水越:
当社は山梨県内に「みどり薬局」を3店舗展開しており、一つが山梨大学医学部附属病院の門前に、もう一つが内科消化器外科のクリニックの門前にございます。こちらの富士見店が、山梨県立中央病院の門前です。
一瀬:
富士見店は、薬剤師が5〜6名、事務が3〜4名の計10名前後で運営しています。処方箋枚数は一日に100枚前後。県立中央病院をメインに、近隣の内科や整形外科、それから近隣にお住まいの患者さんが他の病院の処方箋とまとめてお持ちになるケースもありますね。特徴としては、やはり県内有数の総合病院ということもあり、内科から循環器内科をはじめ内分泌、整形、眼科皮膚科と、処方が多岐に渡ること。抗がん剤といった重い処方も少なくありません。さまざまな治療をされている方、バックグラウンドもそれぞれ異なりますので、つど患者さんの様子を見ながら対応しています。
水越:
創業当初から“投薬で違いを作れる薬局であろう”と強く意識しており、3年ほど前に改めて「患者様に信頼されるかかりつけ薬局と医療ネットワークの創造」というスローガンを定めました。高度な医療を必要とする患者さんへの万全の対応はもちろん、地域のかかりつけ薬局としてあらゆる患者さんにしっかりと対応できる薬局でありたいと考えています。在宅対応もその一つです。現状は居宅をメインに、一部施設との連携も始めています。
水越:
当社の場合ハイリスク薬を処方される患者さんが多く、そうした患者さんへの指導に注力しているぶん、それを薬歴にしっかりと残し、次の指導に活かしていくことが重要だというのは以前から課題として強く認識していました。加算という意味でもそうですが、何より患者さんの理解ですね。毎回おなじ質問をすることで違和感を与えてしまったり、質問の意図が正しく伝わっていなかったりすることで、患者さんが薬による治療を前向きに捉えることができなくなってしまっては、せっかくの指導が意味をなさなくなってしまいます。とはいえ、薬剤師の薬歴を書く負担が非常に大きく、その問題を解決しない限り、目指すべき薬局の形を実現し、持続していくことはできないんだと痛感していました。パソコンの単語登録機能を使ったり、いろいろと試行錯誤を繰り返しながら、どうすれば薬歴を効率化できるのかと悩み続けていたんです。
Musubiを知ったのは、あるWebの記事で紹介されているのを見たのがきっかけだったと思います。まず薬歴の制作時間を効率化できて、さらに付加価値として患者さんにプラスの体験を与えられるシステムだと知って、興味が湧いたんですよね。それまで使っていたシステムへの慣れもあり、取引先とのお付き合いもあり、なかなか踏み切れずにいたのですが、実際に自分の目で見てみないとダメだと思い展示会に足を運んで。それから、近隣のMusubiユーザー薬局を見学させていただいたり、担当の方とやりとりを重ねながら、導入を検討していきました。
一瀬:
以前は、調剤室に薬歴用の端末が置いてあり、みんなそこで書いていました。調剤室を出て患者さんにお薬を出し、戻ってきてから薬歴を書くという流れなんですが、やっぱり戻ってくるともう次の調剤監査が待っているわけです。そんな中で、SOAPをいちから全部打ち込まなければいけない。となるともう、お待ちになっている次の患者さんを優先するしかないじゃないですか。結果、薬歴は外来が落ち着いた夕方か、遅いときは営業時間が終わったあとに始めて、そこから1〜2時間はかかっていました。パートのスタッフの場合は退勤時間が決まっているので、次の出勤日の朝。外来対応が回っている中、薬歴作成の時間をとってもらうことでなんとか消化するという。だから、営業時間後の負担もありましたし、翌日、本来だったら調剤をスタートできる時間帯も薬歴に当てなければいけないという、二重の負担がありました。残業が当たり前、定時で帰れたらラッキーというような感覚でしたね。
水越:
私もその状況を目の当たりにしてきたわけです。ですが、いろんな薬局を過去に見てきた中で、それが当たり前というか、どの薬局でもみんなやっていることなんだよな、と。どの薬局もこの状況を変えることができていないという。閉塞的な感覚といいますか、打開したいけれども打開する術がない中で、Musubiを見に行ったのは藁をも掴む思いだったと思います。
一瀬:
同じく、薬歴の中身や患者さんへの指導にも課題があったと思います。例えば、「ハイリスク薬の指導を徹底しましょう」というのは以前から意識づけしてはいたものの、実際は各薬剤師任せになってしまっていて。正しく指導できているのか、薬歴と指導の内容が正しく一致しているのか、そこまでしっかりと管理しきれているとはいえない状況でした。薬歴に関しても、書き終わったものをチェックして判断するしかなかったので、「こうやりましょう」とは言うもののそれだけ。具体的なアクションについての共有や、各薬剤師にあわせた教育は難しい状況だったと思います。
