ー徳島県内全域で複数店舗を運営する中、医薬品の在庫管理や発注業務に関するお悩みを感じてきたと伺いました。
高木さん:
弊社は創業200年、徳島に根差し、現在は8店舗を経営しています。長年、各店舗が地域に根差して運営してきたのですが、その中で感じてきた悩みが、発注や在庫管理の業務について社内で統一されたマニュアルが存在せず、店舗の管理薬剤師に任せる形となり、不動在庫が減らないことでした。
これは特定の店舗のみが頑張っても解決しない悩みで、とはいえ店舗によって事情も管理薬剤師の在庫管理の方法も異なって全体の把握が難しい、そもそも全社における意識の統一からはじめないといけないのかもしれない......。検討すべきことが多岐に渡っていました。
端的に言うと、発注や在庫管理業務が現場薬剤師のアナログな経験頼みで、「ガラパゴス化」が進んでしまい、どこから手を付けたらいいか決めあぐねていたのです。
ー背景にはどのような事情があったのでしょうか。
現場の薬剤師の話を聞いてみると、「在庫を持っておかないと欠品してしまい、患者さんが離れるのではないか」という不安があったようです。中でも、基幹病院の門前に立地していると高額医薬品を取り扱うことになり、不動在庫の金額が膨らみがちでした。ただ、果たしてどのくらいの不動在庫があるか、についてはよく分かっていませんでした。
ー『Musubi AI在庫管理』導入を決断した経緯を教えてください。
2019年から『Musubi』を導入して薬歴記載の平準化を目指してきましたが、『Musubi』のスタッフから、新しく在庫管理のシステムを開発していることを聞きました。詳しく尋ねると、AIを活用した新たなシステムとのことでした。システム導入が、全社における在庫管理の意識統一と、不動在庫の解消を同時に後押ししてくれるかもしれない、と感じ、決断しました。
ー導入してみて、現場の反応はいかがでしたか。
新しいシステムですから、各店で慣れるために時間は必要です。本社から各店へは「人力でやるしかなかった対物業務の一つが、システム導入によって来局の予測まで立つようになるかもしれない」という説明をして、理解を得るようにしました。
ー導入後、分かったことや感じたことはありますか。
法人が抱える在庫データとして見られるようになってから特に驚いたのが、不動在庫の金額です。最も多い店舗で約300万円、全社で計600万円もの不動在庫を抱えていました。「これは体制の見直しが急務だ」と痛感させられたデータでした。
ー『Musubi AI在庫管理』で不動在庫が「見える化」され、課題意識を一層強めたのですね。
はい、そうです。『Musubi』のスタッフさんから『Musubi AI在庫管理』を活用して、不動在庫解消をプロジェクト形式で進めるという提案をいただいたので、全社横断で取り組むことに決めました。
ー具体的に、どのように進めていきましたか。
店舗間の融通を業務フローとして定着させることを目指し、以下の4ステップで進めました。
STEP1 「不動在庫」の定義決め STEP3 必要とする医薬品を、『Musubi AI在庫管理』のシステム上で依頼 STEP4 不動在庫を融通・消費 →「店舗間融通」を、業務フローとして定着 |
ー高木さんはどのような役割を担いましたか。
「不動在庫」の定義を決めたり、各店舗への依頼をしたりといった役割を担いました。
ー「不動在庫」の定義を決める、とは具体的に何をしたのでしょうか。
これまで管理薬剤師の経験頼みで在庫管理をしてきた時は、何日処方が出ていない場合は「不動在庫」とみなす、といった方針もありませんでした。ですから、自社における不動在庫の定義を決める、というのが、プロジェクトのはじめのステップでした。
具体的には、「120日処方されていない、在庫金額が薬価ベースで5,000円以上の医薬品」を不動在庫プロジェクトの対象とすることにしました。
ー不動在庫の定義を決めてから、どのように進めていきましたか。
新しく作った定義に基づいて法人内の不動在庫をリストアップし、本部から各店舗に対して、融通できるかどうかの確認を呼びかけました。ただ、その過程で「他店への融通はできない」という声も挙がりました。
ーどのような事情があったのでしょうか。
たとえば「患者さんがまもなく来局予定」というケースもありますし、「欠品させてしまうのがどうしてもこわい」という声もありました。このような「全社の不動在庫の定義に当てはまりながらも、店舗間融通のリストから除外する」というケースは、その理由も明確にしてリストに記載するよう依頼しました。これによって、店舗や医薬品の「在庫の持ち方」の傾向をつかむことができると考えたからです。
リスト化によって「融通可能」とされた不動在庫は約150万円分でした。ここからは、リストに掲載された医薬品を『Musubi』AI在庫管理のシステムを使って「引き取り依頼を出す」機能を使って、医薬品融通を実行してもらいました。
ー融通できた医薬品はどのくらいあったのでしょうか。
店舗間の融通をはじめてから1カ月で、店舗間の融通を実施した150万円分のうち100万円分ほどが処方されました。また、『Musubi AI在庫管理』は翌月の処方予測を見立てることができますので、それを参考にすると、今回のプロジェクトによって融通後2か月で合計120万円ほどが処方できる見込みが立ちました。
ープロジェクトを振り返って、どのように感じていますか。
プロジェクトを振り返ると、「特定の店舗のみが頑張っても解決しない」と痛感しました。また、薬局を支えるシステムというのは、「買い切っておしまい」ではなく「いかに活用するかが薬局経営の変化には欠かせない」ということが実感できる出来事となりました。
今回のプロジェクトは本社だけでは決して成功できないものでした。会議の中や社内のチャットツールで、社長から成果を全店舗に共有し、感謝を伝えています。
ー今後、不動在庫をどのようにマネジメントしていきたいですか。
同様の不動在庫リストアップを、4カ月に1回程度の頻度でしていこうと思っています。ただ、きっと今回の在庫金額のように大きく膨らむことはないと思っています。
ーそれはなぜですか。
プロジェクトを経て、社内のチャットツール上で店舗間の「在庫が余っている」「在庫がなくなっている」といったコミュニケーションが活発になったのです。各店の薬剤師が、「在庫管理は、取り組みによって変えていける」と気付いたからこそ生まれたアクションであり、全社の在庫管理に対する意識が変わったからこその変化だと思って見ています。
ー『Musubi AI在庫管理』導入とプロジェクト推進を振り返って、今後取り組んでいきたいことはありますか。
各薬局の在庫管理の取り組みがデータで見られるという状況を活用し、今後はこれらを各支店や薬剤師の評価指標として活用することです。もちろん、在庫管理や発注方法のマニュアルが存在しなかったところからスタートし、今に至っています。ですから、これは言葉で言うよりもなかなか大変なことだとは思いますが、まずは検討をはじめたいです。
ー『Musubi』の各種機能を導入いただいている御社にとって、『Musubi』とは、どんな存在でしょうか。
「売りっぱなし」にしないシステム、とでも言うのでしょうか。どんどんいろんな機能がアップデートされたり、新たに登場したりし、アナログな薬局業務をデジタルへ転換させる後押しをしてくれています。今後も全社が変わっていくきっかけをとらえて、推進していきたいです。(了)
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