26日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197890.pdf
そのようなかかりつけ薬剤師の活動が評価され、併算定できない加算について見直しをすることが議論されていましたが、今回の短冊ではどのようになったのでしょうか。
出典:中医協令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
注目すべきは、吸入指導加算の併算定が可能となるようです。そして新設される「調剤後薬剤管理指導料(旧:調剤後薬剤管理指導j加算)」も併算定が可能となります。
さらに、かかりつけ薬剤師指導料が算定しやすくなるように、薬局単位での対応が可能となるとのことです。
出典:中医協令和6年1月26日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197890.pdf
今回地域支援体制加算においても、かかりつけ薬剤師の算定回数が必須になるところもあり、重要性がましてくる改定と言えそうです。
(4)フォローアップについて
こちらは厚労科研からの報告もあり、中医協でも複数回の議論がなされ、とても注目されているところでした。
とくに具体的な議論となっていたのは、その対象となる疾患でした。もともとは、がんや糖尿病といった加算のあるものに加え、中医協では心不全と認知症についての議論がありました。
出典:中医協令和5年11月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172376.pdf
今回の短冊では、調剤後薬剤管理指導料が新設されたなかで、糖尿病とともに、心不全がその対象となることが確認されています。そして先ほどのかかりつけ薬剤師のところにも記載しましたが、こちらは併算定可能となるそうです。
出典:中医協令和6年1月26日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197890.pdf
さらにフォローアップという点では、以下のような整理・新設の加算もありますので、見ていきたいと思います。
麻薬管理指導加算については、フォローアップの方法が拡大します。電話以外の方法も可能となりますが、一斉送信メールのようなものは不可となるようです。
さらに、RMP対象の医薬品のフォローアップとして、特定薬剤管理指導加算3が新設されるとのことです。
以上のようにフォローアップにおいては、新設される項目を含み、対象疾患も広がることとなりそうです。
出典:中医協令和6年1月26日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197890.pdf
(5)在宅対応について
在宅関連もあらたな評価について、過去の中医協からも論点の多い内容だと言えます。例えば……
- 訪問回数が増えてくるケースにおいて、算定回数の上限が不足している
- 休日・夜間の対応について、薬学管理を評価できていない
- 在宅を行う前の準備について、評価がなされていない
多くのポイントがあるなか、短冊では以下のように評価がされることとなりそうです。ここではダイジェストでお伝えします。
- 在宅薬学総合加算が新設される
- 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の回数上限が8回となるよう議論がすすんでいる
- 夜間・休日・深夜の加算も新設される
- 在宅移行初期管理料の新設される
- 服薬管理指導料3の対象患者の拡大も見込まれている
出典:中医協令和6年1月26日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197890.pdf
以上のことから、在宅には手厚い動きがすすんでおり、地域支援体制加算の個人在宅回数ともあいまって、とても重要な局面とも言えそうです。
(+αなトピック)診療所における影響:特定疾患療養管理料
高血圧や脂質異常症・糖尿病にて、特定疾患療養管理料が算定されていましたが、今回見直しになるとのことです。
特定疾患療養管理料は、ある意味医療経営における利益の源泉のひとつとも言われており、その見直しは大きな影響があるものと考えられます。
今回、生活習慣病管理料の1と2において、上記疾患が対象となりますが、1の算定は検査料が包括となるなど、これまでとの違いがありそうです。
さらに注目されるのは、28日以上の処方とリフィル処方せん交付が可能であることを掲示することが条件として議論がされています。リフィル処方せんまわりの改定は、薬局・薬剤師の先生方にとっても影響のあるところであり、診療所の先生との協力関係はさらに必要なものと考えられます。
出典:中医協令和6年1月26日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197890.pdf
この他にも、病院においては「DPCの見直し」「新しい病棟区分」などが目白押しとなっており、その影響ははかり知れません。皆様のお近くの病院さまにもきっと大きな影響を及ぼすことと存じます。
引き続き、点数の開示まで内容をトレースして参りますので、引き続きよろしくお願いいたします(終)