2019年 | 薬歴の記載ボリュームが結局減らず、残業が増えはじめる |
2021年6月 | Musubi導入。薬歴残業が解消。 |
2021年9月 | Musubiの服薬期間中フォロー機能を追加 |
2021年10月 | トレーシングレポートの枚数が50枚/月に |
2021年10~12月 | LINEの処方箋送信機能を利用した門前医療機関以外の処方箋応需枚数が3か月で66枚に |
ー さっそくですが、なぜMusubiを導入しようと思ったのか……きっかけや理由を教えてください
山本さん(代表):
患者さんに付加価値を届ける。これこそ、今後の薬局経営において最重要の課題だと考えつつ、現場は患者さんのことを考える時間がなく、忙しい。そう感じていた中、Musubiを知りました。
既に他の電子薬歴システムを導入していたのですが、代表の中尾さんの話を聴く機会もあり「KAKEHASHIは電子薬歴を売ってる会社じゃなくて、患者さんによりよい薬局体験を提供してもらうために動いてるんだ」という点に共感するところが大きかったですね。熱いな、って。
導入前に実際にMusubiを試し、本当に付加価値を患者さんに提供できるか? をじっくり考え、導入すべきと判断しました。東北と関東圏で17店鋪の薬局を経営している中で、KAKEHASHIの中尾さんよりまずは比較的規模が大きい店舗から導入した方がよいとの助言をいただきました。そこで本宮センター薬局で導入しようと検討したのですが、本宮センター薬局で導入するのであれば、課題が明確な東北の全店舗で導入することにしました。
ーかつての本宮センター薬局の課題は?
冨山さん(エリアマネージャー):
これまで2つの電子薬歴を使ってきたのですが、なかなか未処理の薬歴は減らなくて。
山本さん(代表):
本宮センター薬局はグループのなかでも処方箋枚数が多く、患者さんの来局が集中すると薬歴が書けなくなり、未処理の薬歴が積み上がっていたんです。比喩じゃなくて、物理的に(笑)。
千葉さん(薬剤師):
薬歴、溜まってましたね。少し私の自己紹介にもなるのですが、私は公立病院での勤務を経て、3年前に縁があって本宮センターへ転職しました。この薬局最年長の薬剤師でして、他の薬剤師よりもキーボードを使った経験が少なく、日々の薬歴が溜まって、連日22時に帰宅するような状態で。家族にも「ちょっと職場、変えた方がいいんじゃない?」って言われてしまって。
山本さん(代表):
薬歴残業も課題に感じていたのです。
ーそして3回目の電子薬歴である「Musubi」に切り替えを決意されたのですね。現場のみなさんの反応はどうでしたか?
冨山さん(エリアマネージャー):
最初はやはり反対がありましたね。「また変えるのか」「せっかく少し慣れてきたのに…」といった具合に。本宮センター薬局は電子薬歴を導入していたのでそこまででしたが、他の紙薬歴だった店舗に関しては特に。
ただ、Musubiの導入は業務の効率化だけではなく、今後わたしたちが患者さんに付加価値を届けるための選択でもありました。なので、導入後に実際に使いながら慣れていけばいいかと考えていたのですが、うれしい誤算もあって。
ーうれしい誤算とは?
冨山さん(エリアマネージャー):
導入後、比較的早い段階で、薬歴の入力スピードが明確に上がったんです。Musubiはタッチすれば薬歴の下書きが作れるので、キーボード入力が苦手な高齢の薬剤師も、さくさく記入できるようになりました。
また、これまでの電子薬歴導入時は「やり方がわからない」と現場が混乱したこともあったので、今回のMusubi導入時は簡単な操作マニュアルを用意して、実際に使いながらマニュアルをアップデートし、みんなでMusubiを使いこなせるようにしました。
千葉さん(薬剤師):
いまだにキーボード入力が苦手なわたしでもMusubiに変わってからは薬歴が溜まらなくなり、残業が減って早い時間に家に帰れるようになりました。データで見ても、薬局全体での残業時間が削減されてましたね。
山本さん(代表):
本当によかった。
ー効率化以外の部分で、Musubi導入後の変化はありましたか?
山本さん(代表):
いちばんは、患者さんのことを考える時間の確保ができたことですね。これまで「プラスアルファの一言」って言えなかったんですよね。服薬指導時に患者さんに向き合うための余裕が生まれて、詳しく話を伺う時間ができたりとか、Musubiの「健康アドバイス機能」を活用して、患者さんの事情に沿ったアドバイスが可能になったり。
山澤さん(薬剤師):
わたしは、公立病院から2021年4月に調剤薬局の業界に来ました。Musubiは服薬情報が確認しやすく、薬物相互作用・副作用歴などのデータを見逃さないよう設計されているので助かりますね。
最初は抵抗もありながらもMusubiが導入されて、効率化を実現した。その後、Musubiの服薬期間中フォロー機能(Pocket Musubi)も導入されていますが、そのきっかけは?
