プレスリリース
2025/4/30

カケハシ、総合メディカルとの調査で薬剤師による介入(QIスコア)とがん患者アウトカムの相関性が明らかに
薬局における対人業務の質の可視化について日本薬学会で発表

株式会社カケハシ(本社:東京都港区、代表取締役社長:中尾 豊、代表取締役CEO: 中川 貴史、以下、当社)と総合メディカル株式会社(東京本社:東京都千代田区、福岡本社:福岡県福岡市、代表取締役社長:多田 荘一郎、以下、総合メディカル)は、医療の品質を客観的に評価する定量的指標である「クオリティ・インディケーター」(以下、QI)を活用し、抗がん剤の副作用に対する薬局薬剤師の介入の実態調査を実施しました。薬剤師の介入を示したQIスコアが向上すれば、患者さんの副作用の悪化防止・改善につながった割合は上がるという相関性が見られました。なお本調査は、日本薬学会第145年会のスポンサードシンポジウム「データサイエンスから薬剤師の未来を考えるー産官学の立場からー」で発表いたしました。

 

●背景
昨今、薬局における対人業務の質向上を目指す動きが加速を見せています。2020年には、厚生労働省を中心に「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」が発足し、今後の薬剤師像について議論が重ねられています。

当社は、対人業務の品質を客観的に評価するための定量的な指標としてQIに着目しました。QIとは、特定の疾患に関する医療行為について、ガイドラインに沿ったケアがなされた割合を全体のパーセンテージでスコア化したものです。当社は先んじて、クラウド型電子薬歴「Musubi」(以下、Musubi)を活用したQIの算出プロセスを開発しており、原著論文として「くすりと糖尿病(Japanese Journal of Pharmaceutical and Diabetes)  Vol. 13 No. 1 」に掲載されています。

一方、総合メディカルが運営する「そうごう薬局 天神中央店」では、これまで「がん専門薬剤師によるがん患者担当制度の構築」や「保険薬局版がん患者標準応対手順の開発」、「がん対話カフェの開催」など先駆的な施策を通じて、がん患者に対する対人業務の質向上に取り組んでいます。そして今回、当社が開発したQI算出プロセスの薬局現場への導入・活用による、今後のさらなる展開に向けた各施策の客観的評価と、薬剤師一人ひとりの対人業務における品質の可視化を実施しました。

●概要

当社と総合メディカルは、Musubiの服薬指導支援機能の記録解析によって、現場に負荷なくQIを算出しながら、薬剤師が患者さんそれぞれに必要なケアを実施したか、プロセスの評価を試みました。

その中でも、抗がん剤S-1(以下、S-1)の副作用である「流涙(涙があふれて、視界がかすむこと)」のケアに注目。薬局では副作用の発現をモニタリングしつつ、患者さんへ副作用の対処法を伝えたり、必要に応じて受診勧奨を行ったりするほか、主治医へ休薬提案するなど様々な工夫をしています。しかし、専門薬剤師と非専門薬剤師の介入の質の差はエビデンスとして創出されていません。

そこで、我々は流涙の確認頻度に関するQIを設定。2024年4月から9月の間にS-1の調剤実績があることに加え薬歴調査に同意を得られた薬局計49店舗(専門医療機関連携薬局8店舗、「外来がん治療専門薬剤師」の資格取得を目指す薬剤師が在籍する薬局6店舗、一般薬局35店舗)で薬剤師の介入の実態調査を行いました。

具体的には、プロセス指標(QI)となる「流涙の確認頻度」と、アウトカム指標となる「薬剤師の介入により症状の悪化防止・改善につながった割合」に相関性があるのか検討をしました。

結果

プロセス指標(QI)の「流涙の確認頻度」は、専門医療機関連携薬局で64.6%だったものの、一般薬局は8.7%に留まりました。また、アウトカム指標の「薬剤師の介入により症状の悪化防止・改善につながった患者割合」は、専門医療機関連携薬局で11.8%となり、一般薬局の約20倍となる結果でした。

この結果から、抗がん剤の副作用の発現をこまめに確認したり、服薬期間中フォローを行ったりすることで、患者さんの流涙症状の把握や介入による改善に努める、専門医療機関連携薬局の対人業務の質の高さが評価できました。加えて、プロセス指標とアウトカム指標に相関性が見られたことから、QIスコアを向上させる医療的意義が示されました。

今後、総合メディカルは、専門医療機関連携薬局の薬剤師が、一般薬局に対して情報提供や注意喚起を行うことで、関連指標が改善するかを検証したいと考えています。

日本薬学会第145年会での発表で、総合メディカルの本田 雅志氏(上級専門薬剤師)は、「Musubiを活用することで、がん分野における薬局の質評価がQIで可能になった。技術的進歩により、算出がより無理なく継続的に行えることを期待したい」とし、当社でQI研究事業を担当する工藤 知也は「QIとアウトカムの相関を見出せたことで、QIの社会実装の重要性を示す研究成果になった」と強調しました。

QIは、薬局薬剤師による介入価値の可視化に繋がることが本調査によって明らかになり、その他の疾患や副作用においても評価指標を設定する重要性が示されました。今後、QIを開示する動きが高まれば、将来的に患者さんは自身の疾患に対して最適な薬物治療を受けられる薬局を選びやすくなる可能性があります。

今後も当社は、薬局におけるQIの活用を推進することで、より良い医療の実現に尽力する所存です。

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Musubiのことがよくわかる資料

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資料2
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