Musubi導入事例

服薬期間中フォローで「つながる」。奄美大島の薬局がコロナ禍でMusubiを選んだ理由、活用術

こぐま薬局:松原さん(代表取締役)
美しい海に囲まれた奄美大島で、薬局(1店鋪)を営む松原さん。島に移り住んでから開業して13年、医療リソースが決して潤沢とはいえない環境で、着実に患者さんと「つながり」を築いてきました。コロナ禍のなかで選んだMusubi導入と、その直後に訪れた危機をどう乗り越えたか……静かに言葉を選びながらも、真摯な言葉で語ってくださいました。

こぐま薬局 Musubi導入までの道

  

2020年

業務効率化に悩み、電子薬歴の更新検討開始
2020年4月 Musubi導入を決める
2020年4月 1度目の緊急事態宣言。患者さんが薬局に来られなくなる
2021年6月 Musubiの服薬期間中フォロー機能を追加導入
2021年12月 処方せん枚数が月24枚増加
  • 鹿児島県奄美大島にある1店鋪薬局。2009年開局
  • 観光名所である「屋仁川通り」沿い徒歩2分に位置する
  • 小児科と内科の門前
  • 患者さんの8割は小児科急性期
  • 薬剤師1人と事務スタッフ2名の体制
  • 月の処方箋枚数は平均600枚
  • 2020年からMusubiを導入

奄美大島、医療リソースが少ない島で。

松原さん(薬局経営者):
元々MRだったわたしが、奄美大島に薬局を開いたのは偶然でした。当時仕事で知り合った方に誘われて、島に惹かれて。MRを辞めて、2年間ほど調剤薬局で働いた32歳のときに独立しました。2009年のことです。薬剤師としても、島の人間としても手探りで開業し、気づけば「こぐま薬局」も13年経ち、ほとんどの期間を薬剤師兼経営者として、一人でやってきました。
 

この13年で薬局をめぐる状況も大きく変わり、特に「一人薬剤師」にとっては厳しい状況を迎えつつあると感じています。調剤報酬のトレンドは、在宅などの対人業務へシフトしていますが、小児科と内科の門前薬局としてやってきたこともあり、移動を伴う対人業務は難しい部分もあります。来局される子どもたちや親御さんのためにも、服薬指導も丁寧に行いたい。でも、「一人」でできることの限界も少しずつ感じていたんです。
 

薬局の存在感が増すにつれて、増える業務と不安

『Musubi』導入を検討した最初の理由は、業務の効率化に悩んでいたからです。開設当時はなかなか島の風土やコミュニケーションに馴染めない部分もあり、処方箋枚数も多くはなかったのですが、少しずつ口コミで評判を広げてもらえて、訪れる患者さんも増えてきました。

ただ、比例して業務が間に合わなくなってきました。未記載の薬歴をはじめ、あらゆるタスクを休日にまわしてなんとかこなすのが常態化してきて、なんとかしたいなと。

「一人薬剤師」にも心強い、健康アドバイス機能

クラウド型の電子薬歴が増えてきたということも耳にしていて、いくつかのシステムを検討しましたが、最終的に『Musubi』に決めたのは「健康アドバイス」の充実度にありました。一人薬剤師の体制は知識のアップデートも大変ですし、小児の分野に対する知見が不足しているという課題もあったんです。服薬指導をしながら学べる状態はありがたいですね。

もちろん、業務効率化も実現できました。薬歴記入時間はグッと短縮されましたし、楽になったかな。1日の残業も30分~1時間ぐらいまでには削減できました。

ただ、ちょうど『Musubi』を導入した2020年の春、別の課題に直面しました。

コロナ禍でも「患者さんとつながる方法」を探した

2020年4月、最初の緊急事態宣言が出て、島も静まり返ったようになり、患者さんの数は半数ほどになりました。患者さんは薬局に来れない状況でしたが、内科や小児の患者さん自体が減ったわけではなくて、自宅で苦しんでいるかもしれない。島の医療を担う専門職として、何かできることはないかと考えていました。
 

