私たち田辺薬局は、1984年の創業以来、地域に根ざした薬局として運営を続けております。企業理念として「みなさまの薬局を目指します」と掲げており、現場主導でさまざまな取り組みに着手しているのですが、例えば在宅業務もその一つ。今ではごく当たり前になっていますが、実は当局では介護保険の制度が始まる前から在宅に取り組んでいます。きっかけは、定期的にご来局いただいていた高齢の患者さまが、突然お見えにならなくなったこと。寝たきりになられてしまったとのお話を聞いた薬剤師が代表に直談判し、その患者さまへのサービスとして、お薬をお届けするようになったのがスタートなんです。薬歴に関しても、そもそも薬歴という制度がない頃から、レセプトの調剤録に記録を残す習慣が根づいていました。最近では、薬剤師間のコミュニケーションにSlackを導入したり、自社でADR(Adverse Drug Reaction:薬物有害事象)の記録アプリを開発・活用するなど、ITの活用も積極的に進めています。
紙薬歴から電子薬歴への移行もわりと早く、2010年前後にはいち早くiPadを用いたタブレット型の薬歴システムも導入しています。しかし、それで満足できる状態になったわけでは決してなく、新しいシステムやツールには常にアンテナを張っていました。というのも、従来のシステムでは「薬歴を書くこと」自体が目的になってしまっており、「使える薬歴をつくる」ための活用ができていなかったんです。結果、薬剤師によって書き方にもクオリティにもばらつきが出てしまっていて。多種多様な機能はあれど本質的に“これ”というものではなく、全体の底上げにはつながっていませんでした。正直、もう一度「紙薬歴」に戻すことも考えたくらいです。
Musubiについては、リリース直後からチェックしていました。薬局・薬剤師から患者さまへの情報提供の“厚み”が問われるようになるなかで、その時流を捉えたシステムだなというのが第一印象です。個人的には、画面タップで薬歴の下書きが作れること以上に、患者情報(患者サマリー)に軸足を置いたシステムになっていることに強く共感しました。患者情報を更新すると、それにあわせて提案される指導例文も変わるという仕組みが素晴らしいなと。目の前の処方薬だけでなく、患者さまの背景にまで目を向けることは、これからの薬剤師にとって不可欠な姿勢だと思いますし、それを自然と促してくれるMusubiというシステムに伸びしろを感じ、導入を決めました。
実際にデモを見せていただき、開発の背景やビジョンを伺って、自分たちと同じ志を持ったサービスだと感じました。担当の方を含めて薬剤師資格をお持ちの方が多いこともあってか、ベンダー視点ではなく薬剤師視点・現場視点でつくられたサービスだと感じられたことも大きかったですね。
私自身も薬剤師としてMusubiを使っていますが、患者情報を更新すると指導内容が変わっていくのは面白いですね。狙い通り、いやそれ以上かもしれない。「薬歴を、ただの記録で終わらせてしまっていいのか?」というそもそもの課題意識に、いよいよ手が届いた気がしています。
それからやはり、画面タップでどんどん薬歴を自動記録してくれるのも大きいです。今まではSで1行、Oで1行、Aで2〜3行と何度もEnterキーを叩いていましたが、今はトータルで2〜3行入力すれば完了。キーボードをさわる時間が圧倒的に減った実感があります。薬歴のクオリティに関しても全体の底上げにつながるかなと。従来のやり方に縛られてキーボード入力にこだわってしまうと、画面タップの恩恵を受けられないので、そこは各スタッフにしっかり使い方を教え、慣れてもらう必要はありますね。
患者さまとのコミュニケーションですが、こちらの神田錦町店の場合はオフィス街ということでお急ぎの患者さまが比較的多く、多少工夫をしています。私の場合は、お会計中に「健康アドバイス」の画面をお見せするようにしていますね。「気になる項目はありますか?」とお声がけすると、少なくとも嫌がる方はいらっしゃいませんよ。投薬の際、お薬の袋詰めなど意外と沈黙が生じる瞬間があるものですが、Musubiを使うことでそうした隙間時間を効果的に埋めることができるんじゃないかな。
今後への期待というか、これは私が勝手に想像していることなんですが、処方箋の有無に関わらずMusubiを使ったアドバイスができるようになると、より面白くなると思います。現在のMusubiはあくまでも処方に紐付いた指導と健康アドバイスを提示してくれるシステムですが、例えば処方箋がなくても、その方が普段飲んでいるお薬の情報を入力すれば、それに応じた健康アドバイスが提示されるようになるとか。もしかしたらそれが、薬をもらうこと以外で薬局に足を運ぶ理由になるかもしれませんし、薬剤師の仕事を処方箋から解放することにつながるかもしれない。Musubiには、そんな可能性も感じています。
Copyright © 2024 KAKEHASHI Inc. All Rights Reserved.