水越:
当社が創業以来の理念としてずっと追い求めている理想的な投薬のスタイルというのが、「患者さんと一緒に対話しながら、お薬についてお伝えする」というもの。これが既存のシステムでは、実用的な形で実現できなかったんですね。薬剤師から患者さんへの一方的なコミュニケーションではなく、薬剤師の服薬指導に患者さんが“参加できる”というのは、私が探した限りではMusubiしかないなと。最近はクラウド型の薬歴システムも色々と出てきていますし、例えば安いですとかとにかく早く薬歴が書けますとか、いろいろなシステムの営業を受けましたが、薬歴を書くこと以上の価値を見出せたのはMusubiだけでした。実際に導入したときに一番喜んだのは、創業者である社長だったんじゃないかな。「これこれ、これだよ!」「こういう指導がしたかったんだよ!」と。まさに思い描いていたものが形になっていたような感動を、Musubiに感じたんじゃないかと思います。
一瀬:
最初に軽く触ってみて、「これは使いやすいな」という感覚はありましたね。従来のキーボードで打ち込むだけのものと比べると特に。患者さんのサマリー(頭書き)を見て、処方の比較をして、指導して……という薬剤師のいつもの業務の流れにシステムを結びつけてくれているので、ざっくりとこういう順番で見ていくんだということを教わりさえすれば、業務で活用するイメージを掴めると思います。
導入プログラム(Manabi)で順を追って説明していただいたことで、各スタッフも本格稼働までにしっかりと使い方をマスターできていました。一括研修ではなく、30分単位のセッションを複数回に分けて個別にやっていくという研修のやり方も、「わかりやすくて良かった」という声が上がっていました。あのプログラムを経験するだけで、基礎的な使い方は完璧になっていると思います。30分という短い時間で小分けにされているので、休憩の延長というか受講時間を確保しやすいですし、薬局の現場を回す上での負担もほとんどありませんでしたね。内容としても毎回少しずつ、前回の復習も兼ねながらMusubiに触れていくプログラムになっていて。本格稼働の前に回数を触れるので、そういった意味でもよかったかな。
水越:
短期集中型の初期導入だと、どうしてもその後に必ずトラブルがでてきます。過去にレセコン一体型の電子薬歴を導入したことがあるのですが、使いこなすまでにどうしても時間がかかってしまう。システムにはたくさんの機能がついているものの、例えば導入後2〜3日ほど立ち会っていただく間に使う場面が出てこなかった機能に関しては、その存在すら知らずに使い続けることになってしまうんです。正社員だけでなく時短勤務のパート薬剤師など、多様な働き方のスタッフがいる中で、全員が一定のレベルまでシステムを使いこなせていないと、その差が患者さんへの指導や薬歴のクオリティに影響してしまいます。すべてのスタッフのレベルを同じように上げることができ、さらに特に詳しいスタッフが他の者のスキルを上げていくような“共創”の土壌を作れるというのは、Musubiに切り替えることで得られたメリットの一つだと感じています。
一瀬:
薬歴業務の負担が圧倒的に減りました。薬歴での残業はほとんどないですし、今まで調剤室に戻って書いていた部分が、すべて投薬カウンターで完結する。しかも説明が終わってから書くのではなく、説明しながらできることが増えたので。患者さんに説明しながら薬歴業務が進み、患者さんから出た話を最後にちょっと付け足すだけで薬歴が完結します。今まで薬歴は後回しにしていましたが、もうルーチンが変わって、その場で全部完結させるようなやり方に、私たちのやり方自体が変わっていきましたね。
「あとでやらなきゃ」というちょっとしたストレスがなくなったので、気持ちの面でも楽になりました。薬歴が残ってないので翌日の朝に余裕も生まれ、その時間を在庫管理や各自の勉強に使えるようにもなりましたし、そういった意味でも“ゆとり”が生まれたと思います。
一瀬:
薬歴や指導のクオリティという点でも変わってきました。ハイリスク薬の指導も、どうしても同じようなことの繰り返しになりがちでしたが、Musubiが新しい選択肢を提案してくれるので、より充実した説明ができるようになったと思います。患者さんごとに提示される薬に関する指導と健康アドバイス、これを自然に説明していけば、自動的にその内容が薬歴に入ってくるので。薬歴の内容にも厚みが出てきて、自分でも「これはいい薬歴だよね」と言えるようなものができるようになってきたかなと思います。
一瀬:
そういう意味では、薬の指導文もそうですけど、健康アドバイスの存在が大きいかもしれません。内容もいろいろと用意されていますし、インフルエンザや花粉症など季節ごとに適切な内容が提案されるので、患者さんはもちろん私たち薬剤師も飽きない。毎回、新しい話ができます。