Musubiの服薬期間中フォロー機能の存在を知り、即決。その理由。

具体的には、服薬期間中フォローの実施が鍵になりそうだ、と思っていました。たとえば、患者さんとLINEでつながって、処方箋をLINE経由で送信してもらえたら、コロナ禍でも患者さんに服薬指導をすることができる。

『Musubi』の服薬期間中フォロー機能(『Pocket Musubi』)のことを知ったのはMusubiの導入サポートを受けている途中だったかな。トレーナーさんから伺って、すぐに導入を決めました。電子薬歴と服薬期間中フォローの連動性は重視していましたし、このときの『Musubi』の導入サポートも基礎から応用まで使い方を丁寧に解説してくれて、安心感がありました。
 

月24枚の処方箋増加。背景には患者さんと薬局が「つながる」仕組み

『Musubi』の薬歴機能で業務効率化を実現しつつ、浮いた時間で服薬期間中フォローなどの対人業務を強化していきました。コロナ禍は引き続き一進一退でしたが、薬局にも少しずつ患者さんが戻ってきたころから『Musubi』の服薬期間中フォローを使って、患者さんとつながりを作っていきました。

『Musubi』の服薬期間中フォロー機能はLINEと連動して、患者さんと「友だち」になることでつながることができるので、薬局にとっても患者さんにとってもハードルが低いのです。新しいアプリのインストールをお願いするといった煩雑なフローではないし、LINEはほぼ全員使っていますしね。

薬局で働いてくれている事務スタッフと協力して、わたしが薬を調剤しているあいだに、スタッフが「LINEでつながることのメリット」を患者さんに説明する流れがうまくいったのか、LINE登録の承諾率が76%前後になってきました。あとでMusubiのサポートスタッフに伺ったのですが、1店鋪薬局としてはかなり高いそうです。処方箋枚数は月に24枚増えたこともありました。

特別なことはあまりしていないつもりです。

すこし丁寧に説明した部分はありますが、患者さん側もメリットを感じてくれたのだと思います。

こぐま薬局の患者さんは8割が小児科急性期の外来の処方箋を持ってくるのですが、当然親子で来局されるケースが多い。医療リソースが決して潤沢ではないこの島において、若い親御さんも「薬剤師にいつでも相談できること」に心強さを感じてくれている部分もあるようです。私も患者さんとつながれてうれしい。もちろんやることは増えたけど、アラート機能のおかげで「いま、向き合うべき患者さん」がわかるのはありがたい。

『Musubi』を導入してしばらく経ったころ、門前の処方箋だけではなく、島のなかでは大きい病院の処方箋を持参する患者さんも増えてきました。なにかあったとき、自宅の近くの薬局にかかりたいというニーズに応えることができて、すこし手応えを感じています。理想からしたら、まだまだですけどね。

そういえば、ある患者さんのお母さんが、同級生のママ友達を薬局につれてきてくれるケースもありました。人のつながりを大事にするこの島ならではの事例なのかもしれません。

患者さんからの相談にMusubiを通じて答える松原さん

つながりを拡張する「データ管理」の必要性

コロナ禍はまだまだ油断できない状況ではありますが、開局して13年目で、少しずつ患者さんの症状やその先にある生活にアプローチできるようになってきたと思います。まだまだやりきれてないことが多いんですけどね。

もともと奄美大島の人間じゃないので、最初はなかなか誰ともつながれなくて。開局10年目ぐらいまでは、対人業務まで満足に実現できなかったことを思えば、『Musubi』導入と時代の変化で、すこし前進したような気もします。

