藤井伸昌さん(パナプラス薬局 代表/以下、藤井):
パナプラス薬局は2009年に開業した薬局で、現在愛知県内に5つの店舗を構えています。もともと人の役に立ちたいと思い薬剤師の資格を取りチェーン薬局で働いていたのですが、いかに早く正確に薬を渡すかにフォーカスされる環境に疑問があったんです。自分が薬局をやるなら人の役に立つことを一番に考えた店にしようと思い、開業しました。
私は、薬局には地域のヘルスケアを担うインフラ的な役割があるべきだと考えています。昔の薬局は困ったことを気軽に相談できる存在でしたが、まさにそのイメージですね。ただ、そのまま昔の形に戻れば良いわけではありません。今の時代に合わせ、処方受付だけではない顧客体験を提供する必要があると思っています。
その実践のために力を注いでいるのがフラットな組織づくりであり、薬剤師だけでなく管理栄養士や事務スタッフを含めた人材育成です。患者さまに良い体験をしていただくためには、医療の知識だけでは不十分。名刺の渡し方からマインドの持ち方、ロジカルシンキング、PDCAの考え方など、ビジネススキルやサービススキルを身につけ、磨くためのプログラムを自社でつくり、定期的に全社研修を行っています。
医療人は「何かしてあげたい」というボランティア精神が旺盛で、自らを顧みず動くことが苦にならないタイプが多いですよね。その思いには共感しつつも、私はその上で“自分の提供する価値に見合った対価をいただく”ことをもっと大切にするべきだと思っています。その対価に見合うだけのサービスを、私たちは提供していかなくてはならないんです。
藤井:
Musubiをみた瞬間、「これで顧客体験を変えることができるかもしれない」と感じたんです。中でも、服薬指導にあわせて自動的に提示される「健康アドバイス」が魅力的でした。Musubiを使えば、患者さまそれぞれにフォーカスしたアドバイスを、どの薬剤師でも提供できるようになるのではないか。誰にでも当てはまるありきたりの説明に終わるのではなく、その方だけの“パーソナルな体験”を提供することが、患者さまの満足度を高めるためには不可欠だと考えていたのですが、Musubiがその実現を助けてくれるのではと。
薬局業界には、「間違いなくスムーズに薬を提供することが価値である」という暗黙の了解があります。もちろん、それは大前提。しかし、私たちが提供すべきものは早さと正確さだけではないと思う。例えば、ちょっとした体調不良で病院に行くまでもないような症状のとき、気軽に相談に来ていただけるような、そんな場所に薬局はなり得るのではないかと思うんです。
加藤了五郎さん(店舗責任者/以下、加藤):
代表からMusubiの導入を相談されたときに私が感じたのも、まさにそれです。Musubiを軸に業務を再構築することで、すべての薬剤師が患者さまにパーソナルな体験を提供できるようになるのではと。経験のある薬剤師には当たり前のことかもしれませんが、そのテクニックやノウハウは一朝一夕で習得できるものではありません。投薬台にたつのがたとえ新卒入社の若手や接客に苦手意識のある薬剤師だったとしても、Musubiを使うことで服薬指導やコミュニケーションの質を底上げすることができるのではないかと。「これなら患者さまも薬剤師も皆がハッピーになれるのでは」という期待がありました。
山田賢文さん(店舗責任者/以下、山田):
私は薬剤師の業務を効率化してくれるツールだというのが第一印象。具体的には薬歴業務の改善です。画面タッチで簡単に薬歴の記入ができるので大幅な時間短縮が可能ですし、デジタルなのでもちろん他の人が書いた文字が読めないといった問題もなくなります。
またMusubiの服薬指導コンテンツや健康アドバイスが薬剤師自身の学びになる、という点も魅力でした。Musubiのサポートがあれば経験の浅い薬剤師も患者さまに必要な情報をもれなくお伝えできますし、産休や育休明けなどブランクのある薬剤師のスムーズな現場復帰も可能になるのではと思いました。
加藤:
現場に安心感が生まれました。薬の情報は日進月歩ですが、少しでも疑問に感じることはすぐに調べられるので心強いです。患者さまとMusubiの画面を見て話をしながら、サブ画面ではインターネット検索で関連情報を探しておく。例えば血液検査のデータを調べてその画面をお見せする。そんな使い方をしています。
