午前8時半、開店準備
「みんなの薬局」の朝は、各種システムの起動から始まります。
- 『Musubi Insight』で前日の処方箋枚数や未記載の有無を確認
- 『Pocket Musubi』で患者さんから送信された処方箋や服薬期間中フォローのアラートの有無を確認
- 『Musubi AI在庫管理』で発注した医薬品の入荷見込みを確認
その他、処方箋入力代行サービス、レセコン、在宅訪問のコミュニケーションツールなども立ち上げていきます。そして左耳には、インカムを装着します。

午前9時、開店
外来の患者さんに対応しながら、『Musubi』で在宅訪問先となる患者さんの情報を確認しながら、ピッキングトレーに薬などをセットしていきます。
「お電話ありがとうございます。みんなの薬局の詫間です」
合間で外来電話がかかってきても、耳につけたインカムで会話でき、受話器を上げる必要がありません。
この時の電話の内容は、終末期のがん患者さんに関する情報共有でした。
患者さんの状況、訪問の内容、訪問回数...... 複数の情報を聞き取り、この日の1件目で訪問するのがよいと判断。患者さん宅へ急きょ、電話を入れました。
午前11時、在宅訪問の準備
午前11時~午後3時の時間帯には、外来患者対応を担う、もう一人の薬剤師が勤務しています。この先生も、まず調剤室で『Musubi』の各種機能を開き、薬局の状況を把握することからスタートしました。
詫間先生は訪問に必要なあれこれを車に積み込みます。栄養剤の段ボール箱、一包化した薬剤とピッキングトレー、そして『Musubi』端末。準備万端、薬局を出発です。
1日の訪問件数は3~5件程度。日にちは決めてありますが、時間帯は当日の状況を見て、患者さんと広めに約束しています。昼食のタイミングは、日によってまちまちです。
『Musubi』の情報は車の中でも患者さん宅でも、さっと確認・記載。インターネット接続は、胸ポケットに入れたスマートフォンのテザリング機能を活用しています。セキュリティ対策として、薬歴はクラウド上に置き、さらに端末紛失時に備え、遠隔で端末内の情報を消去できるようにしています。

午後5時前、Pocket Musubiで「薬局の外にいる患者さんを感じる」
午後の外来が再開する前に、薬局に戻ります。『Musubi』を使った在宅訪問の報告書作成や、『Musubi AI在庫管理』での発注を始めます。この日は在宅訪問先で、残薬に対して処方日数が少ないと気づき、『Musubi』に情報を残しておきました。報告書作成でも、『Musubi』を使って、訪問で得たその他さまざまな情報を記載していきます。
すると、『Pocket Musubi』が、患者さんが「おくすり連絡帳」にお薬を登録したことを知らせました。よくよく見ると、患者さんが登録してくださったのは、自局以外で受け取った薬の情報でした。
「いま登録いただいた薬は、ここから遠い他診療科の処方。自分のお薬についてしっかりと管理していこう、という行動はとてもありがたいこと。そして、薬剤師が、薬局の外にいる患者さんの思いや動きも見えるのは、こういうツールがあるからこその体験だと思います」(詫間先生)

取材後記~「薬剤師の地域貢献」を考える~
今回、Musubiコンテンツチームによる密着取材中、業務の具体的な話題から離れて、こんな質問もぶつけてみました。
「詫間先生、薬剤師の地域貢献とは、つまり何が求められていると思いますか」
詫間先生は「人によって、状況によって、とらえ方はさまざまだとは思いますが」と、言葉を選びながらこう答えていました。
個人宅の在宅訪問を通じてわたしが感じるのは、「地域」は「家族がいるところ」かな、ということです。
「いつも一緒に過ごしたあの人に会えない」という状態。それは、患者ご本人だけではなく、ご家族の立場から見ても、住み慣れているはずの地域が、いつもと異なる空間になってしまう。もし自宅で薬物治療ができることが、自宅に帰って「住み慣れた地域」でまた過ごせる条件となるならば、地域医療におけるお薬の専門家である薬剤師として、そこで力を発揮したい。
それが、わたしなりの地域に対して貢献できる、ひとつのかたちかな、と思っています。
「とはいえ、『もっとできそうだ』とも思っていますし、まだまだこれからです」と、はにかむ詫間先生。日本には、薬剤師の数だけ、お薬で支えられる地域が全国に存在する。そう思った取材となりました。(了)