おづ薬局は、大阪府泉大津市で開業し、今年で創業20年になります。病院の集中率は低く、様々な医療機関の患者さまがいらっしゃいます。薬剤師の数は4名、一日約80枚程度の処方箋を扱っています。
もともと事業承継で店舗を引き継いだのが2016年。その後、店舗の大規模リフォームを行いました。最大の変化は、店舗を「カフェ」をイメージした居心地重視の空間にしたこと。患者さまの待ち時間短縮を主眼においた店舗づくりが今までの薬局運営のセオリーになっていると思うのですが、私は薬局という空間を、ただ薬をお渡しするためだけでなく、副作用のことなど薬に関する大切な知識をしっかりとインプットできる場所にしたいと考えていたんです。そのためには、患者さまに少しでも落ち着いてお話していただける空間が必要なのではないかと。
受付は広く、アロマを焚いて、照明は蛍光灯ではなくあたたかな色味のダウンライトに。待合室の掲示物も、薬局にありがちな印刷物は避けてスタッフ手書きのものを。従来の調剤薬局のイメージに縛られない、ゆったりと落ち着いた空間を意識しています。おかげさまで患者さまから「居心地が良い」という声をいただくことも多く、特に小さなお子さま連れの患者さまのご来局が増えましたね。
お話したとおり、ただ薬をお渡しするだけでなく薬と上手くつきあうためのアドバイスに力を入れたいと考えていたのですが、とはいえ具体的な動きとしてはなかなか形にできていない状況でした。
そんななかで、ある時、テレビのニュース番組でMusubiが紹介されているのをたまたま目にしたんですね。「こんなシステムがあるのか」と、感動しました。患者さまに画面をお見せしながら服薬指導ができ、その時々の症状やタイミングにあわせたアドバイスを提案する機能もある。患者さまがお越しになるたびに、毎回異なるアドバイスができるようになるわけです。「まさに、求めていたシステムだ」というのが第一印象でしたね。
導入を決めたら、あとは思いのほかスムーズでした。薬剤師の平均年齢は50歳なのですが、みんな導入後すぐに使いこなせていたように思います。患者さまにお薬の説明をしながら、画面タッチで指導内容を薬歴に入力できるので、投薬が終わった時点で薬歴はほぼ完成。しっかりと薬剤師の視点に立った文言になっているので、画面タッチを続けるだけでベテラン薬剤師も納得の薬歴に仕上がります。
薬歴作成が早くなったことで、スタッフの数はそのままに、対応できる患者さまの数が増えました。目に見えて変わったのは、施設在宅の対応数。以前より施設在宅で50名ほどの患者さまを受け持っていたのですが、正直これまでのやり方ではその人数が限界だったんです。ところがMusubi導入後、居宅在宅が5件、特別養護老人ホームが1件増え、新たに100名分の処方箋に対応するようになりました。明らかに、薬歴作成の効率化によって生まれた成果です。
また、薬局での服薬指導にも変化が生じています。Musubiの画面をお見せしながら説明することで、患者さまが集中して話を聞いてくださるようになったんです。コミュニケーションもスムーズになりましたし、指導が伝わっている手応えも感じられるようになりました。患者さまお一人あたりの対応時間は伸びていますが、これは「役に立つ話をしてもらえるから、またおづ薬局に行こう」と思っていただくために必要なことだと前向きに捉えています。
私自身、われわれ薬剤師にできることはもっとたくさんあると思っています。薬機法改正の流れをみても、薬剤師には薬と健康の専門家として、患者さまに対するより主体的で積極的なアプローチが求められているのは自明です。ひとりの薬剤師として、そして地域の薬局として、患者さまに何が提供できるのか。従来の薬局像に縛られることなく、模索し続けたいと思っています。
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