薬局経営にデータの力を。元薬局薬剤師がMusubi Insightで目指す新たな薬局像
調剤薬局向けサービスMusubiのリニューアルと同時にリリースされた新サービス 「Musubi Insight」。薬局業務を“見える化”する、調剤薬局向けに特化したBI(Business Intelligence)ツールです。その開発経緯や狙いを、プロダクトオーナーの齋藤がお伝えします。 |
筆者プロフィール
齋藤 晋二(さいとう しんじ) 薬局業務“見える化”クラウド「Musubi Insight」プランナー/薬剤師 薬剤師として病院で勤務後、調剤薬局で管理薬剤師や多店舗支援などの業務に従事し、延べ22店舗の薬局業務を合計10年経験。もともと山梨在住であり、カケハシ参画後も山梨で生活及び農作業をしながらリモートワークで勤務。 |
薬局業務を“見える化”し、薬局内に根拠に基づくコミュニケーションを
初めまして。Musubi Insight のプロダクトオーナーを務めている齋藤です。
カケハシ社には薬剤師の経験者・有資格者が多数在籍していますが、私もその一人です。もともと薬剤師として病院で勤務後、調剤薬局で管理薬剤師や多店舗支援などの業務に従事し、延べ22店舗の薬局業務を合計10年経験してきました。
今回私たちがリリースした、薬局業務“見える化”クラウド「Musubi Insight」は、Musubiをご利用いただいている薬局を対象に、管理者層と現場の薬剤師が定量的な情報に基づいてコミュニケーションできるようにするためのサービスです。定量的にデータを見ることができるだけにとどまらず、あくまでも、そのデータをもとに管理者層と現場との間で建設的なコミュニケーションがなされることを目的として設計しています。
Musubi Insightでは、大きく分けて3種の指標を確認することができます。薬歴の記載に要している時間やMusubi上での指導文を使用している割合といった「薬歴業務系分析」、基本料や調剤料、薬剤料など処方箋の単価に関係する「収益系分析」、どれくらいの患者さんが継続して来局しているのかなど処方箋の枚数に関係する「患者関係性分析」の3つです。
処方が重くて忙しい、人手が足りない……果たしてそれは事実なのか?
薬局において、業務の見える化はどのくらい進んでいるのでしょうか。少なくとも、私が過去に所属していた薬局において、定量的なデータに基づく建設的なコミュニケーションがはかられたことはありませんでした。「処方が重いから忙しい」「人が足りない」といった声もよく耳にしました。もちろん本当に忙しく人手不足の店舗もありましたが、他の店舗と比較してそこまで忙しくないにも関わらず、そうした声があがっていたことも多々あったと記憶しています。
また、管理者層が現実とは乖離した目標設定を行なっているケースも少なくありませんでした。組織が一丸となって何を成し得たいのか? そのために、いま何をする必要があるのか? そもそもの前提が浸透しておらず、設定された目標自体が意味をなしていなかったり、そもそも目標設定がなされていない薬局もありました。
Musubi Insightの開発には、こうした私自身の経験や課題感も色濃く反映されています。そしてこの課題感は、多くの薬局関係者にとって共通のものだと確信しています。開発にあたり、200店舗以上の薬局・250人以上の管理者層の方にMusubi Insightのテスト版を使用していただきましたが、私以上に課題を感じていらっしゃる方々が多いことに、むしろ驚かされたほどです。
Musubi Insightがこだわる3つのポイント
見やすさ・使い勝手にこだわったデザイン
調剤薬局業界では、そもそも“数字を扱う”機会がそれほど多くない印象があります。また、他の業界と比較してPCを活用して業務を進めることが苦手だという方も決して少なくはないようです。
そのため、Musubi Insightでは数字をいかに見やすく、理解しやすく見せるかに徹底してこだわりました。単に数値を表示するだけであれば、もちろん既存のレセコンでも可能なものは多々あるかと思います。
しかし前述のとおり、Musubi Insightが目指しているのはデータ化することではなく、データに基づく建設的なコミュニケーションを生み出すこと。より直感的にデータを確認・把握しやすくするために、表形式だけではなく、グラフを多用したデザインとなっています。
