株式会社カケハシ(本社:東京都港区、代表取締役社長:中尾 豊、代表取締役CEO: 中川 貴史、以下、当社)は、北海道科学大学(北海道札幌市、学長:川上敬)と、慢性疾患患者の服薬アドヒアランスに関する研究を開始したことをお知らせします。クラウド型電子薬歴「Musubi」(以下、Musubi)に蓄積される患者指導記録などの臨床データ(RWD)から、薬剤師による患者介入と服薬継続状況との関連性を解明するとともに、服薬アドヒアランスを良好に保つ仕組みづくりの提言を目指します。また本研究は、独立行政法人日本学術振興会による2025年度の科学研究費助成事業に採択されたものとなります。
●背景
我が国における慢性疾患患者のうち、糖尿病の罹患が強く疑われる患者数と罹患の可能性を否定できない患者数ははそれぞれ約1,000 万人に及ぶと推計¹されています。
慢性疾患の薬物治療においては、継続的に正しい服薬を徹底し、服薬アドヒアランスを良好に維持することが欠かせません。これまでの多数の研究から、服薬アドヒアランス不良は、入院リスクや死亡率の増加に影響するとされており、重要な医療課題の一つと言えます。
しかし、アドヒアランス不良には様々な要因が複雑に関与するだけでなく、個々の患者によってその原因が多岐に渡ること²から、アドヒアランス不良を発生させるメカニズムの解明は、膨大な時系列データと分析技術を必要とする極めて難しい問題です。
当社は、Musubiの服薬指導支援機能などを通じて服薬アドヒアランスの向上に寄与してきました。加えて、提供サービスに時系列で蓄積される年間約2500万人分の臨床データの解析を推進しています。これまでに国内におけるポリファーマシー(多剤併用)患者に対する薬局薬剤師の介入状況を明らかにする調査や、薬局における服薬指導の質的評価に関する研究について学会発表するなど、複数の実績を有しています。
この動きを加速させるため、当社は薬局機能のレギュラトリーサイエンス研究を進める光岡俊成教授(薬学部)や服薬アドヒアランス研究で多大な実績のある櫻井秀彦教授(薬学部)、機械学習の専門家である松川瞬講師(情報工学部)を中心とする北海道科学大学の研究チームと共同研究を実施することにしました。
¹ 厚生労働省「平成28年 国民健康・栄養調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou_7.pdf
² 櫻井秀彦(2022)、アドヒアランス研究の意義と現状、 薬局薬学https://doi.org/10.32160/yakkyoku.ra.2022-3000
●概要
独立行政法人日本学術振興会による2025年度の科学研究費助成事業に採択された本研究は、研究に賛同したMusubiユーザー薬局において、慢性疾患患者 (1型糖尿病、2型糖尿病、リウマチ性疾患群、高血圧、 脂質異常症、心疾患、アレルギー性疾患群、慢性便秘症の薬物療法を受けている方)への薬剤師の介入に関するRWD(匿名加工済み)について後ろ向き解析を行います。
具体的には、患者指導記録や疑義照会記録などが自由記述されたテキストを、独自に開発した自然言語処理モデルによって解析します。そこから抽出された情報と、使用薬剤の服薬継続状況やMPR(患者さんが薬を所持する必要がある日数に対して、実際に所持した日数を比較した割合)との関連性を探索します。
また、その結果を基に、医薬品の適正使用に必要な服薬指導コンテンツの検討を行うだけでなく、処方設計に還元するための要点をまとめ公表する予定です。
当社と北海道科学大学は、薬局薬剤師が質の高い服薬指導を行うための新たな知見を提供するとともに、慢性疾患患者の服薬アドヒアランスを良好に保つ仕組みを作ることで、医療従事者と患者さん双方にとってより良い医療の実現を目指します。
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