『Musubi』導入をきっかけに、データ管理や整備を進めています。データを揃えることによって、患者さんにすこしでもよいアプローチができればと。一人薬剤師なのでできることに限りはあるし、どんなに便利なシステムでも多少の準備や大変なこともありますが、データを活用できてはじめてわかるメリットもありました。何よりデータ活用によって、患者さんにこれまでは叶わなかったようなアプローチができたときに、患者さんから感謝の一言が返ってきたりしたら…もう、疲れが吹き飛ぶんです。

  

島の医療のために、さらにつながりたい

服薬期間中に得た情報を積極的にトレーシングレポートで共有していきたいなと考えています。近隣の医療機関にとってどのタイミングがよいのか、どんな内容がよいのかといま頭を捻っているところです。

あとは『Musubi』を介してつながった親御さんにむけたマタニティ教室や、薬の飲み方を伝える場をつくっていきたい。子どもへの薬の飲ませ方って難しいんですよね。少しでも伝えられることがあれば、伝えていきたいんです。

この島は「つながり」で成り立っている。それに助けられたことも、阻まれたこともあります。でも今は、そのつながりをつくっていきたいと思っています。
 

Musubiは、つながり

「あなたにとってMusubiとはどんな存在ですか?」うーん、そうですね。薬剤師としてもわたしの存在をひとつ大きくしてくれた存在でしょうか。健康アドバイスも、服薬期間中に飛んでくるアラートも、薬剤師として患者さんに向き合うために必要なツールで、知識や視座をあげてくれました。そして、Musubiはつながりでもあります。Musubiを介してつながった患者さんたちにできることを、コツコツやっていけたらと思います。
 


【追記】こぐま薬局のその後~離島における在庫管理の適正化

「一人薬剤師」がこの島の患者さんにできることを考える松原さんはその後、『Musubi』のAI在庫管理機能も導入し、活用していると言います。初回のインタビューから約1年後の2023年春、活用状況について追加でインタビューにお答えいただきました。
 

課題:バラ/チューブの把握に苦慮。子連れの保護者を「待たせるのが申し訳ない」

元々、発注業務は離島のため船便の欠航など天候に左右されることを考慮して、レセコンに発注点を高めに設定していました。ただ、複数規格がある医薬品、例えば壺とチューブそれぞれの発注点を設定することはできず、薬局内の総量しか把握ができませんでした。

小児科で外用薬処方が多いのですが、月1~2回、チューブの欠品が起きてしまい、その影響で調剤の待ち時間が長くなってしまう場面がありました。そんな時、『Musubi』のAI在庫管理機能を導入すると、総量ではなく、チューブ/壺、PTP/バラなど、分けて在庫を管理できると知りました。
 

行動変化:待ち時間削減、「おすすめ機能」活用で在庫の最適化へ

在庫管理の適正化や欠品抑制に取り組みたかったいちばんの理由は、患者さんの姿でした。

診察で疲れた子どもが薬局にやってきて、調剤待ちの間に泣き出してしまう。そんな子どもをなだめているお母さんもほとほと疲れている。そんな様子に、忍びないな、何とかできないかな、と思ってきました。

この薬局では夏よりも冬の方が外用薬処方が多いのですが、『Musubi』のAI在庫管理機能を導入後のこの冬は、チューブの欠品を理由にした待ち時間を減らすことができました。また、少数処方については、いつ来局するかをその都度調べてきましたが、AIが自動で処方実績に応じて発注するべき「おすすめ」を出してくれ、さらにどの患者さんがいつ来局されていて、次回いつ・どのくらいの処方がでるのか発注時に確認できるようになりました。

また、次回来局予測からちょうど良い時期に、AI在庫管理機能から「おすすめ」されるのも良いですね。毎月の処方量についても、画面からすぐに確認ができるため、薬価改定に向けて発注を絞るのも簡単でした。

今後も小児科の門前薬局として、ますます地域の子育て支援に寄与できるような薬局でありたいと思います。(了)


ここまでお読みいただきありがとうございました。
『Musubi』の機能やメリットについて、くわしく資料にまとめました。ぜひご覧くださいませ。
更新日:2023/05/22

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