谷口さん:
私たちの薬局は、「医療の入り口としての薬局に。」というキャッチフレーズのもと、2021年春に開業したばかりの1店舗のみの薬局です。若者の集まる街である渋谷の中でも、山手線の駅のホームが見えるくらい駅チカにあります。若い方にも通いやすいようにと、日曜も営業していて、夜は22時まで営業しています。
私は病院薬剤師を経て、この薬局のオープンに合わせて転職し、現在は管理薬剤師を務めています。開設当初から『Musubi』を導入しているのですが、操作が簡単で、これまで電子薬歴を使ったことがなかった私でもすぐに慣れて使いこなせています。営業曜日や時間の関係で、スタッフには日曜や夜に勤務していただくこともあります。その分、残業ゼロで働ける環境を整えたい。『Musubi』はその点でも薬剤師の力になってくれています。
『Musubi』の患者フォロー機能(Pocket Musubi)導入の決め手は、(1)処方箋送信機能、(2)服薬期間中フォロー機能、(3)患者さんとメッセージのやり取りができる機能、の3つがそろっている点です。この機能を使うには、患者さんにLINEの友だち登録をしていただく必要があります。ただ、導入当初はこれらの機能があるツールを、どうやって患者さんに知ってもらうのがいいのか、はっきりした方針があったわけではないのです。
薬局をあげて「患者さんとLINEでつながろう」という流れが始まったのは、開局から半年経った2021年の秋でした。わたしたちの薬局では、タイミングを見て1on1ミーティング(一対一で行う対話の時間)をしているのですが、新しく入ってきたばかりだった事務スタッフの女性が、1on1の中で「私にできることがあったら、任せてほしいです」と打ち明けてくれたのです。
OTC医薬品のご紹介や棚づくりなど、お願いできそうなことはいろいろありました。ただ、面接や入社後の様子からも彼女はとても人あたりが良いな、と感じていたので、またほかにもお願いできそうなことがありそうで。『Musubi』に患者さんとつながる機能があることを説明し、「患者さんにご紹介してみる?」と打診してみました。
元々、この薬局では前任のいない新しい業務ですし、取り組み始めてどのくらいの反応があるのか、正直、未知数でした。ただ、彼女の言葉に「せっかくここで働くから、できることをしたい」という思いを感じ、任せてみようかな、と思って。「いつか100人に届いたらすごいね!」というくらいの気持ちだったのです。
「LINEでつながれることをしっかり紹介していこう」と決まった後、事務の皆さんの取り組みには目を見張るものがありました。彼女を中心として、来局した方々全員に登録の仕方やメリットのご紹介が始まって、店内のPOPも次々と作ってくれました。渋谷という立地もあるので、患者さんの8割は20~30代ですが、繰り返し来局される方の中には80代の方もおられます。スタッフは、高齢の患者さんであっても「LINEを入れているかわからない」とためらうのではなく、「必ず声をかける」を忠実に実行に移しています。
「いつか到達したら」と話していた「友だち登録100人」は1カ月程度でクリアしました。事務スタッフの方が「私にできることを」と申し出てくれてから1年ほどが経ったいま、友だち登録は1万人を超えました。再来の患者さんはすでにほとんど友だちになってくださっているので、現在は新患の方に100%紹介するという流れにしています。
メッセージ機能で薬に関する質問も届けることができますが、服薬指導のときにしっかりと疑問を解消するよう心がけています。「患者さんのメッセージが多すぎて大変」と思ったことはありませんよ。
薬局のホームページやインスタグラムでも、LINEの友だち登録の紹介をしています。そちらを見て、処方箋を送ってから来局してくださる新患さんも少なくありません。そうやって増えていったLINEでつながった患者さんの中には、遠く、東京都外や市部の処方箋を送ってくださる方もおられます。
患者さんは「処方箋の期限が切れないうちに」「あの日、ちょうど渋谷に行くから」と、自身のスケジュールを勘案して、送信してくださっているのですよね。在庫がない場合もあるので、入荷予定などをメッセージや電話でお伝えし、患者さんに来局するかどうか判断いただけるようにしています。患者さんから「日曜に開いていて良かった」「ありがとうございます」という言葉をいただくことも少なくありません。
こうした取り組みがあってか、開店した年と今を比較すると、処方箋枚数は2倍くらいに増えています。
お仕事や買い物の途中に、調剤薬局にお立ちよりになった患者さんが、事前に送信していた処方内容の処方薬を受け取っていただく。『Musubi』の機能を活用して、私たちの薬局が、患者さんの生活にフィットできているなと感じる場面です。
薬剤師の対人業務強化や、地域に根ざした薬局のあり方が求められている流れを見ていると、このような潮流を踏まえつつ、「それぞれの街に合った薬局」を目指していくことが、いちばん患者さんのためになるのかな、と思っています。私たちスタッフは、服装はスクラブを採用していて、髪の色も自由にしていて。「堅苦しく、待たされる。そんな従来の『薬局』とは違う、通いたくなるような薬局がいい」と思って店舗運営をしています。
『Musubi』の患者フォロー機能のご紹介を定常業務にできているのは、入りたてのスタッフが「私にできることを」と言い出したことを「いいね」と言えたこと。そして、薬局のみんなで盛り上げていけたこと。ここで働くスタッフ同士に、自由な雰囲気があったからかな、と思います。
とはいえ、開局したばかりの時は薬局自体の知名度が低くて、大変な時期もありました。
週末もにぎわう街なのだから「日曜営業、夜は22時まで」と決め、スタートしたものの、「せっかく日曜にオープンしているのに、患者さんが来ない」なんて日もありました。患者さんがいない時間を使って、スタッフのみんなでわいわいと薬品棚の並び方を決めていたあの日のことを思い出すと、1万人を超える患者さんとつながっている今の状況には、感慨深いものがあります。ちょうどこの前、つながってくださっている患者さんへの感謝の気持ちを込めて、インスタグラムにもお礼の気持ちを投稿しました。
他の薬局の出店状況など、周辺の環境が変わりつつあっても、私たちには患者さんとのつながりがあります。都心のど真ん中にある私たちの薬局は、「薬局らしくない薬局」を目指す。それがいちばん患者さんのためになるのかな、と思っています。(了)
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