既存BIツールと一線を画す手軽さ
既存のBIツールの場合、自身でデータを成型したり、運用開始前に仮説を構築し、とるべき指標を設定したりする必要があります。自由度が高ければ高いほど、それに比例してデータの集計・抽出作業の工数が大きくなってしまうのもまた事実です。この“とっつきにくさ”を解消することも、Musubi Insightが重視したポイントの一つです。
Musubi Insightは、導入時点ですでに指標がセットされています(薬歴業務分析系・収益分析系・患者関係性分析系の3種)。そのため、何ら特別な設定をすることなく、利用を開始するだけでOK。より手軽に数値を確認できると思います。
調剤薬局のリアルに寄り添う
前述のとおり、Musubi Insightがリリースに至るまで、200店舗以上の薬局と、250人以上の管理者層の方にテスト版をご利用いただいてきました。いただいた一つひとつの声を、サービスの提供方法や提供する指標の選定に活かしています。
Musubi Insightの効果的な活用法
Musubi Insightをどのようにご活用いただくかはあくまで使う方次第ですが、ここでは少しでも参考になればと、私たちが考えている理想の活用イメージをお伝えします。
現場の薬剤師
現場で勤務されている薬剤師の先生がたには、日々の業務の振り返りとして、毎日利用していただくことを想定しています。今の自分の業務状況がどうなっているのか、良い部分・悪い部分を認識することがまずはスタートだと考えています。
管理者層
薬局の管理者層の方には、自分が関わっている店舗の状況を、まず定量的に把握するためにご活用いただきたいです。その後、現場の薬剤師の先生とコミュニケーションをとっていただき、定量・定性両方の側面で店舗の現状を把握していただく。その上で、薬局・薬剤師が今後どうあるべきか、どうなっていきたいのかを考え、それをもとに改めて現場の先生がたとコミュニケーションをはかっていただけたらと思っています。
管理者・薬剤師が一体となって業務改善を
例えば、薬歴業務に時間がかかり長時間の残業が発生している場合、薬歴1枚あたりにかかる時間が長いのか、薬歴の枚数自体が多く時間がかかっているのか、要因によって解決方法は変わってきます。
薬歴記載時間が長い場合は、SOAPのどの部分に時間がかかっているのかを分析し、記載ルールを定めたりレクチャーしたりする。枚数自体が多い場合は、患者さんが多い時間だけでも薬剤師の増員を検討したり、薬剤師以外ができる業務の棚卸をしたりする。
課題の要因を明らかにし、それを解決する方法は何なのか。現場の薬剤師、管理者層が一体となって、業務改善のPDCAサイクルが適切に回るよう取り組んでいただけると良いでしょう。
調剤薬局のサービスを、持続可能に
私自身、薬剤師の業務の価値は、患者さんに伝わりにくい部分が多いと感じています。そのため、患者さんへの価値提供に意識をとられてしまい、客観的な薬局の状況把握がおろそかになってしまうことが多いのではないかと思うのです。
患者さんへの価値、勤務されている薬剤師の職能評価、薬局の経営の安定。この3つのバランスをとることが最も大事であり、バランスがとれて初めて、患者さんに持続可能な医療を提供できるのだと思います。
今は患者さんに価値を届けられていたとしても、経営が安定していなければ、持続可能とは言えません。患者さんへの価値が見えにくいことで、薬剤師の評価が曖昧になっている部分もあるでしょう。薬剤師がきちんと患者さんに価値を届け、それが薬局経営の安定につながり、貢献した薬剤師が適切に評価される。そんな世界を、Musubi Insightを通じて実現したいと思っています。
誰かの犠牲の上に成り立っている仕組みは、決して持続可能ではありません。患者さん、勤務している薬剤師、管理者層、誰の犠牲も前提としない適正な薬局運営の実現を通じて、日本の医療体験をしなやかにしていきたいと考えています。
さらにMusubi Insightの詳細を知るには
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