水越:
会社としても特に健康アドバイスの活用にこだわっていこうと思っていて。社内では「シェアアドバイス」と名付けているんですが、健康アドバイスの活用事例や患者さんに喜んでもらえた事例を、薬剤師同士で共有しあう取り組みも始めています。
一瀬:
Musubiが良いのは、患者さんにタブレットの「画面」でみてもらえるところ。今まで口頭でコミュニケーションをとっていましたが、そこに視覚情報が加わることで患者さんの興味をひくことができます。「なになに?」「なるほどね」という患者さんの反応が分かるというか、以前より“響いている”という実感もありますね。
対話のやり取りの回数が増えましたし、患者さんから健康に関するご相談をいただく機会も増えたように感じています。その中で、「今度から処方箋をまとめて持ってこようかな」と言ってくださる方もいらっしゃいますね。
水越:
やはり薬の話だけでなく、健康のことから相談できる相手だと認識してもらえることが最初の一歩目なんでしょうね。その信頼を得るまでのコミュニケーションが実は意外と大変で、それをサポートしてくれているのが、Musubiの健康アドバイスや指導文なのだと思います。
水越:
こうした健康アドバイスや指導文の活用を、データに基づいて管理できるのもメリットの一つ。各薬剤師が薬歴の「S」「O」「A」「P」それぞれにどれだけの時間を要しているかを数値で見ることができるので、やみくもに「効率化しましょう」というのではなく、きちんと仮説を持って薬歴の時間削減にアプローチできます。当社の場合、特に「P」の作成に時間がかかっていることが分かりました。その理由を探るために薬剤師にヒアリングしたところ、Musubiの画面タッチで薬歴を入力するのではなく、キーボードでいちから薬歴を打ち込んでいるケースが多いと判明して。データをもとに薬剤師一人ひとりとコミュニケーションをとり、「まずハイリスク薬では画面タッチを使うようにしましょう」というような形で目標を定めて取り組んでもらうようにしました。そして、その結果をまたデータをもとに振り返り改善していくというサイクルを回し、現在はかなり理想に近い状態になっていると思います。Musubiの画面タッチを最大限に活用することで、薬歴業務の圧縮だけでなく、抜け漏れがなくなり、薬歴の内容が一定レベルで平準化できたのは大きいですね。
一瀬:
管理薬剤師として各スタッフとコミュニケーションをとる上でも、感覚ではなく、データをもとに自信を持って話せるので助かっています。
水越:
Musubiでは、業務のデータだけでなく、患者さんの再来率や一人当たりの処方箋数といったデータも見ることができますよね。今、特に力を入れていかなければと考えているのがその部分。薬局と患者さんの接点を増やす必要性を強く感じています。特にこちらは病院の門前ということで、処方日数の長いケースがほとんど。とすると、一般的なクリニック周辺の薬局と比べて患者さんと顔をあわせる回数が少ないのではないかと。やはり立地や環境ではなく、薬局としての機能や利便性、サービスによって患者さんに選んでいただきたいですし、そのための取り組みを進める上で指標となる数値をMusubiが自動的に出してくれて、常に手元で確認できるのは非常にありがたいですね。
水越:
もちろんレセコンからデータを引っ張ってきて集計することもできますが、時間もコストもかかるのであまり現実的とは言えません。それがMusubiならWebを開くだけで欲しい情報にたどり着ける。こんなに簡単なことはないですよね。分析したら終わりじゃなく、それに基づいてアクションしてこその分析であって、データがあればそれでOKというわけでは決してないんだと。当たり前のことかもしれませんが、なかなかそのことに気づけないんです。私たちもそうでした。各店舗でレセコンから出力してもらって、それを集めて今度は本部でExcelにまとめて……と時間をかけてやっているともうキリがない。
しかも1回1回の数字だけでは、それが多いのか少ないのか分からないじゃないですか。継続的に、その推移を流れで見ていくことで初めて何が課題なのかを把握することができるんですが、それがなかなか難しいから結果的にみんな感覚に支配されてしまっていると思うんですよね。なんとなく今日は処方箋が多かった少なかったと、勘でやってしまっているんです。そのモヤッとした部分が、くっきりと見えるようになる。その瞬間の気分に流されなくなる。これが、薬局の経営者・管理者として非常に大事なことなんだと改めて感じています。さらにそれが本部だけでなく、現場レベルでできるようになるというのが、経営という観点でみたときのMusubiの魅力だと思いますね。
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