特に経験の浅い薬剤師にとっては無くてはならないツールになっていますね。安心感を持って業務にあたれるので全員が自信をもって投薬できるようになっていると同時に、会話のキャッチボールから新しい情報が引き出せるようになっています。例えばうちの店舗は5つありますが、それぞれ門前の医院も科も異なるので、薬剤師が普段と異なる店舗へヘルプに行くときなど、いつもはなかなか触れる機会の少ない薬を扱うこともあるわけです。そんなときにもMusubiがあれば、どんな説明をすればいいのだろうかと不安になることがない。やっぱり薬剤師の不安、自信のなさは患者さんに伝わるんですよね。Musubiがそのセーフティネットになっています。
あとは、患者さまに画面を見せて視覚的に説明できるので、薬の効能について具体的なイメージを持っていただけています。特に耳の不自由な患者さまの対応をする時は助かりますね。ツールを使って事情の異なるそれぞれの患者さまに合わせた対応をしていくことで、パーソナライズされた服薬指導に近づけているのではと思います。
山田:
私はMusubi導入によって薬歴記入のスピードアップが叶って、繁忙期でも薬歴が溜まりにくくなったと実感しています。そしてMusubiを使い始めてから患者さまとの会話が活発になり、これまではあまり会話がなかった方との距離も近づきました。以前は患者さまが帰宅された後に「あの薬のことなんだけど…」と電話で質問されることも多かったのですが、その頻度も減っています。Musubiを通して目と耳の両方から情報が入るようになり、会話量も増えたことで、薬への理解度が上がったからだと思います。
藤井:
Musubiが患者さまと薬局の距離を近づけるツールだとしたら、私たちはその上に、今までの薬局のあり方にしばられない新しい薬局像を形作っていきたいと考えているんです。例えば、薬局はもっと“患者さまが気軽に立ち寄れる場所”であったらいいと思う。病院の前に薬局にお立ち寄りいただけるようになれば、薬局と医師との連携もスムーズになり、医療サービス全体がより最適化されると思います。
実は今、パナプラス薬局としても予防医療の視点を取り入れた“処方箋がなくてもお越しいただける薬局づくり”に取り組んでいます。例えば、先日オープンした新店舗は「サプリメントバー」と「瞑想ルーム」を備えた「health care lab」として運営しています。こうした取り組みの先に、薬局の新たな価値が生まれてくるのではと思うのです。
今後はさらに、Musubiに蓄積される患者さまのデータに基づいた、よりパーソナルな情報提供にも取り組みたいと思っています。例えば、減塩についてのイベント情報を高血圧の患者さまにだけご案内するなど、その患者さまにとって本当に価値のあるサービスの提供にこだわっていきたい。そのためにも、まずは薬剤師以外のスタッフも含めた店舗内全員が患者さまの情報を共有できる仕組みを整えたいですね。Musubiがそのデータプラットフォームとして機能してくれるようになればと期待しています。
山田:
なるほど、それができれば薬局に蓄積された患者さまの情報を最大限活用できるようになりますね。Musubiのようなツールが出てくると、「薬剤師の仕事がなくなってしまうのでは」という声が聞かれるようになることも少なくないのですが、それは違うと思っています。システムでラクになるのならどんどん活用して、逆にシステムには出来ない部分に薬剤師としての役割を見出せばいい。私自身としては、書類作成などの業務を効率化し、結果として生まれた時間を、もっと患者さまに向き合う時間に充てたいです。
加藤:
同感です。もはや、薬の情報が欲しいだけならインターネットで十分。だからこそ、私たちが薬のプロとして勉強してきたことを上乗せして、目の前の患者さまにサービスの提供ができなくては、薬剤師の存在意義がありません。私たちが実体験から学んだことを、自信を持って患者さまに伝えていきたいですね。
Copyright © 2024 KAKEHASHI Inc. All Rights Reserved.