冨山さん(エリアマネージャー):
2020年に服薬期間中フォローが義務化されて以来、本宮センター薬局としては電話をメインに、一部の患者さんにはLINEを使ってフォローする取り組みを始めていました。が、これが大変で……運用コストが高く、現場の負担が大きかった。そのころにMusubiの服薬期間中フォロー機能のことを知りました。
Musubiのスタッフさんから説明を受けて「患者さんに自動的に個別最適化された質問を送れる」という点がよいなと。「あなたはこの薬を飲んでいますが、こういう症状が出ていませんか?」といったコミュニケーションも、薬剤師の負担なく行える。これはラクになれると直感的に思って、社長に「試しに入れていいですか?」とすぐに頼みました。
山本さん(代表):
Musubiの導入時は反発もありましたが、導入以降は薬局の業務が効率化され、従業員からも好評だった経緯もあり、服薬期間中フォロー機能にも期待していました。そして、冨山も推している。これは導入しないわけないよねっていう。ラクになった分は、もっと患者さんのための時間に使ってよ、とは頼みました。だから、ラクはするなよ、と(笑)。
冨山さん(エリアマネージャー):
プレッシャーを感じつつも、導入以降は、服薬期間中フォローに一生懸命取り組んでいる自負はあります。
ーMusubiを使った服薬期間中フォローに取り組んだ結果や成果について、教えてください
冨山さん(エリアマネージャー):
薬局で開設しているLINEの友だち登録数が急増(※)しました。あとはトレーシングレポートの件数が月に数件だったのが、毎月40~50件ほどに増えました。感覚的には、一生懸命がんばっていたら、枚数が増えていた。
しかも、ただ枚数が多くなったわけではなく、患者さんの変化をみながら次回処方の変更提案をさせてもらう機会が増えています。これまで「医師は忙しいから情報を提供しても意味がないかな……」と思っている部分もあったんです。ただ、Musubiの服薬期間中フォローを介したコミュニケーションの中で、医師がコメントを長文で返してくれることもあって。「あ、こういうことだったのか」と患者さんを理解できて、次回以降の情報提供の質を高めることにもつながっています。
※)Musubiの服薬期間中フォロー機能は、LINEと連動して患者さんとコミュニケーションを取ることが可能です |
山澤さん(薬剤師):
トレーシングレポートを始めて、近隣の医療機関以外にも情報提供をするようになりました。たとえば、岩手県盛岡市の基幹病院に情報提供をしていくと、次第に返事も来るようになり、「今度がんの研修会に参加しないか?」というお誘いももらいました。多職種連携というか、こういうつながりはうれしいですね。
「患者さんとつながることができた」と心から思った事例もあります。吸入薬使用後に発作と吸入後の気分不快感が現れた患者さんがいらっしゃって、Musubiを通じてコミュニケーションをとり、詳しく症状の確認をしました。その後、すぐにトレーシングレポートで医師に次回処方の変更を提案しました。すると、医師からも提案の受諾とともに患者さんへのケアについて指示を受けて、患者さんに最善の対応をすることができたんです。Musubiがなければこのような事例はうまれなかったでしょうし、本当に患者さんとつながれた、と感じました。
▼本宮センター薬局が行った処方提案の変更例(一部)
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千葉さん(薬剤師):
わたしも含めて、薬剤師は職業柄なのか、会話を通じたコミュニケーションが少し苦手な部分もあるような気がしています。だけど、トレーシングレポートなどの文章を介したコミュニケーションは得意な部分もあって。即時性だけではなく、文献や資料を参照しながら文章を書き、伝える。口下手な薬剤師にとってもいいかもね、と。わたしは一度定年して、2度目の薬剤師人生を本宮センター薬局で過ごしています。だから、毎日が勉強。Musubiが、その機会をわたしにくれました。
ー服薬期間中フォローを強化するために、どのような取り組みをされていますか?
