薬局名の「なくすりーな」は「なくす」「くすり」「いいな」を掛けあわせた造語です。医療の現場において、医師は診断を専門とし、治療のために薬を“増やす”方向で考えがちです。しかし、薬の数が多くなればなるほど副作用が起きるリスクが高まります。同じ症状でも、治療効果と副作用リスクを適切に判断することで、薬の種類や数も適正化できるはず。薬剤師として“薬を最小限に減らす”ためのアドバイスやサポートができればと思い、この名前をつけました。
薬の引き算について考え始めたきっかけには祖父の影響もあります。私が高校生の頃、祖父は、朝18種類、昼12種類、夜15種類、粉薬4種類を一日で服用していました。「薬で腹いっぱいや。うまいもん、なんも食われへん」と言う姿を見て、どうすれば祖父のような苦しい思いをする人を減らせるのだろうかと、薬のことを勉強していったんです。そうやって薬剤師になって改めて、薬剤師の本当の仕事は、調剤でなく、患者さまを健康に導くことだと感じました。そのためにも、薬を適切に減らすことは重要な役割だと考えています。
現在は、一日40名ほどの患者さまがいらっしゃいます。多くは、周辺にお住まいの方。隣接する病院の内科や小児科、消化器外科など幅広い処方箋を持ってこられます。在籍の薬剤師は私だけですが、ヘルプで臨時の薬剤師に来ていただくこともありますね。ケアマネジャーからの依頼もあり、在宅にも対応しています。
Musubiは、開発段階から知っていました。後に完成品を見て「薬歴の価値を変えてきたな」と思いましたね。それまで、我々にとって電子薬歴は処方歴や副作用歴、指導歴、疑義照会の内容などを電子的に記録するシステムでしかありませんでした。そんな中で、Musubiは患者さまとのコミュニケーションにも使えるツールだと感じたんです。
私は特に服薬指導を大事にしていますが、時間は3分以内と決めています。ある論文で、人は基本的に3分以上の説明は耳に入らないというデータがあるんですよ。3分の中で価値を最大限に提供できるコミュニケーションが何なのか考え続けていて、それでMusubiをみたときに「これだ」と思いました。Musubiはたしかに薬歴記入を効率化することのできるツールですが、そもそもデキる薬剤師は薬歴記入をパパッとこなせてしまうもの。むしろ、患者さまと3分以内に内容の濃いコミュニケーションをすることにこそ、Musubiは有効だと思ったんです。
実は私自身、何もキッカケがないところから会話を進めるのが苦手なタイプなんですが、Musubiがあれば、患者さまと一緒に画面を見たり情報を共有したりできますよね。コミュニケーションが格段にしやすくなるだろうと感じました。
Musubiの画面に表示される図やイラストは視覚的でわかりやすいですし、一つの画面を一緒に見ながらお話することで、薬剤師に対して親近感を持っていただくことができます。目の前の患者さまにはどんな話が響くのか、指導に対するリアクションを掴みやすいのも良いですね。患者さまとのやり取りがスムーズになり、説明のクオリティも上がりました。
Musubiの健康アドバイスが、患者さまの行動に変化を及ぼしたケースもあります。例えば、ある患者さまに「便秘にはキウイ。1個で1日に必要な食物繊維の11%」というアドバイスをお話したところ、次の来局時に「ヨーグルトに入れて食べたら、便秘が改善した」と報告してくれました。「キウイ=便秘改善」というイメージは一般的ではないと思います。健康に関する情報は巷に溢れていますし、怪しいのもたくさんあります。その中で、Musubiのアドバイス情報は医療論文などを扱った経験のある専門家の監修が入っており、エビデンスがしっかりしています。患者さまに、健康のための確かな情報をお届けできるのは嬉しい限りです。
今はまだ、薬剤師が患者さまにどんな価値を提供できるのかということは、あまり広く知られていません。しかしその情報が届けば、患者さまはもっとスムーズに薬剤師に健康相談ができるようになるでしょう。そのためにも、私は薬局内にとどまらず、われわれ薬剤師ができることを、講演活動やセミナー、ラジオ配信などで積極的に発信するよう努めています。
薬剤師は最終的には「薬局」という枠から出て、個としての価値を求められるようになると考えています。地域全体で患者さまを支えながら、薬剤師としての価値を十分に届ける。その橋渡し役として、今後のMusubiの発展に期待しています。
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