冨山さん(エリアマネージャー):
Musubiの服薬期間中フォロー機能をフル活用するためには、LINEで患者さんとつながることが最初の入り口なので、来局される患者さんに積極的にお声がけして、LINEで友だち登録をしてもらうように働きかけました。
具体的には、服薬指導が終わったタイミングで、メリットを端的にまとめたチラシを使って患者さんに説明しています。すごく忙しいときは割愛することもありますが、だいたい1分程度で紹介しています。1分って決して長い時間ではないですが、Musubi導入前、心理的な余裕もなかったころにはできなかった気もします。
千葉さん(薬剤師):
患者さんからも結構好評でして。もちろん断る方もいらっしゃいますが、メリットを伝えたら響く部分はあると感じています。時間がない患者さんにはパンフレットだけ渡すようにしていて、自宅に戻られてから登録してくださる方もいます。
山澤さん(薬剤師):
千葉も先程話していましたが、薬剤師は口下手な人間も少なくないので(笑)、最初は気乗りしないスタッフもいました。ただ、薬剤師の職能を広げる意味でも、服薬期間中フォローは重要だよね、という話を薬局内で語り合って、まずは患者さんに声をかけてもらうように薬局のメンバーをフォローしました。そして、スタッフ全員で取り組んだのです。
最初は患者さんへの説明もおぼつかない部分もありましたが、やはりメリットをしっかり説明することが大事でしたね。たとえば……
「LINEの友達登録していきませんか?」 |
という具合です。具体的なフォロー内容を患者さんにイメージしてもらうことで、納得してもらえるようになり、登録者も増えてきました。
千葉さん(薬剤師):
わたしはLINEには詳しくなかったのですが、やれることはやりたいと思い、わからないことは若い薬剤師に質問して実施していきました。
山澤さん(薬剤師):
千葉からはたくさん質問いただきましたね(笑)。そういえば意外だったのは、高齢の患者さんですでにLINEを利用している方は、登録率が結構高いんです。取り組みを始める前は、高齢の患者さんが多い薬局だから、登録数は伸びないかな……と思っていたんですが、杞憂でしたね。登録者の実数ベースでは、50代女性患者さんの登録が最も多いです。
冨山さん(エリアマネージャー):
本宮センター薬局には、近隣に婦人科があります。婦人科の患者さんに話を伺うと「相談したいけど、口頭では相談をためらうケースもあるので、メッセージでやりとりができるのはうれしい」という声が上がっています。そういう思いを抱えた患者さんには、女性薬剤師が向き合うようにしていて、患者さんが安心して自分の状況を伝えてくれるんです。それが、服薬指導の質向上につながっています。
こうしてLINEの登録者が増えると、本宮センターを積極的に利用する患者さんも増えるのでしょうか?
冨山さん(エリアマネージャー):
理想からはまだまだ遠いですが、少しずつ手応えを感じていますね。たとえば「待ち時間が少なくなったから、また来ました」といった声をいただくようになったり、服薬期間中に薬剤師に積極的に相談してくれる患者さんも増えてきたりしています。また、評判が口コミになって、LINEの処方箋送信機能を利用し、門前医療機関以外の処方箋を持参する患者さんが、もともとはほぼ0件でしたが、2021年9月~11月の3か月間に66件ありました。
山本さん(代表):
患者さんに「付加価値」を届けることでまた来局してもらえるようになれば、やりがいとしてもビジネスとしても本懐ですね。アイドルでもお寿司屋さんでも、根強いファンがいるほどに売上も安定しますし、それはつまり「挑戦ができて、新しい付加価値を次々と届けられるループ」が生まれることだと思っています。これまでの薬局経営はどうしても患者さんと一期一会の関係になりがちですから、「薬局と薬剤師のファンを生み出す」ことはそんなに簡単ではありません。一つの挑戦だと思っています。
ー今後の薬局経営や実務にあたり「叶えたいこと」を教えてください
山本さん(代表):
いまは「対物業務」に注目しています。このように言うと、時代の流れに逆行しているように聞こえるかもしれませんが、人的リソースや予算などキャパシティが決まってる以上、片方のボリュームを上げたら何かを下げなきゃいけない。だから、対人業務を充実させたいからこそ、対物業務のボリュームをどう下げるかを考えています。Musubiを使ってかなりボリュームは下がりましたが、まだ終わりじゃない。
これまでの薬局業界は、ある程度守られていたんですが、これから脱皮していく必要があると思っているんです。だからこそ「付加価値」がキーワードになる。そして薬局の存在意義を、地域に示していく必要があるのかなって思います。
山澤さん(薬剤師):
今後、薬剤師数が過剰になる時代の到来が確実といわれており、生き残る薬局・薬剤師にならなければいけないという高いハードルが迫ってきている中、跳ぶ準備をしないわけにはいかない。そう思い、本宮センター薬局に勤務しています。
調剤報酬改定への対応も、服薬期間中フォローも、これから薬局を続けていくには絶対に超えたいハードルで、その先に実現したい理想の医療があるから、やっぱり挑んでいきたいですね。挑まないと、挑めなくなってしまう。まだやらなくていいでしょ、なんてことは何もない。そのつもりで、日々の業務に挑んでいます。
ー最後にお伺いします。みなさんにとってMusubiとは、どういう存在ですか?
山本さん(代表):
「患者さんと薬局や薬剤師をつなぐもの」ですかね。業務効率化ができたからこそ、余裕が生まれて、患者さんと深いコミュニケーションが取れるようになって……これからもさらにつながりが強くなったらいいなと思います。
山澤さん(薬剤師):
わたしも「(患者さんと)結んでくれたもの」というイメージですね。あるいは「挑戦させてくれる機会」かもしれません。
千葉さん(薬剤師):
わたしにとってのMusubiは「助けてくれるもの」です。再就職でまた薬剤師をはじめて、もしMusubiがないままだったら、現役の薬剤師としての十分な業務ができていなかったかもしれない。非常に助かっています。
冨山さん(エリアマネージャー):
そうですね、なくてはならない存在になったかな……だから「空気のようなもの」なのかもしれない。一度Musubiを体験すると、もうそれが当たり前になってしまうような気がしています。
ー本宮センター薬局のみなさん、ありがとうございました。(了)
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